第2話 運命の出会い

 




 ◆姫野瑠花ひめのるか視点





 私の名前は姫野瑠花ひめのるか。現在25歳の上席主任統括と言う管理職の会社員です。今日は夏のビアガーデンという事で、日頃の疲れを労うという形で社員達との屋外で飲み会です。


「姫野しゃん〜飲んでまふかぁ?」

「真島さん、酔い過ぎです。お酒は程々にしないと駄目ですよ?」

「はぁ〜い♪ ひっく.......ふわぁ♡ 姫野しゃん、良い匂いがしますぅ♡」

「こら、どさくさに紛れて胸揉まない!」

「うひひ〜」


 この子は私の部下の真島奈津美まじまなつみさんです。茶髪のボブカットヘアーにパッチリとした瞳の愛らしい女性だ。明るい性格で誰にでもフレンドリーなので、男性社員からの人気は凄まじい。


「姫野しゃ〜ん。なんれ.......こんなにも、おっぱい大きいのれふかぁ〜! 痛たっ.......!? 頭叩かないでくだしゃいよぉ〜!」

「いい加減になさい。来週から真島さんの仕事量増やすわよ?」


 はぁ.......早く帰りたい。会社の飲み会に参加するのは毎度憂鬱だ。私はお酒に弱くてあんまり飲めないし.......でも、会社の上席主任統括と言う役職を頂いてるからには飲み会に出るしか無い。部長や課長からの【勿論、姫野君も出るよね?】と言う圧力の前には屈するしかありませんでした。あのセクハラ部長の接待をするのが一番嫌です。


「にゃ〜ん.......にゃ〜お.......」

「あら? 真島さん、今.......子猫の鳴き声がしなかったかしら?」

「んん? どこどこぉ? 子猫ちゃんおりゅの?」


 気になって声のした方へと向かって見ると、何とテーブルの下に白いもふもふとした小さな子猫ちゃんが居たのです! 見た目はかなり汚れており、足元もフラフラと覚束無い様子でかなり弱っています。


「ふわぁあああ♡ か、可愛い♡ 姫野しゃん〜この子どうしますぅ?」

「この子、かなり弱っているわね。お腹が空いているのかしら?」

「姫野主任、この子は恐らくまだ産まれてから間も無いと思います。子猫用のミルクがあれば良いのですが.......」

「あら? 貴方酔ってたんじゃないの?」

「あっ.......ごほんっ。姫野主任の横顔に酔っちゃいました♡」

「ふ〜ん.......あそ」

「ふぁっ.......!? まさかの塩対応!? 姫野主任ちょっと塩くないですかぁ? こんなに可愛い後輩を持って嬉しくないのですか!?」

「ごめんなさい。定食に付いてくるパセリはいらない派なの」

「もお〜またまたそんな事言っちゃって〜姫野主任はツンデレですかぁ?」


 本当にやかましい後輩ですね。口を開けばマシンガンの連射の様に1人で一生喋っていそうです。良し、面倒な案件をこの子に投げてやろう。


「にゃう.......」

「あら、子猫ちゃん大丈夫?」

「がるるっ.......」


 私と真島さんで怯える子猫ちゃんをどうしようかと眺めて居たら、次第に周りの社員さん達も集まって来ました。


「にゃーん.......!?」

「あぁ、驚かせてごめんね? 大丈夫、安心して♪」


 姫野は子猫を怖がらせない様に、笑顔で接しようと話し掛ける。白い子猫は身体をプルプルと震えさせながらその場で固まってしまった。


「姫野統括主任、どうしたのです?」

「あ、長島主任。ここに野良の子猫ちゃんが居るのですよ」

「こ、これは.......子猫ちゃん相当弱ってますね。命の危険があります.......でも、まだ幼いだろうから固形物のご飯は食べれないだろうし.......それに親猫は?」

「周りを見るとこの子のお母さんらしき猫ちゃんは見当たらないですね.......」

「ふむふむ、もしかして親猫に捨てられてしまったのかな?」


 こんなに幼い子猫を捨てる何て.......もしかしたら、何か事情があったのかな? でも、今はそんな事考えてる場合じゃないですね。この子の命を守らないと!


