新スキルいっぱい!
パワーレベリングの成果を確認するために、またザワザワ森を攻略していく。
今回はだいぶ簡単になるだろうな。みんなに色々なスキルを覚えてもらったし。
俺もいくらか相談を受けたので、どういう役割を果たしてほしいか伝えた。
さすがに直接スキル名を伝えると、やり過ぎのような気がしていたからな。
まあ、みんなだって全部説明しても理解してくれたかもしれないが。まあいい。過ぎたことだ。
それよりも、今日は前より順調に進めるということ。楽しみだ!
ボスのところまでは向かえないだろうが、いろいろできるはずだからな!
「さあ、ザワザワ森に行きましょう。敵をいっぱい倒して、攻略のついでにステータスアップです」
「ああ。アタシ達がスキルを覚えたといっても、ステータスだって重要だからな」
「そうだね。単純に強くなるには、ステータスを上げるのが一番早いよ」
「クリスさんのおかげで、ずいぶん強くなれましたね~」
俺の力は確かに大きかった。でも、これからみんなが努力してくれると信じるからこそだ。
『肉壁三号』の強さに頼ってばかりの人とは思わないからこそ、一緒にパーティを組みたいんだからな。
そういう意味では、俺がやったことは余計なお世話かもしれないが。
だけど、みんな苦しそうだったからな。あまり見たくない顔ではあった。
「じゃあ、行きましょうか」
ザワザワ森へと向かっていき、さっそく敵と出会う。
いつも初めにぶつかる、青くて大きい蝶だ。まずは試し切りの相手としてちょうどいいよな。
どれだけ強くなっているのか、いい判断基準になるだろう。
「アピールタイム。カースウェポン」
俺もいつもの立ち回りだ。敵を引き付けて、攻撃。
最悪の場合でも、俺はみんなをかばえるようにしておくべきだからな。
イヴェイドエンドを使える状況にしておくのが一番だろう。俺が盾として活躍できるのは、イヴェイドエンドの攻撃無効があってのもの。
防御力は高いとはいえ、おまけだ。いや、一部のスキルの火力に関わっているのだが。
「行くぞ! パワーチャージ。メガスラッシュ!」
ソルは攻撃上昇のバフスキルを使った後、ハイスラッシュの上位スキルで切りつけていく。
もう、俺のカースウェポンより火力が高いかもしれないな。まあ、カースウェポンは俺にとって相当弱いスキルではあるのだが。
それでも、ソルの火力が高まったことはありがたい。俺がタンクに集中しやすくなる。
「私も続くよ! クイックスペル。ダブルマジック。メガファイア!」
セッテは詠唱を短くするスキル、魔法を二連続で放てるようになるスキル、上級魔法の順で使う。
炎の竜巻が生み出されて、一気に蝶のHPが減っていく。
MPの都合上、あまり連発できるものでもない。
それでも、MPポーションをうまく使えば強力なダメージソースになってくれる。
「ハイホーリー。どうですか~?」
ユミナは僧侶が使える攻撃呪文をぶつけていく。
回復に専念してもらうのもいいが、味方のダメージを減らしたほうが僧侶のMP消費が減るというのは珍しくないからな。
素早く敵を倒せるのならば、結果的にMPの節約になることも多いのだ。
そのまま最初の敵は倒れていき、やはり成長が見て取れる。
前回までの感じだと、一体倒すのにも何ターンもかかっているような感覚だった。
今の状況だと、1ターンキルだと思っていいだろうな。
つまり、敵を倒すだけでも消耗していた分が、だいぶマシになったわけだ。
「いい調子ですね。このまま進んでいきましょう」
「ああ。スキルを覚えるだけで、全く別人になったみたいだ。クリスが勧めるわけだよ」
「そうだね。敵を素早く倒せるのなら、多くの敵と戦えるはずだからね」
「皆さんが傷つかないのも大きいですよ~」
うんうん、和やかな雰囲気になっている。やはり、順調に攻略できないプレッシャーがあったのだろうな。
