第8話

その日はもちろん私がリベラのドレスを着てしまった事がシャンドラに伝わって怒られた。


ただ…なんだろう?

ソランとティエラと出会うまでは、この時間何も言葉が頭に入って来なかったから気が付かなかった…。

だけど

「お前!!私の顔まで潰す気なのか!!また分かっててやったんだろう!?いい加減にしてくれ!!」

なんて私が悪役とでも言うような…。


メイシーは単独で動いていたってことよね。

シャンドラの手下じゃない?

ならあなたは何者なの?


明日シャンドラはカトセルーラの西の川付近で出た疫病患者を診に行く。

その間に隙を見てメイシーについてお母さまに聞いてみようかしら。



メイシーには私の参考書を頼めばなんとかなりそうね。


"ティエラ…お願いがあるの"


"どうしたの?"


"明日…お母様が1人になるタイミングでメイシーに参考書を頼んでお母様と話したいの。メイシーには聞かれたくなくって…メイシーが帰ってきたら教えて欲しいの"


"いいわよ~その代わり終わったらまた2人で遊びに行こうね"


"うん。今度はソランも一緒に行きましょ"


"2人で!ソランなんて知らないわっ"

と消えていくティエラ。


2人はまだ喧嘩してるみたいね。

早く仲直りして3人で遊びに行きたいなっ




______________________


朝一、シャンドラは、患者の元へ出ていったようだ。


「メイシー、ラベル先生から教えてもらった計算方がまだ理解できなくて、参考書がどうしても必要なの。2~3冊程買ってきて貰えないかしら…。」

メイシーから何かしてもらう事は今まで沢山あったけれど

メイシーしか居なかった私は嫌われたくなくて私からお願いすることは今までほとんど無かったためメイシーはビックリしていた。

だけどメイシーの本性を知った今、何も気にすることなく本来のメイドのように扱うことも怖くはない。

「え、お嬢様書籍部屋の本をいつも読んでらしたけれどそれではダメなんでしょうか?」


「書籍部屋で何冊か読んだんだけれどやり方が変わって計算方が少し古いみたいで…。あとね、メイシーがこの前出してくれたクッキーがとっても美味しくてあのクッキーもまた食べたいわ。」


「か…かしこまりました」


メイシーは少し顔を引きずりながら部屋を出ていった。


"ナーシャ、メイシーが外に出たわよ"


"ありがとう"


私は急いで部屋を出て急いで母の元へ向かった。

レティシャが部屋から出た私に嬉しそうに飛びついてきた。

「お姉さまっ今日は体調がいいんですか?」


「ええ。今日は体調もいいみたい。お外がいい天気だからかしらね。このお菓子がとっても美味しかったからレティシャにもプレゼントしに来たの」

私はティエラと出かけた時に買っておいたお菓子をレティシャに手渡した。


「ありがとうございます♪」


嬉しそうにラッピングを開けようとするレティシャ。


「ふふ。レティシャったら本当にお姉さまがだいすきね。レティシャ、今食べちゃうならお皿を貰っておいでね」


「はーい♪」

レティシャは嬉しそうにお菓子を抱えてお皿を取りに行った。

「あの後、私とナーシャの話を聞いちゃってたみたいでお父様が違うってことは私のお姉さまは私のお姉さまじゃあないの?なんて言い出しちゃってね。お姉さまには変わりないわよ。って言ったらケロッとしちゃって。ふふ」


「レティシャ…。」


「レティシャはあなたのことが本当に大好きね。ナーシャ。この間のお茶会の話はメイシーから聞いたわ。私ね、ナーシャは体調が悪くて部屋にいることが多いけど、いつも書籍部屋から参考書や色々な本を持ち出してたくさん勉強熱心な所はたまに見ていたの。だからわざとじゃないって私は信じてるわ。けれどカルメルご令嬢は怒ってらっしゃらないれどやっぱりカルメル侯爵はやっぱり娘を傷つけられたと思ってもおかしくないのよ…。」


