21 本当に怖い女の眼
石段を登る青年。
その先から注がれる斜陽を受け、翳りが染みる段を上る。中心部から西の住宅街を抜け、街の西端にある丘陵地。この街の墓地として使用されている場所。見晴らしのよいそこには石材を組んだ展望台があり、死者を弔うための祭壇も設置されていた(もっとも、そこから望めるものは墓ばかりだが)。そこへと抜ける石段を登り終え、設えられた祭壇前に立つ青年は、その奥で地平線に溶けていく夕陽を見て呟いた。
“失楽園か、”
それなりの広さと高さがある展望台。そこは、ゴゼグが処刑された場所でもあった。青年は、その地を踏みしめながら、夕陽に染まる周囲を見渡す。既にあの時の狂乱の残滓も、喧騒の破片もなく、凄々とした風が出来事を浸食していた。ギロチン台が設置されていた箇所を靴先でなぞる。あの日から、ずいぶんと自分の日常が変化してしまったことを痛感する。あの夜勤明けの朝、あの朝に斬首されたのは自分だったのではないかと疑ってみる。あの時、祭壇に積もった雪の上に転がった頭。あれは自分の頭部だったのではないか、、この数日の出来事は死後の夢なのでは、と。
だが、その都度否定する。身体の傷が甘えるなと叫んでくる。あの僕っ子の声で。
「はぁ、、本当に楽園追放だな。」
青年は、再度呟いた。そして振り返る。あの森の中で覚醒して以降、それなりに頑張って生きてきた時間を、、
裸で覚醒した時の混乱、森の中を徘徊し続けた時の不安と恐怖。必死に身体を動かし、なんとか森を抜け、街に辿りついた時の喜びと街中で受けた絶望、、チャンドに担がれ辿り着いた施設。訳も分からないまま就職した施設、、
無知で無力な青年が、介護士のような仕事をしながら何とか生きてきた日々。一か月働いて、日本円で2万円程度の収入だが、食時と住居が保証された生活。身寄りもなく、この世界での常識もない自分に『与えられた』生活。自分の意志とは関係なく始まった日常、、
ムポア病を患った人の介護は精神的にも肉体的にも辛かった。仕事上での失敗も多く、泣く夜も多かった。女性職員に叱責され、嫌味を言われ、無視されることが殆ど。人間関係にも悩まされた。不安で眠れず、陰鬱な闇に押し潰される夜に何度も陥った、、
、、それでも、必死に仕事をし、必死に肉体を動かし、必死に生きた結果で得た生活。自分が「存在することが許される」と実感できる生活。青年にとっては初めて生きていることを実感できた、幸福な時間だった、、
“でもピコスに言わせれば、それは、自分で建てた神殿に籠っているだけの臆病者の生活なんだよな、、その神殿も、もう直ぐ崩壊する、”
ピコスが例えた表現は別として、その神殿生活が終わることに溜息をつく青年。そして、先日から起こる様々な出来事から、トルの言う【人生が転がり始めた】ことを、自分は未知なる世界に向かうことになることを実感していく、、
「あら、海上君じゃない、」
聞き覚えのある声に振り向く。この数日の経験から思わず身構え、緊張する青年。が、見慣れた女性の姿に安堵した。「こんな所で奇遇、、ってこともないかな、」との笑顔に緊張を解く青年。だが、同時にどこか痩せ衰えたようなキソーラの姿に、疲労感の強い表情に、様々な事情を察する青年でもあった。
「あなたも、ゴゼグ君を偲んで?」と、造ったような笑みで青年の脇を抜けたキソーラは、細い指で握っていた花束を高台の端に置いた。
斬首刑後、ゴゼグの遺体は業者により火葬され、遺骨は治法団により適当な場所に埋められていた。そんな墓を建てることすら叶わなかった魂に対し、キソーラは花を手向けた。片膝をつき、無言のまま両手を心臓にあて、目を閉じたまま小さな言葉を唱えていく。今までは気づかなかったが、幾つもの枯れた花の残骸に気づく。ゴゼグを偲ぶ花。幾つもの残骸が、キソーラの足元、周囲に見て取れた。
