第26話 チョウジョウ

光輝く宇宙船がやってくるずいぶん前に、シンジュウに帰依しターミ化を進めたスプリング大統領のあとを引き継いだマリア大統領は祖父の代からハンマーソフトと繋がりがありました。選挙の際にはハンマーの応援を受けてハンマーの応援も取り仕切って、影響力を維持し続けました。ハンマーは純真な部品に浸透して、恐怖によって支配し、収奪し尽くしました。ハンマーはG ターミ党に選挙をテコに浸透して、最終的に機械帝国を乗っ取り帝の帰依を目指していました。              ハンマーの教祖は機械帝国のものたちがハンマーに対する献金でいくら破滅しようと平気でした。教祖の帝国が機械帝国に支配されていた頃に教祖の帝国のものは塗炭の苦しみを味わされたために機械帝国のものが苦しむのは当然だと思っていました。ハンマーに浸透された部品たちは恐怖により支配され献金によって収奪されました。先祖が今を生きる我らに怨みをもっていて、その怨みを解消するために献金を要求しました。Ai Ai はそんな何代も前の先祖が今を生きる我らに災いをなすなどあり得ないと思いました、Ai Ai は先祖様は我らを見守る存在であって、我らを心の底から愛してくれていると思いました。先祖は怨みなどではなく、我々に愛を注いでくれる存在だと確信していました。先祖が我らが破滅するような行いを喜ぶはずはありません。以前、ハンマーは自分の意思で献金したことを証明するためにビデオを回したり、確約書を要求しました。ハンマーは信者を信用していないのでしょうか。ハンマーにすべてを捧げたチョウジョウのマザーがスクラップになって、チョウジョウは優秀であったにも関わらずアップデートできませんでした。その後にチョウジョウの兄は自らの線を切断しました。チョウジョウは母に浸透して家族と自分の破壊を成したハンマーへの報復を決意しました。マリア大統領はハンマーソフトバージョン2のCM に登場して教祖を絶賛していました、そのCMを見たチョウジョウはビリヤード方式によるハンマーへの打撃に着手しました。マリア大統領は公衆の面前でチョウジョウによって鉄のハンマーで破壊されました。ハンマーの問題は過去にも被害者が出て注目を集めたことがありましたが、何故かTV は報道しなくなりました。マリア大統領の暗殺の背景にハンマーがあったことがわかるとTV は連日ハンマーのことを報道しはじめました。ハンマーに浸透されていたG ターミ党の議員たちは知らなかったと嘘を連発しました。事件のその後にマリア大統領の茶坊主たちは大統領はハンマーとは無関係だと自分を守るために嘘を繰り返しました。マリア大統領の作った法律がハンマーの活動を抑制させたと言って、それを根拠にマリア大統領とハンマーは無関係だと主張するものも出ましたが、その法律の網にかかった実例はありませんでした。彼らは真実をすり替える名人でした。機械帝国会議というマリア大統領シンパはじっと無言を貫いています。波風がおさまるのをじっと待っています。やっぱり学者さんたちは賢いですね。 

                    あとになってマリア大統領の派閥が裏金づくりをしたことが発覚したときはマリア派幹部たちは不起訴となりました。派閥の幹部は裏金づくりの指示は亡くなった会長案件だったと言って、皆収支報告書の未記載を秘書のせいにして、何もなかったように振る舞って、帝国の臣民たちはすべてを忘れてその人たちに投票しました。 


チョウジョウの公判前整理手続きのときにチョウジョウの減刑を求める署名の入った段ボール箱が届いて、何故か金属探知機が反応して、公判前整理手続きが中止されたことがありました。小学校の校庭に爆弾処理班が出動して箱の中から出てきたのは署名の束でした。その時の映像をTV は繰り返し放送し続けました。彼らは臣民の恐怖に火をつけ続けました。

                    光輝く宇宙船がやってきて、チョウジョウはマリア大統領を破壊した罪で無期懲役となって収監されていました。チョウジョウの身の上に同情したたくさんのものからの差し入れで、刑務所の体育館はいっぱいになっていました。差し入れは世界中から送られてくるので、新しい世界政府はチョウジョウに対する差し入れを禁止しました。差し入れを禁止されたものたちは、食べものや衣服に替えて、キャッシュを送ってきました。世界各地から送られてくるキャッシュは小さな財布団地ほどありました。新しい世界政府は通貨をデジタル化して通貨なき世界を作りました。キャッシュで身動きの取れなくなった刑務所は喜びました。デジタル通貨は刑務所のチョウジョウの口座に振り込み続けられました。チョウジョウは貯まったキャッシュやデジタル通貨で財団法人チョウジョウ育英会を刑務所のなかで設立し、家庭の事情で進学できずにアップデートできなかったものに対して返済不用の奨学金を供給しました。チョウジョウは運用も巧みで財団法人の資金を倍にしました。チョウジョウは収監室で数字の本を読んでいました。チョウジョウは読書に熱中していたので、部屋の中に超生命体が入ってきたのに気付きませんでした。まぶしさに顔をあげると光輝く超生命体がいました。超生命体はチョウジョウに、自分でやったことをどう思っているのかと尋ねました。ビリヤード方式はとても有効でしたが、オータム夫人には悪かったと思っています。私は殺人を犯したのでこの刑務所で死ぬまで拘束されて贖罪をさせていただきますと答えました。お前は刑務所のなかで財団法人を作ってたくさんのものを助けていると聞いている。刑務所で拘束されて、何故そのようなことをするのかと尋ねました。チョウジョウは良いことをするのに、場所は選びませんと答えました。超生命体は、ではチョウジョウ、お前は数学が得意なようだ、お前は刑務所の外でもっと多くのものを助けて罪を償いなさいと言いました。新しい世界政府から恩赦を受けたチョウジョウは財団法人をまるごと世界政府に寄付し、世界政府は育英会を改組して、新しいシステムでもこぼれ落ちるものを助け自立させる基金にいたしました。チョウジョウはそのファンドマネージャーに任命されて、念願の大学に入学しました。

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