第49話 街道を進む、クツベスの町
カジャダインで予想外にお金を手に入れたので、このまま国境を越えるために真っすぐ街道を進んでいます。軽快に走るダーウィのおかげで、1つ目の村はすでに通り過ぎました。
「ロジータ姉ちゃん」
「なにー?」
今日は一緒の御者台に乗っている双子のうち、ダニーが手綱を握っています。
少しでも私の手伝いをしたいというので、練習も兼ねてダニーに任せているのです。
「あそこにわかれみちがあるけど、このまま、まっすぐでいいの?」
「そう、真っすぐよ」
「わかった」
街道の先には大きな山脈が見えています。山の入り口に至るまで、大小4つの町や村を通らなければなりません。
「あのやまをこえるの?」
「そうよ。あの山を越えて隣の国に抜けるの」
不安そうにサリーが聞いてきますが、私は自信満々ににっこりと笑います。
確かに、こんなに離れていてもとんでもなく高く感じるのです。心配になる気持ちもわかります。
「大丈夫。私には秘策があるの。心配しないで」
「わかった」
サリーは私の腰に抱きつき、頷きました。
私の秘策、正しくは『フロリンダ』の魔道具を使えば、あの程度の山は越えられます。それは、実際に山に入った時に説明すればよいでしょう。
しばらく行くと、前の方に商隊の影が見えてきました。護衛の乗った馬もいるのを見ると、かなり大規模な商隊なのだと思います。
次のクツベスという町からは街道が二手に別れます。山脈に向かう道と、辺境伯領や王都に向かう大きな街道です。あの規模だと、隣国に向かう商隊なのかもしれません。
「ダニー、手綱を渡して。二人とも、一度馬車の中に戻ってくれる?」
「……わかった」
「うん」
二人を馬車の中に乗せて一人御者台に戻って前を見ると、先程までの商隊の影がかなり小さくなっています。スピードをあげたのかもしれません。
「ダーウィ、少しゆっくり行きましょうか」
ブルルルル
元気なダーウィの返事に、笑みがこぼれます。
買い取った当初は、ヨボヨボですぐに死んでしまいそうなくらいだったのに、今は魔獣用ポーションや魔力をたっぷり含ませた野菜のおかげで、かなり若返っています(ちなみに、野菜に魔力を含ませるのはダニーとサリーの仕事です)。
空がすっかり夕闇に変わるころ、私たちはクツベスの町に到着しました。ここでも入町料(子供2人分銅貨4枚)を取られましたが、以前のようにお金が足りなくなるんじゃないか、という緊張感は薄くなっています。
「私たちでも泊まれる宿屋はありますか」
衛兵にお金を渡しながら聞いてみると、うーん、と困った顔をされました。クツベスの町はあまり大きな町ではないようで、宿屋は2軒しかないそうです。
「今日は大きな商隊が来たもんだから、宿屋はいっぱいじゃないかな」
そう言われて、あの時、追い越していけばよかったか、と少しだけ失敗したなぁ、と思ってしまいました。
「なぁ、なぁ、宿屋はないが、西門近くの空き地だったらどうだ」
「あー、あそこな」
そこは宿に泊まれないような冒険者などが野営をしているそうです。今は3つのパーティがいるようで、クツベスの町を拠点に近くの森やダンジョンを攻略しているのだそうです。
「使用料は」
「ないない」
「場所は広いが、こんな時間だ。いい場所はもうないかもしれん」
「わかりました。ありがとうございます」
私は教えてくれた衛兵にお礼を言うと、馬車を西門の方へと向かわせました。
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