「傷の具合はどう?」と立ち上がる。普段よりも重たそうな瞼が色々な状況を説明している。チャンドの話によれば、キソーラは職員の再就職先や施設入居者の移転先を探し、奔走し続けているとのことだった。施設で寝泊まりし、膨大な書類の処理もしているとの話も。そんな中、キソーラは時間を見つけては何度となくこの場所を訪れていたのだろうと、花の残骸から察した。
「すみません、大変な時に仕事を休んでしまって、」
「仕方ないわよ。話は聞いてる。命があっただけでも良かったわ、」
近くの貧民街に巣くう孤児、又は浮浪者による強盗殺人未遂。チャンドからそう説明受けていると続けたキソーラ。それが真実かは分からないが、それが最も納得できる「落としどころ」であることから、青年も特にそれを否定はせず、話に適当な相槌をうった。
「彼と勘違いされた可能性もあるわよね。私ね、何度も勧めたのよ。もっと安全な場所に住むようにって。何時かそんな事が起こると思って。それなのに彼は、、」
夕陽に染まった外套。その内には普段着ている修道服とは異なり、黒いジャケットに襟のある白シャツが見て取れた。首元を整えるリボン式のネクタイ。細身のパンツ姿もあり、どこかビジネスマン的な印象に映る。普段隠されていた長い金髪が斜陽に染まり、甘い小麦色に煌めく。青年は、改めて、キソーラが整った目鼻立ちをしていることを、どこか、男が守りたくなるような「か弱い」唇であることを知った。その唇が、青年に問いかけた。「私のこと恨んでる?」と。
「え??」
唐突な問に驚く青年。そのリアクションに口元を緩めたキソーラは言葉を続けた。半ば、強引にこの仕事に就職させたことを恨んでいないか?と。
「あぁ、そのことについてですか?」
「そうよ、、でもね、恨むなら私じゃなく、チャンドを恨んでね、」
君を拉致同然で施設に連れてきたのは彼なんだから、とキソーラは矛先を回避する。
「話には聞いてはいましたけど、やっぱり、」
「そう、だから恨むならチャンドを恨んでね。君が施設で働くことになったのは、彼からの強い要望があったからなんだから、、
、、初めは断ったわ。いくら人手不足で財務の厳しい福祉施設といえども、見知らぬ人物を簡単に雇って良い仕事ではないし、しかも聞けば異世界人って話じゃないし、、悪いけど、初めは断ったわ、、でも、チャンドは粘り強く何度も説得し続けたの。私たけじゃない。他の職員や各方面に頭を下げ、何かあれば自分が責任を取るって、粘り強く話をしていった、、その情熱に、次第に周囲も納得させられていってね。多少強引だったけどね、、
そうそう、彼ったらまだ雇うって決まってもいないのに、労働させるだけでなく少しで良いので賃金を設定して欲しい、このままでは餓死するので施設内で住食の管理をして欲しいって、、もうすごい勢いで迫ってきてね、その時の表情は、今でも覚えているわ、、
それで、私もその情熱に負けて仕方なく、、ね。」
だから、私を恨まないでね、と笑うキソーラであったが、その表情には過去を懐かしむ『嬉しさ』が滲んでいた。もう、戻らないであろう日々を懐かしむ『嬉しさ』が、斜陽に染まる頬に溜まっていた。その気持ちを察した青年は穏やかに応えた。誰のことも恨んでいない、と。
「なんだかんだで、今、生き延びているのだから、恨んでなんかいないですよ。拉致監禁の強制労働であっても、感謝しかないですよ。」
冗談っぽく笑う青年。だが、その冗談に合せるよう、整った笑みを見せたキソーラは質問を追加した。就職したことによりムポア病疾患者を知ることになってしまったことを、恨んでいないか?と。
「どういう意味ですか?」
あまり質問の意図を理解できないといった表情に対し、キソーラは説明を加えた。ムポア病の世界に関わってしまったことを後悔していないか、と。
「ムポア病のこと、理解してる?」
「えぇ、大まかですけど、」
ムポア病を患った人は、時間や空間を把握するのが難しくなること、それまで蓄積してきた記憶が曖昧になること、それまで『普通のこと』としてできていた排泄や食事も普通に行えなくなることなどを挙げた。そして、その原因は不明だが、誰もが患う危険性があり、今の世界での治療が不可能な病であると付け加えた。
