第26話:鉄製武器販売
ハービー商会のドミニク会長との商売は、思っていた以上に良かったです。
ダンジョンで手に入れた武器を全て売る事ができました。
多少は覚悟していた値引きもしなくてすみました。
私とソフィアとアーサーで、手に入れた武器の種類と数が少し違います。
なので、手に入れた金額にも少しだけ差があります。
食事に使う金額も違いますので、手持ちのお金も違っています。
私の利益だけ話しますと、鉄剣111振りを1振り大鉄貨60枚で売り、大鉄貨で6660枚の利益になりました。
鉄槍18本を1本大鉄貨30枚で売り、大鉄貨で540枚の利益になりました。
鉄短剣36振りを1振り大鉄貨30枚で売り、大鉄貨で1080枚の利益になりました。
合計大鉄貨8280枚なのですが、こんな大金だと宿も預かるのを嫌がりますし、比較的安全な高級宿でも、部屋に置いてダンジョンに潜るのは不安になります。
合計で248kgもの重量を持ち歩けるはずもなく、支払いは大鈦貨82枚と大鉄貨80枚になるか、小銹鋼41枚と大鉄貨80枚になります。
ただこれでも、嵩張る銭貨や鉄貨は部屋に置いて行くにしても、大鈦貨だけでも2460gになってしまいます。
1回のダンジョン狩りで少しでも多くの武器を持ち帰りたいので、2460gもの余計な荷物は持ちたくないのです。
1番早いのは、この場でドミニク会長から鈦貨で造られた武器を買う事なのですが、それだと新品を造らせる2倍も3倍も払わなければいけなくなります。
首都で冒険者をしている間は、鈦剣を造るのに必要な鈦貨の倍、大鈦貨67枚を渡せば、鋳造の鈦剣を手に入れられるのです。
今なら新品の鈦剣を造らせるだけの大鈦貨が有ります。
鈦剣になって戻って来るまでは、その重さを持たなくてすみます。
大鈦貨15枚分くらいなら、宿の支配人も預かってくれるでしょう。
預かってくれなかったとしても、450gなら持ち歩くのも我慢できます。
いえ、小銹貨に換えてしまえばいいのです。
小銹貨に換えてしまったら、小銹貨21gと大鈦貨の30gになります。
「では、買い取らせていただいた武器は、端数を除いて鈦貨か銹貨で支払わせていただきますので、ご確認ください」
ドミニク会長は即決で大金を支払ってくれました。
これだけの大金を、護衛もなしに持ち運ぶわけがありません。
そもそも、1人では買い取った武器も持ち帰れません。
騎士家の嫡男である私の前に出るので、部屋の中までは護衛を連れてこなかったのでしょう。
宿の外には大勢に荷物運びと護衛がいて、支配人が許してくれた少数の精鋭護衛だけが、宿の中まで入ってきているはずです。
「うひょおおおおお、これでわたしも鈦剣持ちだぁ~」
ソフィアが喜びの雄叫びをあげています。
黙っていますが、アーサーもよろこんでいます。
実は私も、これだけ短期間に鈦剣を注文できたことを喜んでいます。
本来なら、冒険者組合を通じ武器の製作を頼みます。
ですが今回に限って特例を設けてもらいました。
先に冒険者組合が刀鍛冶に使者を送っておき、その後で私たちが材料と手数料になる鈦貨を払いに行くのです。
こんな特例が認められたのは、副組合長が私たちの情報をジャスパーに売って捕まるという、前代未聞の大不祥事を起こしたからです。
冒険者組合としては、私たちに何も言えない状態なのです。
ただ、冒険者組合は私たちに対して弱い立場になりましたが、冒険者たちが弱くなったわけではないので、組合に行けば質問責めになるのは変わりません。
私たちと組合との交渉は、宿の伝令や受付のお姉さんが、組合と宿の間を走って往復する事で決まりました。
私たちは急いでいたので、厳しい表情を作って脅すように交渉しました。
副組合長を逮捕させただけでなく、ジャスパーたちをぶちのめして騎士に引き渡した話も聞いていたのでしょう、交渉は直ぐに私たちの言う通りに決まりました。
「ハリー卿がわざわざ刀鍛冶の所に行かれる必要はりません。
目敏い冒険者が刀鍛冶の所で待ち構えているかもしれません。
懇意にしている刀鍛冶がいますので、ここに呼ばせていただきます」
イーライ支配人が私たちのために刀鍛冶を呼んでくれると言い出しました。
知り合いの刀鍛冶を紹介して礼金を取る気なのかもしれませんが、私たちにはとても助かる話なので、素直に頼みました。
これが刀鍛冶の情報まで知っている王都の冒険者なら、その評判を考えて自分で刀鍛冶を選んだかもしれません。
ですが、私たちには刀鍛冶の情報がありません。
上手い下手はもちろん、自分に合うか合わないかも分かりません。
だとしたら、冒険者組合を信じるか支配人を信じるかになります。
今なら考えるまでもなく支配人を信じます。
これまでも言動を見ていれば、信用できるかできないか分かります。
わざわざ来てくれた刀鍛冶は、ひと目で職人気質と分かる風貌でした。
誠実な雰囲気を醸し出していましたし、朴訥に話す言葉も信じられました。
私たち3人は、何の不安も感じずに鈦貨を預ける事ができました。
刀鍛冶が悪人に襲われて鈦貨を奪われる不安もありません。
かなりの修業を積んだ気配があるのです。
この国の民なら12歳の義務を果たしていますから、ジャスパーのような出来損ないでない限り、最低限の武力を持っていますが、その中でもかなりの強さです。
私たちなら軽く勝てますが、冒険者組合の食堂にいるベテラン冒険者の半数以上が、この刀鍛冶には勝てないのが分かります。
「では、私たちの動きを見て剣を造ってくださるのですね?」
「はい、できる限り戦い方に合った刀にさせていただきます」
刀鍛冶の言葉は誠意に満ちていました。
私たちの使っている刀を見せてくれと言った時には、多少は警戒しましたが、3人同時ではなく順番に見せるので、それほど気にはなりませんでした。
そもそも、私たちは二刀流を使う事もできます。
常に2振りの鉄剣を腰に差しています。
1振りずつ渡す分には何の不安もありません。
「新しく造る鈦剣は、右手で使う方で宜しいですか?」
本当かハッタリか、私たちの二刀流に左右の癖があると言っています。
できるだけ同じように使えるように鍛えてきたはずですが、この刀鍛冶は癖があると言うのです。
いいでしょう、本当に癖を見抜いているのか確かめさせていただきます。
確かに癖はありますが、それに応じて剣の造りを変えられるのか、確かめさせてもらおうではありませんか!
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