donum

@Kashima12218

第1話

6月30日午前7時30分行方不明であった𓏸𓏸さんが近くの田んぼで水死体となって発見されました。遺体には犯人の痕跡はなく捜査が難航しています

警察が情報提供を求め


―ピッ


つぎニュースは𓏸𓏸特集です𓏸𓏸は多くのひとが推し詰めており大変混雑しています。


―ピッ


「今年の夏は暑くなりそうだね」

「まだ6月なのに暑ぐるしいものね」

まだ季節外れとも言えるタンクトップに近い短すぎる半袖からまだマシな服に着替えた今日はいつもに増して湿気が凄くそろそろ夏ということを思い知らされる家の床が砂糖も塗りたくったようにベタベタで嫌気がさした。


ギンヤンマが外でたむろしてる最近はヘンテコな事件が多い


心が鎮まるよう1度深呼吸をした。そしたら湿った空気が鼻に通って全身がゾワッする



「ひーちゃん大丈夫かい」

息を吐く息を吸う息を吐く息を吸う。その行為すらも最近は面倒くさくなっていて、


「うん大丈夫だよ」


気管支喘息

元々持病で喘息があったからかよくばぁちゃんは心配してくれてる

「ばぁちゃん心配しないで」

「そうかい」

そう言い去っていく背中を見るとばぁちゃんの骨は降り曲がって今にも90°になってしまいそうだ


夕方の6時頃夕飯の支度をたまたま今日婆ちゃんがしていた今日の夕飯はなんだろうか

「あっ」

「ひーちゃん」「ひーちゃん」


直ちに台所へと顔を出すとばぁちゃんが私も歳だね。ほうれい線と一緒に忘れることがふえてきた。まくし立てていてその後は津軽弁で何を言っているか分からなかった

「悪いねカタクチイワシをひと袋 スーパー行ってきてちょうだい」

「それだけで大丈夫」

今日は外にも出ずにしていたので重い腰が上がりそうにもない


「あぁあとリンスと絆創膏買ってきて」

「リンスインシャンプーはやだな」

「そう思うんだったら自分のお小遣いで買いなさいお婆ちゃんはそれでいいんだから」


「文句言ってないで早く行ってきて」

と突っぱねられたので、「はぁ」と溜息を出していると気にもしてくれないので重い腰を上げて足を進めたお婆ちゃんが台所に立つと大体買い物を頼まれるのだ普段から買い出しをしていないからだろう




ジリリリリリリリ


夕陽が沈んできた頃か


僕は見てしまった

蝉しぐれが一斉にピタッと収まってそれとも一斉に鳴き始めたのか入道雲に見せかけた大きな雨雲が空に浮かぶ。あぜ道の端側には花が添えられ雨でもないのに傘が掛けられたダンボールがあり、そこがぐちょぐちょに染み込んでいた脂浮きも目立ってる

異様な雰囲気が立ちこめて異臭もする僕は緊張のあまり硬直してしまった。何らかの考えや懸念が心中にふつふつと沸いてくる。

意味が不明だった


毛穴から汗が吹き出し背中が冷たく感じた30秒程たった後肩を揺すられた。

「私の妻になにか」


呆然としてしまった

「あ」「あぁごめんなさい」

手を振り払い転びころがるほど全速力で飛び出した

意味がわからない、理解出来ない意図が掴めないあの男はなんなのか疑問ばかりで頭がパンクしそうだった


自宅に着くと早急に110に電話した。

混乱して言葉が詰まってしまう

窓ガラスから見える一本の電柱に貼り付けている住所を観ると𓏸𓏸地3丁目1と貼っていた

何処に見つけたかを伝え電話が途切れると玄関を開ける音がした

少し待つとなんだか疲れてぐったりとしている兄が暖簾をくぐってきた

「ただいま」

「おかえりなさ」「ばぁちゃん今日は大丈夫だったか」

「なにもしてないよ」

「そうか」

少し沈黙したあと兄はそう言った。


お婆ちゃんは段階4になる認知症だ警察署にお世話になること元々明るい祖母で引っ込み思案になってしまうこと家族の名前だってわすれてしまうことがある 日々日々酷くなってきている気がしていた