その内容を黙って聞いていたキソーラであったが、「病の症状としては正解」と告げた後、少しの間を空け再度尋ねた。ムポア病の持つ社会的背景について知っているか?と。
「背景ですか?」
「やっぱり、、知らないか。海上君、異世界人だし、この世界での暮らしの殆どを施設内で過ごしてきたから仕方ないわよね、」
少しの間を空けたキソーラは、ムポア病がこの人族の大陸においては「感染する病」とされてきたことを告げた。
「え?感染?」
「30年ほど前までは感染症と考えられていたの、」
この人族の歴史、2000年近くの時間、社会はムポア病を感染症として捉え、恐れてきたと説明する。
、、30年ほど前かな、、医学や生物学、臨床研究にレンズ加工技術などの、様々な進化に伴い感染症であることは否定されたの。それでも、原因が不確実ということに変わりないから、今も人々の心に恐怖は根強く残ってる、、今も感染する病だと信じている人は多くて、罹患者への差別や迫害も多く残ってるの。」
キソーラは続けた。ムポア病患者に加えられてきた迫害と差別の歴史を。姥捨て山のような例から、魔女裁判のような拷問まで含め、虐殺のような歴史をあげていく。
「現代では、ムポア病が感染しないことは科学的に立証されている。でもね、2000年近く信じられていたそれが、簡単に社会から消えることはないの、、うちの施設も、建設時には住民の反対運動があったし、施設が襲撃され放火されそうになったこともあった。海上君はあまり感じてないかもしれないけど、今も偏見を持っている人は多い、、施設の女性職員が全員マスクをしている理由の一つもそれよ。」
「そんな、施設職員までそんな偏見があるのですか?」
「2000年以上続いたそれを、人々の心から簡単に拭うことはできないわ。神なんて存在しないって科学が立証しても、信仰が消えないようにね、」
「そんな、、」
「今もムポア病を最大の穢れとし、罹患した者、病に関わった人を公然と差別している国があるぐらいなのよ、」
「酷いですね、、そんな歴史、背景があったんですね、」
「その上で、もう一度質問するわね。海上君は、私を恨んでない?」
自分の意志とは関係なく、ムポア病に関わることになってしまったことを
首を傾げ、長い髪を掻き上げる。髪に絡む斜陽を落とすような仕草と少しやつれた表情が重なり、青年の心を締め付ける。だが、そんな表情には関係なく、青年は応えた。
感謝しかないです、と。
「どう見ても僕は商売人じゃないし、兵士のような勇敢さもない。特殊な技術を必要する職人もちょっと、、だから、この仕事は僕に合っているのかもしれないです。ムポア病に罹患した人の介護をする仕事は、僕には合ってたんだと思います。」
それに、自分は、前に暮らしていた世界で相当なイジメを受けてましたから、今更この世界で差別されても気にはしませんよ、と青年は卑屈に笑った。自虐的に。
「そう、ありがとう。じゃぁ、お礼って訳ではないけど、もう一つ教えておくわね、」
「もう一つ?」
「そう。この現代における、ムポア病の不可思議な点を教えてあげる、、この人族の大陸において、この10年ぐらいかなぁ、、何故かムポア病患者だけが公的資金をつぎ込んで擁護されているという不可思議な実情を、、
、、この世界にも、孤児や障害のある者、年老いた者を助ける仕組みはある。でもそれは教会が行う施しなの。そう、宗教的な道徳観が根源。だからそれが施しの域を超えることはない。仕事としては成立してないの。でもね、この10年、何故かムポア病罹患者の介護にだけ公的資金が投入されているの。他にも様々な難病はあるし、様々な意味で福祉の手を求める人は多い。それでも、何故かムポア病の罹患者だけは特別扱いされている。」
「理由は?」
「さぁ、そこまでは、私にも分からない。でもね、特別なの。この人族の大陸において、ムポア病の患者は、特別なの、、
『特別』。その言葉に力を込めたキソーラは、そのまま沈黙した。そして、足先で枯れた花の残骸を弄んだ。何か思いつめたような表情に薄暗い翳りが見てとれた。
