第65話 アマン山脈の入り口
白虎のせいで古い道は見失ってしまっている私たちですが、とりあえず、目の前の山のほうへと進んでいます。
風魔法の『ウィンドカッター』や水魔法の『ウォーターカッター』を連発するのも限度があるので、あまり進めないかと思ったのですが。
『どうだ? 俺がいたら、便利だろう?』
途中から私の真似をしだした、白い子猫姿の白虎。スパスパと『ウィンドカッター』を飛ばしまくって、自慢気に先頭を進んでいます。
「すごーい」
「ねこちゃん、かっこいい」
『ふふんっ!』
……双子たちの
しばらく進むと徐々に傾斜が始まりました。ようやく山の入り口についたようです。このまま真っすぐ進むと傾斜がきつくなっていきそうで、ダーウィでは登るのが困難になっていきそうです。
「どこかに昔の道の跡が残ってればいいんだけど」
思わず呟いてしまった言葉に、白虎が反応して振り向きます。
『うん? 古い道? 人族が作ったヤツか?』
「ええ、そうよ」
『だったら、あっちにあるぞ?』
「えっ?」
『なんだ、ただ真っすぐ進むだけかと思ってたぞ』
「は?」
『よし、『ウィンドカッター』』
進路を右方向に変えた白虎が、どんどん木々を薙ぎ払っていきます。
――こんなことなら、早くに聞けばよかった。
白い子猫の後姿に、ついため息が漏れます。
ものの1時間もしないうちに、馬車が通れるくらいの幅の道の跡らしきものに出くわしました。
自分たちだけだったら見つけられなかったかもしれないので、少しだけ白虎を見直しました。
まだ山の中腹にも至らない場所ですが、少し道幅の広いところに出たこともあり、日も落ちてきたので野営することにしました。
途中1回だけ休憩をしただけで進み続けたこともあって、ダーウィの上にのっている双子たちはこっくりこっくりとしています。
『俺はまだ余裕だが、ちびどもは疲れたろ』
「そうね」
今朝は白虎対応で少し遅めのスタートになったのと、方向転換のせいもあって、距離は稼げなかったかと思ったのですが、こうして山を登り始められたことはよかったです。
「随分と進んだみたい」
白虎の『ウィンドカッター』で、この道の視界が広くなっているおかげで、山の下のほうも見えるようになっています。(どれだけ幅広の『ウィンドカッター』なんでしょう)
さすがに暗くなってきているので、私たちが進んだ道の跡はわかりませんが、もう最後に立ち寄ったコンスターリア村は見えません。
私はさっさとテントをはると、双子を起こして中へと入らせます。結界の魔道具を設置してから、ダーウィの世話をしようとしていると、白い子猫の白虎が結界の外に出ていきます。
『飯にいってくる』
「昨夜、山ほど狩ってくれた魔物があるけど」
今朝、結界の外に山盛りになっていた魔物は、そのままインベントリの中にしまってあります。まだ解体も何もしていない状態です。
『……バカな連中がいるから、ついでだ』
白虎の言葉に、私は頷きます。
実は、私の『探知』にも少し離れたところに明らかに魔物らしきモノたちが引っかかっていたのです。
「明日、遅れたら置いていくからね」
『そんなに時間はかからんさ』
そう言うと、元の巨大な白虎の姿に戻って、勢いよく山の斜面を登っていきました。
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