組み合わせの可能性は無限大!
さあ、セッテという新しいメンバーも加わったことだから、冒険の時間だ!
魔法使いで、ある程度の火力を備えている。セッテの役割は砲台になるはずだ。
これまでは見つからないように敵を片付けてきたのだろうが、今は俺がいる。
だから、俺が盾になった上で、しっかりと魔法を放ってもらえば良い。
パーティメンバーが増えたおかげで、戦術が増えたのは楽しそうだ。
「セッテさん、しっかり守ってあげますから、安心して魔法を撃ってくださいね」
「ああ。アタシだってアンタに攻撃させないからな」
どう考えてもセッテは後衛なんだから、攻撃が命中した時点で終わりだ。
ちゃんとタンクとしての立ち回りを実践しないとな。
というか、ソルにまでタンクをしてほしくはない。火力役として活躍してほしい。
俺がいれば最悪ヘイトは稼げるので、変に防御にスキルを割り振られてもな。
まあ、俺以外と組むつもりなら、止めることはできないのだが。行動も、スキル振りも。
「2人が守ってくれるのなら、心強いよ。見つかったら逃げていたからね」
セッテは可愛い顔をして、なかなかに剛の者だな。
まさか、遠くから魔法で暗殺していくことだけを手段にソロ活動していたとは。
俺でも現実ならためらう戦法だぞ。正直に言って、男前がすぎる。
「なら、ボクがいれば心配無用です。ボクは壁としては最強なので」
「そ、そうだな。でも、無理はするなよ。いくらダメージを受けなくても、怖さを感じないわけではないんだからな」
本当にソルは優しい人だな。でも、心配はいらない。
俺は間違いなく最強だから、ミスを連発した程度じゃ死なない。
分かり切っているから、怖くなんて無いんだ。
もし初期ステータスでこの世界に来ていたら、恐れていたかもしれないが。
「大丈夫です。モンスターの攻撃なんて、怖くないので。へっちゃらです」
「クリスくんに無茶はさせないように、私もしっかり頑張るよ」
「頼りにしていますね。魔法使いの仲間、欲しかったんです」
「任せて! 期待に恥じない結果を残してみせるよ!」
うん、期待十分だ。ナダラカ平原の敵を一撃で倒せるということは、上級魔法くらいは使えるだろう。
そう考えたら、かなり経験豊富って感じはするな。スキルポイントから考えて、だいぶ敵を倒してレベルを上げているはずだ。
『セブンクエスト』はなかなかに特殊で、レベルでステータスは上昇しない。あくまで行動の結果でステータスが増える。
ただ、レベルを上げてスキルを覚えると、大幅に戦術が変化することもある。
スキルの組み合わせによっては、ゲームバランスが壊れるほどのものも多い。
オフラインゲームの良いところだよな。ぶっ壊れ技を使っても、誰にも迷惑をかけないんだから。
「じゃあ、ダンジョンに向かいましょうか」
「ああ。しっかりやらせてもらうさ」
「頑張るからね。助けてもらった恩は返すよ」
「無理はしないでくださいね。大怪我されたら、助けた意味がなくなっちゃうので」
「うん。心配してくれてありがとう。気をつけるよ」
それからナダラカ平原へ向かって、ある程度動きを確かめていく。
敵が見つかったら俺が誘導して、ソルかセッテの相性の良い方に倒してもらう。
ライオンはどちらでも倒せるので空いている方に、イノシシは炎に弱いのでセッテに、チーターは物理に弱いのでソルに倒してもらう。
弱い敵ばかりだから、それなりに簡単に倒せていた。下級魔法はクールタイムが短いから、ここらあたりの敵には有効だよな。
セッテはファイアを連発して敵を倒していた。うん、慣れている感じがあるな。
「うん、順調だね。浅いところだと、こんなものかな」
「そうだな。もうちょっと余裕がありそうだな」
「ですね。最悪ボクが守るので、もう少し奥まで行きませんか?」
敵のヘイトを稼ぐ手段は持っているので、俺に攻撃を集中させれば良い。簡単だな。
ここらあたりの敵なら、まだ防御力まかせでどうにかできる。