“なんか、理由を知らないって感じではないよな。知ってるけど、僕には伝えられないって感じだな。教えられないってことか。でも、どうして教えられないんだ?ここまで話しておいて、、”
色々と考えを巡らせる青年ではあったが、出ない答えを待つよりも、改めてキソーラに気持ちを応えた。それを知っても、自分はこの仕事に就けてよかったと思っている、と。キソーラの話の意図は理解しかねるが、それが正直な気持ちであり、恨んではいない、と伝えた。ぎこちない笑みをキソーラに向け『ありがとうございました』と頭を下げた。
「そう、良かった、でも気をつけてね、きっと海上君はこれからとても、、
咄嗟
圧のある風が、鼓膜を強く刺激するような風が、キソーラの長い髪を梳き、乱すように流れた。その毛先が唇の動きを遮る。まるで、その先を話してはならないと諭すように。
その意図を汲んだのか、そのまま口を噤んだキソーラは微妙な表情を見せ、唇に乗っていた言葉を誤魔化した。そして髪を整え、角度を変え、青年に向け様々な表情を見せた。小悪魔風から清楚なお嬢様風まで、多様な表情が浮かんでは消えていくが、その全てが万華鏡に写る模様のような美しさで満たされていた。
“その変化技法でチャンドさんを魅了したのか、”
と心で唱える青年ではあったが、魅了されそうな自分がいることも確かに感じていた。
「これからどうするの?同じ職種に就くなら、紹介状書くわよ。」
話題を変えたキソーラに対し、まだ何も決めてませんが、と言葉を濁す青年だが、ふと、逆に質問を返してみた。少し気になっていた『2人の今後』について。「キソーラさんこそ、どうするんですか?」と。
その返しに、他人のことを気にするなんて珍しい、と驚いたように目を見開いくも、上手くそれを髪で隠したキソーラは街を出ると告げた。
「私は、違う街で同じような施設に勤めることになりそう、」
彼女を慕う数人の職員も別の街で同じ施設に勤める予定だと付け加えるキソーラは、この人族の大陸において、ムポア病罹患者を介護する福祉施設はそれなりに存在しており、その殆どが人手不足であることから再就職には然程苦労はしないと説明した。
「そうですか、『良かった』で良いのですかね?」
「そうね、『良かった』で、良いじゃない、」
微笑むキソーラだが、その返答に対し青年は戸惑った。そこから先は軽々しく口にすることはできない質問のようでもあり、それを尋ねて良いかを戸惑っていた。すると、それを察したのだろう、答えをキソーラが自ら話始めた。
「彼は、一緒には行かないわ。」
「え?」
「聴きたかったんでしょ?チャンドも一緒かって、」
「えぇ、まぁ、、でも、それって、」
「初めから分かってたの。彼と一緒に暮らし続けることは難しいってね、」
「・・・・・・・」
「女はね、それが分かるの。どんなに心を通わせても、どんなに互いを大切に思っていても、一緒に暮らすことはできない男のことは、、
、、分かってしまうの、と閉じた。それに対し、青年は何も応えることはできなかった。応える言葉を見つけられなかった。別れると分かっていながらも、時間を共に過ごしていく。それが愛なのか、それとも別の何かなのか分からない青年は、キソーラの言葉をどう処理してよいか分からず、ただ無言でいるだけであった。
「複雑そうな顔、してるわね。」
心を見透かしたキソーラは、言葉を加えた。男女の関係において、大切なのは記憶としてどのように残るかだと。
「結婚して子供を産んで、互いに老人になって死ぬまで暮らす長い時間、、それとは反対に、近い内に別れると分かった上で過ごす短い時間、、どっちも女性にとっては同じ長さなの。大事なのは、長いか短いかではないの。大切なのは、どれだけ素敵な記憶を得られたかなの、、だから、、
独りでこの街を出るの。別れすら自分にとっては幸せだと納得できたから、」と。
