第27話 ロジータ、買い出しに行く(3)

 肉屋のあとは、調味料の類を一揃え購入しました。中でもソイの実は大量買いしたいところなんだけれど、大きなマジックバッグを持っていると思われると、危ないヤツに目をつけられかねないので1つだけにしました。それでも、かなりの量にはなるはずです。問題は、ちゃんと実を割れるかどうかですが、たぶん、なんとかなるでしょう。


 ――お金があれば、もっといっぱい買えたのに。


 現金はロジータとして稼いだお金の他に、『フロリンダ』時代のお金もあるにはありますが、明らかに、この国で使えるお金ではありません。貨幣に描かれている肖像画が違うのです。

 

 ――そういえば、冒険者ギルドの口座に入れてあったお金、どうなってるんだろう。


 手持ちの現金以上に、かなりのお金を預けていたのですが、『フロリンダ』の死亡で、ギルドに取り上げられてるのか、それとも、そのまま凍結されているのか、気になるところではあります。


 ――あれだけのお金があったら、かつての王都でも豪邸の2,3軒買えたはず。


 そう思っても、今の私にはないものねだりでしかありません。


「あとはー、ダニーとサリーの服と靴も必要ね」


 双子が着ているのは、かつていた子供たちのお下がりです。すでに色褪せていて、ちゃんと繕ってあるものの、ボロボロなのが2着。これを着まわしているのです。サリーは女の子だというのに、ダニーと同じ男の子の服を着ています。

 そして靴も穴が空いていて、長時間歩くのにはむいていません。たぶん、そのうち底がぺろりと剥けてしまうでしょう。

 食べ物の店が並ぶ通りから少し離れた通りに、古着屋が何軒か固まっている細い道がありました。

 

「うん、これがいいかも」


 古着屋で見つけたのは、子供用の濃い緑色のズボン。膝や裾が破れていたりするけれど、これくらい裁縫のスキルのある私であれば、ちょちょいのちょい、です。


 ――あ、裁縫道具がないわ!


 孤児院に戻れば、あるにはありますが、私が持ち出すわけにもいきません。

 ズボンを2本と子供サイズのオレンジと水色のシャツを1枚ずつ買うと、お店のおばあさんに裁縫道具を売っているお店の場所を聞いてみました。

 

「だったら、うちの娘がやってる店に行ってごらん」


 おばあさんが教えてくれたお店は、すぐ近くにありました。

 店の入り口付近には、端切れや短い糸をまとめた物などが安く売られています。


「いらっしゃい」


 店の奥からおばさんが声をかけてきたので、古着屋のおばあさんから紹介されて来たこと、裁縫道具が欲しいことを伝えると、ああ! と声をあげると、少し待つように言われました。

 おばさんは、いくつかの裁縫道具のセットを見せてくれました。その中で私が気に入ったのは、お弁当箱のようなサイズの木箱に入っていました。


「これと……あの端切れと糸、いただけますか」

「はいよ」


 優しい笑顔のおばさんに、古着屋のおばあさんの姿が重なります。

 お会計をしている時に、古着屋で買ったシャツの話をすると、ああ、アレね、と言われました。どうも、おばさんのところの息子さんが着ていた物だそうで、もうサイズが合わなくなってしまったそうです。

 その話を聞いたら、ダニーとサリーに、大事に着てもらわなくては、と思いました。

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