第4話 らぶいずミステリー

「凄い歯ね」

「そう? まあ子供の頃から健康優良児で、歯医者さんにも褒めてもらっていたけどね。それよりトイレ行かなくて良いの?」


「大丈夫、それに先客があるみたいだし」

「あのおばあさん、介護が必要なのかな? 僕行ってこようか」


コナミくんがシートベルトを外すと、老婆の姿が慌てて…消えてしまう。

「あれ? いなくなっちゃった」


給油も終わって、スイカ男も逃げるようにどこかへ行ってしまった。

キラキラ光るゴールドVIPメンバーズカードと領収証が、車内を舞う。


「あまり態度の良くない店員だね! 経営が心配になるよ」

それを空中でキャッチしたコナミくんが、ヤレヤレとばかりにため息をつく。


周囲にたちこめていた不気味な黒い影も、からりと晴れる。


「ねえ、あたしと居るとこんなことばかりだけど…嫌じゃない?」

気付いてなさそうだが、一応聞いてみる。


「幽子ちゃんと居るのは楽しいよ! 僕はホラ、こんな感じで、今ひとつ空気が読めないというか、人間関係の機微? に、うといから…逆に迷惑かけてない?」


「ぜんぜん、凄く助かっている」

「良かった! 幽子ちゃんが最近明るくなってきたんじゃないかって、まわりの子たちも言っていただろ? 僕、それを聞いて嬉しくってさ」


楽しそうに微笑んだコナミくんの歯は、やっぱり真っ白でキラキラだ。

浄化魔法ってやつだろうか?

歯は命って言うし。


「じゃあ、海水浴にレッツ&ゴー!!」

意気揚々と車を発進させる、この男は、やはりなにかおかしい。


認めたくないが、これも恋? なのだろうか…。


まったく、世の中のどうでもよい真理とは、理解不能なホラーがたくさん潜んでいて…解けないミステリーだらけだ。




あたしはため息をつきつつ、青すぎる空を見上げた。

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