第3話放課後

夕方になってもまだ1人教室に残っていた。

小説を読んでいるのだ。没頭しているうちに最後の1人になっても気づかないでいた。

だけど、廊下から聞こえる甲高い複数の笑い声にハッと顔をあげた。どうしよう、今日は見つからないで帰りたかったのに。

『田形〜!きゃははは』

『はははっ、やめなよ、りお〜』

『別にいいじゃん、遊んであげたいだけだし』

優里が教室に逃げ場所を探してるうちに足音と耳障りな声が近づいてくる。ドクドク心臓の音が止まらない。ああ、ここから瞬間移動できたらいいのに。鞄を持って、教室のベランダにでて、教室の中から見えないようにしゃがんだ。

ガラガラッ

教室の扉が開く音がした。

『あれー、いないじゃん。あいつ』

『川野がまだ残ってるって言ってたけど。』

手は震えてた。早く居なくなって、ここまで来ないで、お願いっ!

願いに反して、中に入ってきた。教室の真ん中あたりで足音が止まった。

ガタンッ!

びくっとして、そのまま硬直した。

『行こ。』

捨て去るように言うとそのまま教室から去っていった。

恐る恐るベランダから教室をのぞいた。優里の席だけ倒されて、他の席までぐちゃぐちゃになっていた。

こんなのまだマシ。あいつらに対面することに比べれば平気。

優は黙々と席を元の位置に戻し始めた。その間ずっと頭と喉が詰まったような感覚がして、目元が熱くなっていった。

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