「長島主任、私この子を急いで連れて帰ります。部長や課長には、姫野は用事で帰りましたとお伝えくださいませんか?」

「あぁ、分かりました。僕の方から言っておきますね」

「ありがとうございます」


 さてと、問題はこの子猫ちゃんが素直に抱かせてくれるだろうか? 見た所、人間慣れしてないのか物凄くこちらを警戒しています。


「にゃー!」

「子猫ちゃん大丈夫よ。私の所に来てくれるかな?」

「にゃお.......」

「うん♪ 良い子良い子♪ 私は敵ではありません」


 まずは頭を撫でて落ち着かせよう。この子はただ怯えているだけなのです。私は敵ではありませんと安心させてあげる必要がある。


「子猫ちゃん、おいで」

「にゃう.......」

「うわ、軽っ.......!? 子猫ってこんなにも軽いの.......!?」


 力の無い私でも、片手で簡単に持ち上げる事が出来ちゃいました。これは一刻も早くこの子にミルクをあげなくちゃ! 餓死してしまう!


 私は子猫ちゃんを抱いて急いで我が家に帰宅しました。





 ―――姫野宅―――





「にゃー! にゃー!」

「よしよし、お家に着きましたよ〜直ぐにご飯を用意するからね♪」


 子猫ちゃんの身体がかなり汚れていますが、まずは先にご飯です。帰りにコンビニで子猫のミルクや猫ちゃん関係の物を片っ端から沢山購入しました。私はペットを飼った経験がありませんので、何が必要なのか良く分かりません.......携帯で色々と調べるしかありませんね。


「にゃあ!?」

「子猫ちゃんごめんね、少し大人しくしてくれるかな?」

「にゃ.......」


 か、可愛い.......♡ はっ.......!? 今はそんな事思ってる場合じゃない! 早くミルクをあげなければ! 一旦子猫ちゃんを籠の中に入れて置きましょう。


「えと.......猫ミルクは、35℃から40℃の温度が適温なのね。付属の計量スプーンに.......」

「にゃーん!」

「ちょっと待って、今ミルク作ってるからね♪」


 ん? あ、粉ミルクを溶かす為に一度50〜60℃くらいまで沸騰させてから冷ますのね。冷たすぎるのも子猫ちゃんの体温を下げてしまう恐れがあると.......ふむふむ、これは慎重に作らないとダメね。





 ―――数分後―――





「良し! 温度はこのくらいかな? 子猫ちゃんご飯出来たよ〜今お姉さんが飲ませてあげるからね♪」

「にゃ〜!」


 猫ちゃんを膝の上に乗せてと.......どうしよ。ミルクの飲ませ方がイマイチ分からないわね。ここはネットで調べて見るとしましょう。


「なるほど、ここを支えて.......」

「にゃふ!」

「あ! そんな急いで飲んだら危ないよ?」

「ごくごくっ.......にゃう.......ごくごくっ.......」

「落ち着いて飲んでね♪」


 哺乳瓶を子猫ちゃんの口元へ持って行った瞬間、凄まじい勢いでゴクゴクとミルクを飲み始めました。


「あらあら、ミルクが零れちゃってるよ〜うふふ♪」

「ごくごくっ.......」


 はぅっ.......♡ か、可愛い♡ 可愛いしゅぎるよぉ♡ 子猫ちゃんが可愛い過ぎて、私が天に召されそうだわ♡ 私の手の平に乗っかるくらいの大きさ.......こんな小さいのにお外の世界で、良く1人で生きて居たわね.......


 勢いで子猫ちゃんを拾って来ちゃいましたが、これも良いきっかけです。この子は私がお世話をしよう。自宅に帰るといつも1人なので、猫ちゃんが居る生活も良いかもしれません。


「今まで良く頑張ったね♪」

「にゃう!」

「え、もうミルク飲んじゃったの?」

「にゃーん!」

「あらあら.......ちょっと待ってね♪」


 私は追加のミルクを作って、再び子猫ちゃんに飲ませてあげました。ミルクをあげたからなのか、子猫ちゃんは私に対して警戒心が少しほぐれた様な気がします。


「ごくごくっ.......」

「沢山飲んでね♪ 子猫ちゃん、これから私と家族になろ♪」

「にゃふ!」


 家族が出来るのは素直に嬉しい♪ この子は大切に育ててあげよう♡


「にゃーお♪」

「ミルク美味しかったかな?」

「にゃ〜ん♡」

「よしよし♡」


 どうやら子猫ちゃんの性別は女の子かな? あそこが付いて無いし.......それとこの子はなんと言う種類の子猫ちゃんかしら? ちょっとスマホで調べて見よう。


「えっと.......あ、これかな? おおっ.......スコティッシュフォールド!」

「にゃ〜ん.......」

「あらあらぁ♡ 今度はお眠かな?」


 あ、そうだ! 確か飲ませた後はゲップをさせてあげないといけないと書いてあったわね。子猫ちゃんの背中を優しくさすってあげれば.......


