第37話 最終戦争の足音

新しい世界が崩壊して元の木阿弥になった世界で、サンボン帝国のサイゴタモリがアンジングというハン民族派に破壊されて、怒ったサンボンの指導者はそのことを口実にして最終兵器のセンジツカクを使用しました。   サイゴタモリはセイハンロを唱えて破壊されることをひそかに望んでいました。    以前サンボン帝国は世界戦争を起こして自国民が全滅するまで戦争継続しようとしていました。戦争を終わらせようとしたキャンディ帝国はサンボンに小型の最終兵器を使用しました。サンボンは最終兵器の恐ろしさを充分に理解していたはずですが、時間の経過とともに記憶は忘れ去られて、防衛のためにと言って核武装を主張する輩がでてきて、手回しよく憲法を改悪して最終兵器を保有しました。TV では目を三角にして口からオイルの白い泡を吹き出す蟹のような輩が我が帝国の存立の危機だの軍備増強に反対する者を非国民と罵声を浴びせていました。彼は若者に向かって祖国を守るために戦えますかと問うていました。彼は戦争にならないように努力したのだろうか。彼は若者が守りたいと思えるような国づくりに努力したのだろうか。彼は老人でぬくぬくと安全なところにいて決して前線に立つことなく若者を危険にさらして口先三寸で英雄になろうとしました。彼は歴史から学ぼうとすることなくサンボンのものたちの恐怖を煽りました。各国の核武装が自らの世界全体の破滅をもたらすことを理解できませんでした。そのサンボンからの中継番組を見ていたAi Ai はあまりにも馬鹿馬鹿しいのでTV を消しました。Ai Ai は新しい世界とはなんだったのだろうかと思いました。われわれにとってはもったいな過ぎる世界だったのだ。戦争放棄を謳った憲法を改悪した後はタガが外れて、そこからは石が斜面を転がるように防衛のためという口実で何でもありとなって、最終兵器を保有して、元の木阿弥になった世界で隠していたアキシダイから引っ張り出した最終兵器をあれよあれよという間にはずみで使用しました。最終兵器がいとも簡単に使用されたことで、新しい世界からバラバラになった国家は恐怖の連鎖によって皆が核武装をはじめました。                  サンボンは歴史的に統一政権が成立するまでに何百年も内戦を繰り広げてきた国で戦争に対して耐性が高いお国柄なのかもしれません。 

                    だんだん最終戦争の足音が聞こえてきました。恐怖が機械世界を支配していました。機械世界に存在するあらゆる国家が他国からの侵略を恐怖して機械世界を何度も消滅さすような最終兵器を保有することに奔走しました。破滅に向かって世界中がひた走っていました。メディアは戦争を煽って悪意を拡散し、機械世界のものどもはそれに狂喜しました。TV 番組で戦争を批判するものは降板させられました。そして、コメンテーターは戦争賛美するものばかり出演するようになりました。TV マンは圧力に屈して自己保身を正当化しました。それでも戦争を批判したTV 局は閉鎖されました。狂喜している皆のなかで黙っているものは非国民と吊し上げられました。すべては検閲されて神のデータベースも自由に検索できなくなりました。データベースにあった反戦的なものは発禁処分を受けてアクセスしようとしたものは拘束されました。新しい世界で新しい世界を絶賛していた教師は、元の木阿弥の世界になったとたんに新しい世界の批判をはじめて、戦争にひた走る国を賛美して生徒たちに悪意を吹き込みました。それができない教師は職場を去っていきました。芸術家たちも戦争協力に動員されました。戦争を賛美した物語が数多く書かれました。多くの知識人たちも変わり身が早く、戦争を賛美しました。それができなかった知識人は投獄されたり、自ら線を切断しました。あったことをなかったことにして新しい世界で投獄されていたものが、元の木阿弥の世界で恩赦されたのちに復権して破滅への道をひた走りました。彼らの内には黒々とした悪意が巣くっていました。あたかも自身の破滅を願うかのように。闇が機械世界を包みはじめました。サンボンの最終兵器の使用を契機に機械帝国も深い闇のなかに巻き込まれていきました。   

                    モモは未来にとても不安を感じました。∞がとても小さいのに世界は危険な方向に動き出している。でも、∞に暗い顔は見せないようにしよう。∞にはミロク様がついているので大丈夫だ。ミロク様はお父さんによるとお前はとても良い孫を持ったものだとおっしゃったといいます。ミロク様は∞にお前は何になりたいと尋ねられたそうです。モモは∞にはたいへんな後ろ楯があると確信しました。∞がモモに近づいてきて、おかあさん何か面白いことあったのと尋ねました。モモは笑ったまま∞に何も答えませんでした。  

                    ミロクは宇宙船のなかで∞のことを思い出しました。ミロクは∞がぼくはウルトラマンになると言っていたことを思い出しました。∞はきらきら輝く瞳でミロクを見つめていました。私が下降するときにAi Ai がミロク様ありがとうと言って、∞も真似てありがとうと言いました。小さな手を精一杯に振って、何度も何度もありがとうありがとうと言いました。ミロクがその姿を見て笑うと∞も笑いました。かわいいやつよ。宇宙船に帰っても、ミロク様は微笑んでいました。超生命体はミロク様を見て幸せな気持ちになりました。ミロク様はなにより無垢なものが好きでした。∞のことをミロクは見守ってやろうと思いました。   

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