02.目的のない旅
行く宛などない。
死に場所を探す旅か。それもありなんだろう。
金を持ってきたところがまた笑える。
金がなければ食事もできず、飢えて死ぬことだってできたのに。
そして武器屋でソードベルトにショートソードを買った自分にも、嫌気がさした。
宿に泊まろうとしている自分が滑稽で笑える。
その辺でのたれ死んでもよかったのに。
宿街に向けた自分の足を眺め、そして引き返して街を出た。
森の中を進む。寝ているうちに魔獣に食われて死んでもよかった。
そこで俺は初めて、生にしがみついていることに気づいた。
それはなぜか。死にたいと思いながら、同時に死にたくない気持ちもあって、しかし彼女にしたことを思うと、そんな気持ちを持ってはいけないと生きたい気持ちを殺してきた。
それでも、朝晩の彼女への懺悔と祈りは欠かさなかった。
苦しい。俺はただひたすらに走った。
違う。違う。違う。俺は生きたいわけじゃない。どうか、俺に残酷な死を。
どうか・・・
苦しみながら、痛みに耐えながら、どうか考えうる限り残酷な方法で殺してください。
走る街道の途中では、何度か野盗や魔獣に襲われたであろう死体を見た。
こうして何の罪も犯していない人の日常が、死によって終わってしまうこともあるのに・・・。
俺はその亡骸に出会う度に埋葬して進んだ。
もし生きて辿り着くことができるのなら、彼女のお墓に祈りを捧げたい。
そうか。俺は彼女の側で死にたかったのかもしれない。そうか・・・。
俺はどれだけわがままなんだ。
本当に自分で自分が嫌になる。
なぜ・・・なぜ俺はまだ生きているんだ。
世界地図など見たことがない。母国がどこにあるのかも分からない。
他国の軍学校に入れられたことは分かったが、それがどれだけ母国から離れているのか分からない。
当時はずっと、泣くか放心しているかのどちらかで、何日馬車に乗ったのかも全く覚えてはいなかった。
地図はどこにあるんだろうか?
軍にあるのは知っていたが、軍には戻れない。ただひたすらに東へ走って、国境を抜けたことは知っているが、大半は森を移動したため元の場所への戻り方も分からない。
あの国の名前は何だっただろうか?
戦争の時、本陣に掲げられた国旗の絵は憶えているが、国の名前すら覚える気はなかったようだ。
母国の王国学園に通っていた頃の記憶は鮮明だが、軍学校に通っていた時の記憶も、軍に所属していた時の記憶もどこかぼやけて鮮明に憶えていることなど何もなかった。
商人なら、きっと地理に詳しいだろうと思い、金を払って街に入ると、その辺の商店に入って聞いてみた。
「尋ねたいのだが、リーベルタ王国はどちらの方向か分かるか?」
「は?知らんな。俺はこの国から出たことがないから知らん。他国のことは行商人やギルドに聞いてくれ。」
「ギルド?」
「商人ギルドか冒険者ギルドだ。」
「分かった。それと、これをくれ。」
「まいどあり、小銀貨1枚だ。」
俺は軍を出てから久々に声を出した。
近くにあった商人ギルドに行ってみたが、ギルドの登録がない者には情報提供はできないと言われた。
何も売るものもないしな。登録するのも無理だった。
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