小さい飛行便

 俺は離島の飛行便をしている。小さなプロペラ機で、観光や緊急輸送──急患などを運んで島から島へ飛ぶ仕事だ。

 まあ、ほとんどは観光だな。普通のジェット機よりもかなり地表に近いところを飛ぶから、天気さえよければ景色は最高だ。

 この商売、つかみが肝心。はじめての観光客にはちょっとしたイタズラをしていた。ちょっと大きめな、何の関係もないネジを一つだけ、床に転がしておくというものだ。


 ある日も女性二人組の観光客を乗せて遊覧飛行に出かけた。

「ちょ、ちょっと、このネジ何?」

 来たな、と俺は内心にんまりとほくそ笑む。

「どうしました?」

「なんでこんなとこにネジがあるのよ。ちゃんと整備されてるの、この飛行機?」

「落ちたりしないわよね!?」

「バッチリですよ、お客さん。なにも問題なしです」

 お客さんが手を突き出した。

「このネジはどこの?」

 俺はネタばらしをしようとしてちらりと見て──固まった。

 手のひらの上には、ネジが三個あった。


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