…お母様は私を信じてるといいながら少し疑いが晴らせなくて反省して欲しいと思ってるのね。

私は何もしてない。けどメイシーはお母さまに私の話を毎日報告してるから仕方ないといえば仕方ない…。


「私…本当にわざとじゃ無かったんです…。けれどこんなことになってしまって本当にごめんなさい。」


「ううん。私に謝ることじゃあないわ。ナーシャが分かってくれているならそれでいいのよ。それで今日はどうしたの ?」


「あのね、もうすぐメイシーが来て8年が経つでしょう?私メイシーにお礼の気持ちをきちんと伝えたくって。ほら、婚約や結婚もあるから今のうちかなって。それでね、ふとメイシーって何故私の専属のメイドになってくれたのかなって。」


「あら。もうそんなに経つのね?あの時は確か…メイシーはね…確か貴族だったのよ。どこの伯爵令嬢だったかまではもう覚えてないんだけどね。ジェノシーにいた頃、ナーシャが6歳だったかな?ナーシャが誰かとぶつかって川で溺れかけたことがあってね。あの時、たまたま通りがかったメイシーが助けてくれてね。あの後2~3日ナーシャも目を覚まさなくて…起きて来た時は数ヶ月ほどの記憶をなくしてて……。メイシーとは何度かお手紙でやり取りしてたの。その後にメイシーのお家が没落してしまったみたいで…メイシーがあまりにも可哀想で私が頼んでメイドとして雇うことになったの。ナーシャが溺れて目を覚まさなくなった時は今思い返しても本当に怖かったわ。でも今はこうやって生きてくれているだけで幸せよ」


そういってお母さまは私を抱きしめた

私はお母様の温もりを感じ

最近お母様と話す機会が増えて理由が理由だけれど少し嬉しい。


……それにしてもメイシーは貴族だったんだ。だとしたら色々調べ安いわ。

「そうだったんだ。じゃあメイシーには助けて貰った恩もあるのね。私何をプレゼントしたらいいかしら」


「メイシーはあの川で溺れたナーシャを助けた時から…あなたの事を大事に思ってくれてるみたいだからどんなお礼でも喜んでくれると思うわ」


"メイシーが歩いて帰ってきたわ"


"もう!?ありがとうティエラ"


"あの子…頼んだクッキーにお腹を下す薬草をふりかけてたわよ。食べないでね "


"……クッキーに!?ありがとう食べないようにするわ"


メイシー…そんなことまでするのね…。


もうあなたに負けないんだから。



「そうよね。ふふメイシーなら何でも喜んでくれるはずよね。ありがとうお母さま。もう一度考えてみます。」


部屋に戻りすぐにメイシーが部屋へきた。

「お嬢様?参考書とこの間のクッキーです」

メイシーは大袈裟にハァハァ言いながら微笑み手渡してくる。


「助かったわ。メイシーいつもありがとう」


「いえ、お嬢様のためですから。お嬢様クッキーは今お食べになりますか?」


「うーん…今は参考書を読みたいから後で食べるわ」


「ふふ。じゃあ後で紅茶をお持ちしますね♪」


「ええありがとう」



"本当に嘘くさい奴だなあ"


"ソラン!ティエラと仲直りできてないみたいだけど大丈夫?"


"大丈夫と言いたいところだけど…いつもの事なのに今回は少し長引いてるよ。ナーシャにはバレたく無かったみたいだな"


"ふふ。ティエラは可愛いんだからそんなこと気にしなくてもいいのに"


"まぁほとぼりが冷めるまで待つよ"


"早く仲直りできるといいね"


"ああ。ありがとう。それよりナーシャはメイシーをどうするつもりだ?"


"んー…本来ならお父様に言いつけてとか出来るんだろうけど私にはそんなこと出来ないし、まだどこからも信用がないから…とにかくまだメイシーに負けないで周りからの信用を得るしかないかな…"


こうは言ったものの…


正直、ティエラのおかげで資金に困ることは無くなったからこの家から簡単に逃げることは出来るだろうけど


今まで外に出ることも出来なかった私がメイシーに負けずに外の私の評判を変えることができるのかしら…。

婚約破棄の件にも手を打たないといけないのに…

メイシーに邪魔されないようにしないと。


それにいつかはメイシーに何故こんなことをするのか理由も聞きたい。


そのときがきたら…私は納得できるのかしら…

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