「はぁ〜い♪ 子猫ちゃん〜ゲップしましょうね♪」

「にゃ.......にゃ〜」


 さあ、子猫ちゃん! ゲップをするのよ!


「にゃーん.......うぷっ」

「おお!? 良く出来ましたね♡ 良い子でちゅね〜♡」

「にゃー!?」


 思わず頬っぺたでスリスリとしてしまいました。少し子猫ちゃんの身体から排水溝の様な匂いがしましたので、子猫ちゃんを寝かし付ける前にお風呂に入れてあげましょう。コンビニで猫用のシャンプーも買ったので、ネットで調べながら子猫ちゃんを丁寧に優しく洗って行こう。


「子猫ちゃん、お姉さんと一緒にお風呂に入りましょうね〜♪」

「にゃお?」

「そんなに怯えなくても大丈夫でちゅよ〜♡」


 瑠花はルンルン気分で子猫ちゃんを抱いてお風呂場へと向かうのであった。





 ―――お風呂場―――





「子猫ちゃん、どこ行くの?」

「にゃ!?」


 私が服を脱いで裸になると子猫ちゃんは視線を逸らして、壁の隅っこへの方へと逃げて行ってしまいました。先程まで私の腕の中で大人しくしていたのに.......


「はい、子猫ちゃん捕まえた♡」

「にゃー! にゃお!?」

「えい!」

「わぷっ.......!?」


 初めて自分の巨乳が役に立ちました♪ 私の胸の谷間に子猫ちゃんを挟んだら、子猫ちゃんの動きがピタリと止まりました。


「よしよし〜怖がらなくても大丈夫だからね〜♡」

「にゃう.......」


 子猫ちゃんが借りて来た猫のように大人しくなったぞぉ〜♪ 桶に適温のお湯を注いでから、子猫ちゃんをそっと桶の中に入れてあげました。


「あら? 子猫ちゃん、お湯平気なの?」

「にゃ〜♪」

「気持ち良い?」

「にゃう.......♡」


 猫ちゃんは水とかが苦手なイメージがありましたけど、この子猫ちゃんは身体にお湯を掛けても大人しいですね。むしろ気持ち良さそうな表情を浮かべてうっとりとしています。


「貴方の名前も考えないと行けないね〜どうしようかな」

「にゃ?」

「う〜ん、エリザベスとかどうかな?」

「..............」


 あら? 何だか反応が素っ気ないような気がする。じゃあ、カトレーヌ? いや、ダイアナ? ジョゼビーヌとかどうでしょう?


「にゃ!」

「う〜ん、お嬢様系の名前はお好きじゃないのかな?」


 ここはシンプルに可愛い名前にしよう。ならば.......


「もふもふ.......もふ.......モフちゃんとかどうかな?」

「にゃう!」

「おお! 気に入ってくれた!? じゃあ、これから宜しくね♡ モフちゃん♡」


 良し、名前は決まったわ♪ 


「にゃ〜ん♪」

「はうっ.......♡」


 何と無防備な姿なの!? モフちゃん可愛いなぁ♡ こちらにお腹を見せちゃって♡ こちょこちょしちゃうぞ?


「よしよし♡ シャンプーしましょうね〜♡」

「にゃ〜ん」


 この猫ちゃん専用の薬用シャンプーを使います。使い方は先程動画で確認したので、後は実践あるのみ! しっかりと念入りに汚れを落としてあげるからね♡ モフちゃん♡ そしたら、今日の夜は私と一緒にお寝んねしましょう♪


 今日が週末の金曜日で良かった。明日が休みなのが幸いですね。起きたら朝イチにモフちゃんを動物病院へ連れて行きしっかりとお医者さんに見て頂きましょう。


「にゃ〜う♡」

「きゃああああああああああああああ♡♡♡♡♡♡ もう無理! モフちゃん可愛いすぎるよぉ!」

「にゃあ.......!?」


 はぁ.......はぁ.......♡ スマホでこの姿を撮りたいわ♡ 胸がキュンキュンする♡ 多分、今の私の顔は他人には見せられないくらいにニヤニヤとだらけ切っているような気がします。職場では絶対に見せられないわ。


「モフちゃん小さい尻尾でちゅね〜♡ ほれほれ〜♡」

「にゃにゃあ!?」

「モフちゃんがそんなに可愛いのがイケナイのですよ? 大人しくしないとこちょこちょしちゃいますからね?」


 仕事でボロボロになった私の心が癒されるぅ♡

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