不倫に終止符を打った女のような台詞に、キソーラらしくない言葉に、なんとも言えない違和感を覚える青年。だが、『不倫』どころか女性と会話した記憶が殆どない自分には到底分からない話なのだろうと自分を納得させた青年は唇を噛み締めた。
青年の表情を探っていたキソーラであったが、青年がその先に言葉を見つけられないことを確認すると、踵を返し、長い髪を整えながら笑ってみせた。今日は、普段と違ってしっかり話すのね、と。
「普段はおどおどして、チャンドとトルの影に隠れるようにしていて、私たちとは視線もろくに合わせないで、ぼそぼそと何か呟いているだけなのに、」
「、、僕の印象って、そんな感じなんですか?」
「あら?自覚なかったの、そんな感じよ、」
からかうように、冗談のように笑う。そんなキソーラに青年は、昼の一件を簡単に説明した。詳細にではないが、自分の傷を治療してくれた『発音しずらい国』の貴族の娘から、しっかりと自分の言葉で会話をしないと殺されるかもしれない、といった趣旨の話をした。すると、、
キソーラは少し俯き、何かを隠すように眼窩を指先で撫でた。その眼に宿った感情を悟られぬように、何かを咀嚼し飲み込む。そして、暫しの間の後、明らかに違和感のある笑顔を拵え、夕陽の籠った眼を青年へ向けた。
「へぇ、、2年近く働いても改善されなかったことが、そのご令嬢の馬事雑言で一気に改善に向かったんだ、」
「改善されてはいないですが、、まぁ、最近それ以外にも色々あって、、トルさんからも同じような指摘も受けてたし、、そんなこんなで、もっとしっかりとしないといけないって思えるようになった、と云うか、なんて云えば良いか分からないですけど、、その、」
「そうか。海上君も若くて可愛い女の子に強く言われると色々変わるのね、、
、、男はみんな同じね、」
「え??」
「ううん、何でもないわ。でもその娘さん、ファースラ家のご令嬢なんでしょ?」
「え?ファースラ家の令嬢??あぁ、ピコスのことですか?」
「あら、ピコスだなんて、親しげな感じね、」
「いえ、まったく、」
即答し、思い出したくない、という表情をする青年。その顔に対し笑うキソーラだが、黄昏の詰まった目が忠告した。あの一族にはあまり近づかない方がよい、と。
「彼女のこと、理解している?」
「いえ、まったく。なんとかって国の偉い貴族の令嬢だってことしか、」
「まぁ、海上君はファースラ家のことを知らないかもしれないけど、気をつけて。あの一族は、世界を崩壊させる秘密の力があるって話よ、」
ジェジエル王国。この街のあるンッドバベ国の数倍の国土と人口を有し、強大な軍事力と経済力で他国を支配している。この大陸にある50ほどの国の頂点に君臨する専制君主国家。そのジェジエル王国を実質支配しているのがファースラ家であると説明する。
「国王は飾りでしかないの。」
「彼女の家、そんなに権力があるんですか?」
「権力だけじゃないわ。あの一族はそれ以上の力があるって話よ。そして、その力は、
この大陸だけでなく、この世界そのものを崩壊させることができるって話よ。」
“え??世界を崩壊?反物質による対消滅みたいない力があるってこと?そんな科学技術がこの世界にあるのか?いや、もしあるとしたらそれは魔法、、それならピコスが魔法を使えたことにも納得できる。ってことは、ファースラ家は魔法を使い人族を支配しているってこと?”
そんな戸惑いを浮かべる青年にキソーラが突きつけた。刺すような眼差しで。あたかも、この場所での遭遇、この場所で交わした今までの会話の全ての目的が、ファースラ家の力を説明することにあったかのような眼で、突き刺した。
「だから、チャンドに伝えておいてね。ピコスちゃんとの旅が『良いものに』なりますようにって、ね。」
この時、青年は知った。本当に怖い女性の眼というものが、とのような眼であるかを。今まで自分を邪見に扱っていた女性の眼など比較にならない程の、真に恐ろしい女性の眼というのを初めて知ることになった。
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