第21話 ロジータ、院長先生と話をする(2)

 最初は渋っていた院長先生でしたが、私がいなかった間の双子のことを思い出したのか、迷い始めます。

 ……迷うということは、相当大変だったのかもしれません。

 10歳の私が5歳の子供、それも二人も連れて行くというのです。

 院長先生だって、私一人だけでも心配だというのに幼い双子も、となったら余計に心配で仕方がないでしょう。

 私は少し悩んで、マジックバッグの中、と見せかけてインベントリから、両親の形見という体で守護の腕輪(追跡機能付き)を3つ取り出してみせました。


「色々探っていたら出てきたんです(嘘ですけど)」

「まぁ……こんな物があったなんて」


 この守護の腕輪があれば、物理での攻撃も魔法での攻撃も、ある程度は防げるし、お互いの場所がわかるようになっているのです(ちなみに、これは『フロリンダ』時代のダンジョンでのドロップ品で、実はまだ在庫がいくつかあります)。

 院長先生は仕方なく院長室に双子を呼んで、私が街を出る話をしました。


「わたしもいく!」

「ぼくも!」

「おいてかないで!」

「おいてかれたら、おいかける!」

「すてないで!」

「すてないで!」

「うわぁぁぁぁん!」


 案の定、絶対についていくと言いだして大号泣。私が双子を連れていくと話したら、ケロリと泣き止むのですから、現金なものです。今では私に引っ付いて離れようとしません。


「はぁ……ダニーとサリー、ロジータの迷惑になるようなことをしてはダメよ」

「だいじょうぶよ」

「ぼくたち、ろじーた、まもる」

「もう……ロジータ、本当にいいの?」

「はい。二人とも私の言うことをちゃんと聞いてくれるいい子たちですし、いてくれたら私も寂しくありません」


 最後には院長先生も渋々、双子を連れていくことを認めてくれました。


「ところで、どこへ行くつもり?」

「……まずはこの街から出ることを考えていたので、向かう先を考えていませんでした」

「まったく」


 院長先生には呆れられてしまいましたが、先生はしばらく考えると、まずは隣の領へ向かうことを勧められました。


「ここはゼーノン伯爵様が治める街なのはわかってる?」


 はい、わかっていませんでした。

 伯爵様はほとんど王都にいらっしゃる方だそうで、たまにしか戻ってこないそうです。伯爵様の代わりに、代理人として執事が取り仕切っているそうです。


「東隣はヨラニード子爵様、西隣はアルタウス男爵様が治める領地になるのだけれど、もし向かうのだったら、ヨラニード子爵領を目指しなさい」

「それは、どうして……」

「最近、アルタウルス男爵領はだいぶ荒れているという噂を聞いたのよ」


 なんでも野盗があちこちで出没しているというのが、院長先生の耳に届くくらいに酷いことになっているらしいのです。

 さすがに、そんな物騒な土地に向かう気はありません。


「もし、あなたが王都に向かうというのであれば、ヨラニード子爵領は王都に向かう街道沿いにありますから、あちらの方に向かって行くのがいいでしょう」


 正直、王都に向かう気はまったくなかったのですが、院長先生に言われれば気になってきます。


「まずは地図を手に入れたいのですが、どうしたらいいですか」

「そうねぇ。本当なら冒険者ギルドで売っているはずだけれど、ロジータは行きたくはないでしょうし」


 はい。その通りです。下手に行って、アマンダさん達と遭遇したくはありません。


「だったら、商人ギルドに行ってみたらいいかもしれないわね」

「商人ギルド」


 言われてみれば、そんな組織もあったことを思い出しました。

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