そもそも、防御というより火力が問題なんだよな。俺のビルドでは。
「分かった。セッテ、気をつけていくぞ」
「うん、そうだね。クリスくんに負担をかけたりしないよ」
「あまり気にしすぎないでくださいね。ボクならどうとでもできるので」
少し進んでいくと、今度は別の敵たちが現れ始めた。
シカみたいな敵、ウサギみたいな敵、猫みたいな敵。
見た目で油断して死んでいったプレイヤーはいっぱいいるだろう。
先程までの敵よりも、明確に強くなっているんだ。
「私の魔法で! ファイア!」
セッテから炎が敵に向かって放たれていく。だが、有効打ではない。
「なら、ウインド! アイス!」
セッテは風や氷の魔法を放っていくが、効果はあまりない。
属性の問題ではなく、火力の問題だ。ここからは、初級魔法では対応できない。
だから、中級魔法を撃っていく必要があるんだよな。
セッテも理解したみたいで、詠唱に入っていく。
発射されるまでの時間が長いから、俺が守ってやらないとな。
「ソルさんも下がってください。ボクが壁になります。アピールタイム」
「セッテの魔法で倒すんだよな。分かった!」
挑発スキルを使って、こちらに攻撃を集めていく。
敵は俺の方に全力で攻撃を仕掛けてきている。
俺が攻撃すれば簡単に倒せるが、それではパーティとしておしまいだ。
みんなにも活躍の場を用意しなければ、組んでいる意味がないからな。
そんな俺の考え通り、セッテは中級魔法の詠唱を終え、放っていく。
「行くよ! ハイファイア!」
複数の炎が敵に向かっていき、直撃と同時に舞い上がっていく。
やはり、初級魔法よりは明確に派手だな。それに、威力も高い。
そのまま敵達は燃やし尽くされて、ドロップアイテムへと変わっていった。
「やりましたね、セッテさん。おかげで楽ができました」
「ああ。大した魔法だったよ。大活躍だな」
「へへ……そんなに褒められると照れくさいよ。でも、そろそろ魔力がすっからかんだよ」
「じゃあ、帰りましょうか。次からは、MPポーションも用意してきましょう」
そうして俺たちはパーティとしての冒険を順調に終えたのだった。
セッテの魔法は活躍したし、次は近接と遠距離の連携ができたらいいな。
とはいえ、きっと難しいだろうけれど。だが、楽しみだな!
今から次の冒険が待ち遠しい! ああ、『セブンクエスト』最高だな!
――――――
セッテはクリスたちとパーティを組んで、最初は順調に進んでいた。
モンスターたちはいつもより簡単に倒せるし、パーティを組んで良かった。そう考えていた。
考えが変わるきっかけになったのは、ナダラカ平原の奥へと進んだころ。
今までよりも明確に強大な敵が現れて、いつもの戦術が通用しない。
覚えていた中級魔法の出番だと理解して、使おうとする。
だが、中級魔法からは詠唱に時間がかかる。だから、一撃で倒すと決めたときに、敵から隠れたまま使う技だった。
それが致命的な問題だと理解したのは、クリスの動きを見てから。
アピールタイムという技を使ったクリス。そこに群がっていく敵。
そして、ずっと攻撃に耐え続けるクリスの姿を見続けながら、詠唱を続けていく。
クリスに攻撃が当たるたびに、自分の無力感を思い知らされながら。
中級魔法で敵を倒すことに成功し、クリスに褒められるセッテ。
それでも、心にはずっと暗いものだけしかなかった。
自分がもっと強ければ、クリスに負担をかけないで住んだのに。
強い後悔のような感情に襲われたまま、それでもクリスの前でだけはとりつくろっていた。
クリスたちと別れた後で、セッテはポツリとこぼす。
「私が弱いからなの? クリスくんが本当に盾になっちゃったのは。でも、私に他の手段なんて無い……」
魔法使いとしての自分でいる限り、きっとクリスに負担をかけ続ける。
セッテは初めて、自分が魔法使いであることを恨んだ。
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