第10話


「……私に何かご用かしら」


「出てきてくれてありがとうございます。少しテミニエル様に聞いて欲しい話があって…」


「…手に持っているものはキャベラ?また普通の貴族っぽい子が珍しいものを持ってるわねぇ。まぁ礼儀のいい子は嫌いじゃないわっ入りなさい」

ラミフォンって…数百年前からあるのよね。もっとおばあさんなイメージだったけれど目の前には黒髪ロングの男の人の格好をした綺麗な女性。

もっと魔法使い!って思うような格好や部屋を想像していたけれどごく普通のこの世界と同じ感じで全然魔法使いにみえないわ。


「何してるの?早く入ってきなさい」


「はっはい!」


私は工場の近くの川の話をした。

そこでこのキャベラを机に置き


「それで飲み水をろ過するような形で…この魔法石を使ってその工場の廃棄しないといけない液体をどうにか出来ないかなと…だけど私だけの力では作ることも出来なくてテミニエル様にお手伝いしていただけたらと思ってここまで来ました。テミニエル様、どうか手を貸していただけませんか?」



「なるほどねぇ。まぁ簡単そうだしそれいいけど…これは事業としてあなたが廃棄処理機を作るということでいいのかしら。それともただのボランティア?」


「…それは……」


「もちろん、その廃棄処理機が今後どこかしらの工場で必要とされるってことは今聞いて分かったわよ?」


「ただ今の話じゃあボランティアするのを手伝って。と言われてるように聞こえてね。私もそんな優しい人じゃないし」



「……。その…。私の名前で事業を起こすことは出来ないんです…」


「どういうことかしら」


「えっと…話すと長いんですけど聞いて貰えますか…?」

「私は長話は好きじゃないのよ。デルにならない話ならもうこれでおしまいよ」


「久しぶりだな…テミニエル」

いきなり後ろから青髪の無愛想なイケメンが現れミテニエルに話しかけた。

「キャー!!ソランじゃない!久しぶりねっ。この世界にいつ戻ってきたの!?会いたかったわ♡」

ソランの人間の姿!?初めてソランの人の姿をみたけどソランにティエラに…精霊界ってイケメン美女しか居ないのかしら!それにテミニエル様と知り合いだったの!?


"ソラン!テミニエル様と知り合いだったの!?"



"まぁ。出てくる気はなかったんだけどな"


「俺から説明するよ。テミニエル」


ソランはナーシャの状況や精霊と契約を結んでいることを家族内にも隠したく、資金の出処がシャンドラだと思われるのも困ること。全てを説明してくれた。


「んー虐待なんてよく聞く話だけど、ナーシャは精霊と契約したなら全てサクッと捨てればいいだけの事じゃない。」


「そんな噂が流れてる中でも…お母さまとレティシャは私を大切に思ってくれているんです…。それで…。」


「…その大事な母親と妹はほんとにあなたが虐待されてることについても何も気づかないの?それってほんとに大事な家族なのかしら。」


「それは……」


「まぁいいわ。私には理解のできない話だし 」

「テミニエル」


「大丈夫よ。手伝ってあげるわ。形だけ私が事業を起こすって形にしてあげる。そしたらこの液体濾過機の噂も一瞬で流れるでしょうよ。それでオーナーはナーシャってことでいんじゃない?」


「テミニエル様…!!」


「ちょっと手を加えるだけだしね。それにソランをまたこの世界に連れてきてくれたことだし。でもよく魔法石なんて持ってきて来れたわね。魔法界に繋がる道が途絶えた今この世界ではなかなか見つからないのに」

と言いながらソランにベッタリくっつくテミニエル様にすこしムスッとしながらもう好きにしてくれと言わんばかりのソラン。


ティエラが猫の姿でスっと出てきてお辞儀した。


「え?あなた大地精霊も手懐けたの!?見た目はぜんっぜん普通のか弱そうな子なのに大したもんだわ…

はいはい。いいわ。契約者なら色々手っ取り早いわっ。書類とかはまた適当に私が用意しとくから出来たらソランに教えるし連れてきてもらってちょうだい♪」


とそんなこんなであっという間に話は進み1度屋敷に戻ることに。




「テミニエル様ってソランのことが大好きなのね」


"いつかアイツに生き血を吸われそうでゾクッとする"


「生き血なんて…」


"魔法使いは好きなやつの生き血を小瓶に入れて管理するらしいんだよ。考えただけでゾワッとする"


"テミニエル様は面食いで有名だからねぇ。まぁ私が男の姿をすればソランよりイケメンだけど?"


