閑話 メタ的な気付き

 またしても茂上孝太は謎の暗い空間の、そこだけスポットライトに切り取られたような明るい場所に佇んでいた。


孝「またしてもって何だよ。てかマジでどこなんだここは?」


水谷「遅かったね」


千夏「細かい事は気にすんな」


 椅子に二人が座っていて、誰も座っていないおそらく孝太のために用意されたであろう椅子に、彼は恐る恐る腰を落ち着けた。


孝「また、ですか。いや誰も知らないでしょう以前もこんな茶番劇を投稿してたなんて」


水「まあそれは消しちゃったからね」


千「どこまでも読者に優しくない話だよこれは」


孝「そして、今回は何なんですか。久しぶりに投稿されたと思ったら、なんか二話削られてるし」


千「その投稿も、ただ単に一話の焼き直しを二つに分けただけだし」


水「まあまあ二人とも、こんな話書いている作者の考えなんて理解できない、いや理解しようとする姿勢が悪なのよ」


千「なにもんだよ作者」


孝「人間として底辺に近いという事は確かだね」


水「私個人として、今一番気がかりというか一番むかついてる事は、前回に引き続き小百合がここに喚ばれていないということよ」


孝「ああ確かに。でも何で先輩だけ省かれてるんですかね?」


千「あの先輩何か悪い事でもしたの?」


水「んな訳ないでしょ!?小百合はむしろ悪い事に巻き込まれて、だけど最終的にはそれに抗って解決しちゃう子なんだから」


孝・千「巻き込まれてんじゃないですか!?」


孝「だから出してもらえないんですよ」


千「でも出ない方が良いかもな。こんなのある意味辱しめだし」


水「自作登場人物による作者の公開処刑、というか公開自傷自慰タイムだもんね」


孝「最悪過ぎる。思考の露出狂だ」


千「これが作者だというだけで、あたしたちの不幸が察せられるわ」


水「でもその責任の一端は私たちにもあると思うんだ」


千「こいつ、とうとう先輩の口を使って私たちに責任転嫁し始めたぞ!」


孝「考え得る限りの最悪の死に方を是非とも実践させよう。今すぐに!」


水「いやいや、それを言ったらあなたたちも作者に喋らされてるんだけど。私が言いたいのはそうじゃなくて」


千「何ですか。責任の一端って?」


水「それよ。今日の議題は」


 天上よりガタガタと飛来せしホワイトボードには黒い太字で『メタ的な気付き』と書かれていた。


水「ずばりこの話、全然面白くない!」


孝「……」


千「……」


孝「……それって……」


千「……」


水「……」


千「そりゃあそうだけど。確かに。あまりにも自明過ぎたが故に盲点とも言えんなあ」


水「気が付いちゃったんですよ、こいつ。私たちの話が面白くないって。まだ、まだね!作者に面白いと思われていたら、まだ救われるというものを!私たちはもう作者相手にすら面白いとは思わせられなくなってしまったのよ」


孝「本当に救いが無いな。ちょっと泣いてます。ガチで」


千「そうか。もう終わるのか。と言っても、客観的に見たら二話しか話進んでないし、何の盛り上がりも無いままフェードアウトするだけだから、何の感慨もありゃしねえけどな」


水「それが悲しいよ。作者の脳内で勝手に盛り上がっていただけで、現実に出力させる動機を生み出す事が私たちにはできなかった」


孝「それを僕たちのせいにされても憤りを禁じ得ませんが、確かに僕たちが面白ければ作者も真剣に書いてくれたんですかね」


水「無理な話だよ。こんな奴に面白いキャラクターを書くことなんて」


千「つまり私たちは始めから消えるために……。いやなんのためにも生まれて来てない。何の一つの役にも立たないのに生み出されてしまった、始めからゴミだった存在ってこと?」


孝「そんなの、勝手過ぎませんか?」


水「だからと言って、ここから面白い話にしよう工夫しようと私たちに設定や世界観を肉付けした“それ”は、もう私たちとは言えない存在。私たちが誰にも必要とされないのは、私たちが存在している事と、決して別々の事として済まされない」


千「さっきまでは冗談めかして作者の自己否定に付き合ってたけど、今回ばっかりは、本気で恨むわ」


孝「僕も、絶対に許せません」


水「私、思うの。私たちがつまらないんじゃない。面白くできない作者がつまらないんだって」


孝「そんなのは大前提でしょう」


水「だからもしかしたらね、いつか、成長した作者の手で私たちの面白可笑しい日常を描けるかもしれない。来世では笑っていられる仕合わせがあるかもしれない」


千「向上心があるというのだけは認めるわ。でもそんな幻想、期待しろって言うのは、殺人を犯して遺族に許してくれって言うのと同じくらい不可能だろ」


水「それで良いんだよ。手元にある希望がどんなに儚く無価値に思えても、それを放さずに持ち続けられる事に意味があるんだから」


千「すみません先輩。かっこよさげな事を言いたかったのはわかるんすけど、何にもわかりません」


水「うん。今のは私もちょっと意味わかんなかった」


孝「グダグダだな。っていうか今回、先輩一人に重荷を負わせ過ぎじゃないですか?」


水「私はなんとなく嬉しいよ。セリフ増えるし」


千「これが本来の先輩……」


水「今思うと小百合がここに居なくてなくて良かったような気もするなぁ」


孝「知らぬが仏ってやつですか」


千「もう良いじゃん?こんな所でうじうじしてるより、各々の世界に戻ろうよ」


水「帰る世界は一緒だけどね」


孝「またいつか、この話が再開されることはあるんですかね?」


水「ああそれなんだけど、別にこれ最終回とかじゃないのよ」


千「はあ!?じゃあ何なんですかこれ?」


水「いや、それはわかんないけど、作者なりのけじめ?というか言い訳なんじゃない?」


孝「どうしようもならない奴ですね」


水「話とかも、特に非公開にはしないし、ずっと放置するらしいよ」


千「いっそのこと潔く消して欲しい!てか消えたい!」


水「まあ全部ひっくるめて、いつもの如く未来の自分に丸投げってことで」


孝「もうどうでもいいよ。はい解散解散!」


 すみませんでした。冒頭のくだりに出てきた前回の閑話もただいま再投稿いたしました。


 なので続きが出るまで自分で作った登場人物に辱しめられる自分を、何が悲しくて自分で演出してるんだろうという気持ちになりながら、見守ることしかできません。


 これが私にできる、彼女・彼らにできる最大限の贖罪です。嘘です。最大の贖罪はこの話を書き切ることです。


 こんな下卑た話をここまで読んでくださり、読者様そんなもの存在するのか?いやしない!絶対に!には何とお詫びしてよろしいものか。続きが投稿される事はほぼ無いと言って良いでしょう。


 ですがまだ完結ではありません。


 本当に申し訳ございませんでした。

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