「ばぁちゃんただいま」

「おかえりうーちゃん」

「お夕飯どうする今日は素麺だよそれともお風呂入るか?沸かすかい」

「いやすげぇ腹減った」

「じゃあご飯にするかいね」

「テーブルの準備お願いね」


「あ」


突然兄のスマホが鳴る

「やば彼女からだわ」

「ごめんテーブル準備しててくれね」

「面倒くさいな」

なんだコイツはとは思いながらも最近ではもう慣れっこになっている自分がいた。

かけっぱなしの埃っぽい白い花のレースのテーブル掛けをどかすと、何処かへ行ってしまったプリントがぐちゃりとした姿で発見され萎えたため息をつくとお婆ちゃんに怒られた。


『いただきます』

「麺ながいな」

でろんでろんになった麺は柔らかく

喉を鳴らし笑いを堪えながら素麺を啜った

「美味い」

「でしょう」

「そうだおかずが電子レンジの中に」

「持ってくるよ」

レンチンしていたのは解凍された豚肉だ

突如としたタイミングであのBOXの事がフラッシュバックした。

腰が抜けてしまう

話そうとしても喉につっかえてなんだか催すものがある

関係性・名前・性格すら分からない

妻と男は言っていた。妻と言っていたということは女性のはずだが敷き詰められていた身体は四肢は女のものではなかったように思えるんだ

それがまた薄気味悪い

考える程どんどん顔が青褪めている

紛らわすように喋った

とにかく記憶から消しされたいものだった

風呂では毛を剃っていたら刃がカミソリの刃が太腿の肉に食い込み皮膚から血が出てきた


手のひらで抑えながら眉をひそめゆっくりと湯船につかる

じんわりと熱くなり湯船に入ると染み込んできた。

肩に触れてきた不愉快極わりないあの男。

そしてBOXが気になってしょうがない

どうして居たんだろう自分が殺したなら放置するのが筋だと思うのだ

だが男はBOXの中身を妻と例えており花や傘等を予備として置いていた。

いかなる方法でそうなってしまったんだろうか

それは考えても知恵とカロリーの無駄遣いだろう

頭に浮かんだ

その類の話の裏ストーリーは、専門と凡人素人とでは思いつくことが全く違ってくる

ホラー映画やサスペンスなどと同じだろう

不可解な事が多すぎて頭の中では筋道がはっきりせずにパンクしてしまいそうだった


「早くでてきて長湯してるのぼせるよ」

「ごめん。今出る」

近頃時間が経つのがとても早くて驚く

注意を払わなければ気けば何十何時間も経過していることがある

疲れているのだろうか。

湯気とともに風呂場にでると大小のタオルが置いてありふわふわとしていて石鹸の匂いが微かに残っていて自分がラッキーという事実を再確認して安心する。

ずっと変わらず衰えを見せない愛を注ぎ続けてくれ切実にそう願った。

既にリビングの電気は消えばぁちゃんは2階に上って

イビキをたてて眠っていた。


「ひとみ」

振り返るといつもとは違うおっかない兄の顔があった

「なんかあっただろ」

「え」

どうやら勘付かれていたらしい

「ゆっくりでいいから話して」

「あのさ」

戸惑ったが遠慮なんてしないで今までの出来事を全て喋った

何故か緊張感の様な物があって呼吸が上手くできずにいた

喋ると兄は少し暗い顔をして黙った。

「最近は変な奴がウロウロしてるから」

ぎゅっと大きな腕で抱き締めてくれた

それを返すように僕を兄の方に体重をかけてすがるような形になっていた

下瞼が熱く泣いてしまいそうだった

「一緒に今日は寝ようか」

頷くと麗のひとみが柔らかく微笑んだ

こんな時間が今あるところよりも、もっと近く続けばいいのにそう感じる

そして瞼を閉じた。

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