俺だって、現実だと思えば苦しんでいただろう状況だ。
ゲームの時はいくらでも同じ事が繰り返せた。でも、命がけの戦いで停滞を感じたら、それはつらいよな。
やはり、パワーレベリングを提案して良かった。
俺がみんなにできることは、『肉壁三号』のスペックに頼ったことだけだからな。
みんなの気分を落ち着けるような楽しい会話はできないし、どう慰めるのかも分からない。
だから、みんなの役に立てたことも嬉しいんだ。大切な友達で、仲間だからな。
「いい感じです。楽にモンスターを倒せるのなら、その方が良いですからね」
「だな。次のモンスターも簡単に倒したいものだ」
そのまま次のモンスター、また次のモンスターと倒していき、今度は集団の敵とぶつかった。また蝶だ。
だが、新しいスキルを覚えたことで、大勢の敵にも対処できるようになったんだよな。
「アピールタイム。ペインディヴァウアー」
今度は俺のHPが減っているので、より強い威力を出せるスキルを使う。
いつも通りに敵を引き付けておくことも忘れない。まだイヴェイドエンドは必要ない。
HPは減っているとはいえ、敵の攻撃が直撃しても大丈夫なラインだからな。
MPを節約しておきたいし、HPもギリギリまで減らしたい。
それを考えたら、攻撃を防ぐスキルはまだいらないな。
「まだまだ! パワーチャージ。ワイドスラッシュ!」
「もっと行くよ! クイックスペル。コンセントレーション。メガファイア!」
ソルもセッテも攻撃範囲の大きいスキルを使っていく。
ワイドスラッシュは全体攻撃になったスラッシュ。
コンセントレーションは魔法の効果範囲を拡大するバフだ。
つまり、二人とも全体攻撃ができるということ。
それでも、敵が多いと1ターンキルはできない。
重ねて、戦闘時間も長引くからダメージを受けていくだろう。
だが、今みたいな状況に対応できる手段もあるんだ。
「コンティニューヒール~」
ユミナの使った、一定時間、HPを自動回復するスキル。
俺にはかけないでもらっているが、ソルとセッテはだいぶ助かるだろう。
おかげで、HP管理がずいぶんと楽になるからな。
同じ動きを繰り返して、集団の敵も無事に倒すことができた。
これなら、いっぱい敵と戦ってステータスアップできるだろう。
俺達の冒険は順調だ! もっともっと強くなって、魔王だって倒してみせる!
――――――
ソル達はクリスの助けで新たなスキルを覚え、順調に冒険を進めることができた。
ステータスだって、今の調子ならば素早く上昇させていけるだろう。
だからこそ、クリスの状態が気になった。
なにせ、クリスには今のソル達が受けた手助けなどなかったはずなのだから。
つまり、クリスはたった1人で戦い続けたのかもしれない。
あるいは、仲間を失い続けてきたのかもしれない。
いずれにせよ、クリスほどに強くなるには、ソル達には想像もつかないような道のりが必要だろう。
そこまで考えて、クリスの苦痛が強く思い描かれた。
ソル達はクリスに相当楽をさせてもらっている。
転じて、クリスはソル達よりも多くのモンスターを倒してきた。
ソル達にとってのクリスなど、クリス本人には存在しないだろうに。
つまり、数え切れないほどのモンスターを個人の努力で倒し続けてきたはずだ。
「クリスみたいな手助けしてくれる人無しで、アタシ達はクリスくらい強くなれるか?」
「そんなの、言わなくても分かってるんじゃないかな?」
「クリスさんは、どうやっていっぱいスキルを覚えたのかしら~?」
「決まってる。アタシ達が想像もできないくらい、過酷な戦場で戦い続けたんだ……」
クリスの過去を想像するたびに、過去は変えられないという事実が襲いかかる。
誰もが過去に手が届かないという苦しみに
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