"ならテミニエルの前で男の姿で出ろよ"


"いやよ。私はこの可愛い姿に満足してるんだから"


また2人で言い合ってるw

テミニエル様…見た目は普通の人間だからこそ生き血なんて想像がつかないなぁ。

と思いながらテミニエル様が血を管理しているところを少し想像してみる。




時間はあっという間にすぎて屋敷に着く頃には夜中の3時になっていた。

今日はぐっすり寝れるわ…


朝いつも通り目を覚ましいつも通りレティシャと遊んで過ごし、昼頃お母さまはいつも通りラミフォンでシャンドラとまた話していた。


戻ってくるとお母さまの顔が真っ青だった。

「お母さまどうしたの!?顔色が悪いわ。」


「お義父さまが…お義父さまが」


「…」


「疫病にかかってしまったらしいの……」

お母さまはフラフラと今にも倒れそうで思わず支えお母さまを部屋まで送り届けた。


「お姉さま…お母さまは大丈夫ですか?」


同じくらいの頃お母さまが病んでしまった時を思い出した。

「レティシャ…大丈夫よ。お母さまはお義父さまが流行り病にかかってしまってビックリしちゃったみたい。でもお義父さまもお母さまもすぐ良くなるわ」


不安そうに私のドレスを握るレティシャをぎゅっと抱きしめ、あの絵本を読んであげた。


"ナーシャ。テミニエルから用意ができたってさ"


"もう出来たの!?早すぎない!?"


"まぁ…テミニエルはものづくりの天才だからな。ある程度どんなものを作ればいいか分かってるから尚更だろう"


"それにしてもすごすぎるわ。じゃあ今晩早速行きましょ"


"ああ。じゃあテミニエルに伝えておくよ…"


ソラン…少し嫌そう…


"あっそうだ!ソラン…ティエラは今忙しいかしら。とうとうシャンドラが疫病にかかったって聞いて…。ティエラは薬草にも詳しいだろうから"


"あんなヤツ放っておけばいいんじゃないか"


"だけど…それでお母さまが……ううん。お母さまだけじゃない。シャンドラは疫病にかかったみんなを助けてたのよ…。そんな人が亡くなったら…"



"まあ治癒魔法を使える人間なんて珍しいからなあ。ティエラは今精霊界で下の子たちの相手をしてるからもうすぐ戻ってくるだろう"


"分かった。教えてくれてありがとう。ソラン、テミニエル様によろしくね"


"ああ"



ソランはテミニエル様の元へ向かいその間少し勉強をした。


けど普通の事業のオーナーならその人たちの手取りを考えてってするけど…

私は正直頼んだだけでなにもしていないし、材料費を引いた上で、売上の取り分は1割で十分だわ。

うん。テミニエル様と交渉の時にそう伝えよう。



"ナーシャ?私を呼んでたって?普通に耳の後ろをポチッとするか呼んでくれたらいいじゃない。"


"ふふ。だってティエラが何してるか分からないし私も急ぎじゃないから"


"ナーシャったら。それでどうしたの?"


私はソランに言ったように説明し、ティエラに薬草を用意してもらように頼んだ。


"まぁ、治す相手は気に食わないけど仕方ないわね。夜には持ってくるわ"



とティエラはスっと消えて薬草を取りに行ってくれることに。


コンコンッ「ナーシャお嬢様?シャンドラ様が倒れたとお聞きしました…。お嬢様にとっては好都合ですね!」


メイシーはなんだか余裕が無いのか苛立ちを隠せない嫌味のような言い方で私に言いよる。


「メイシー…お義父さまが倒れたら…お母さまやレティシャも悲しむわ…」


「またお母さまやレティシャ様の心配ばかりなさって!」


「だってそうでしょう?お母さまたちにとっては大事だもの…」



「お嬢様…。そういえば。ラベル先生は流行病が流行ってる間は接触しない方がいいでしょうとのことで、家庭教師は当分おやすみになりました。」


メイシーはそれだけ言って部屋を出ていった。

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