ソロだって楽しい冒険だよな!
「さあ、今日は1人でダンジョン祭りだ! いっぱい遊ぶぞ!」
パーティで冒険するのも楽しいが、やっぱり自分のビルドをぶん回すのも楽しいよな!
ソルが居ると、邪魔と言うと言い方が悪いが、ちょっと感覚が違うからな。ソノ二の洞窟をソロ攻略だ!
全力で周りを気にせず火力をぶっ放す! 最高の気分になれる瞬間のひとつだ!
「まずはゴブリン、こんにちは。そしてさようなら! カースウェポン!」
HPをコストに高火力を放つ技はいつもどおりの切れ味だ。
剣をぶつけるだけでゴブリンは息の根を止める。こう、無双ゲームみたいな楽しさがあるな。
「よしよし、技を連発するだけで、たくさんの敵でも楽勝だ! 俺、最強!」
カースウェポンを連発していき、オオカミもスライムもゴブリンも、雑魚どもをみんな始末していく。
最高に盛り上がってくるな! 俺の前に敵は無し! どんなやつでもかかってこい!
一応、復活スキルは持っているからな。万が一やらかしてダメージを受けても、すぐに逃げればいい。
HPが無くなっても一度だけは全回復できるから、そこからやられることはない。
まあ、もう慣れた敵ばかりだから、ダメージを食らうことなんて無いだろうけどな!
いくらなんでも、チュートリアルダンジョンくらいノーダメージで突破できないとな。『セブンクエスト』ファンの名が泣いてしまう。
ゲームの時とは操作感がまるで違うとはいえ、その程度のことで失敗する俺じゃない。
なにせ、『セブンクエスト』を遊んだ時間は1000時間程度ではおさまらないからな!
「もっといっぱい敵が出てきてもいいぞ! 今だと物足りないくらいだ!」
とはいえ、スタンピードみたいに急に敵が大量発生するシステムはなかった。だから、期待薄だろう。
現実でモンスターが急に増えたら大惨事だから、知り合いもいる身としては、今の方が安心だが。
万が一ソルとかミリアとかが死んだら、悲しいどころじゃないからな。
それでも、モンスターと戦うことをもっと楽しみたい。今度は縛りプレイもありかも。
「よっしゃあ! 今度はこの円の中で敵を倒してみよう! 俺なら絶対にできる!」
足で地面に円を描いて、モンスターをこちらに誘導する。そのままカースウェポンをぶつけて敵を倒していく。
うーん、ちょっとつまらないかもな。もう少し敵にHPがあれば、剣の打ち合いでも楽しめたかもしれないが。みんな一撃で死ぬからな。
まあ、今回失敗しただけだ。またいずれ別の機会にチャレンジしてみてもいいだろう。
「もっと楽しめるアイデアはないものか。流石に最初の街だから、敵が弱すぎるんだよな」
スキルを使わなくても楽勝な敵ばかりだからな。いくらなんでも、簡単すぎる。
とはいえ、まだソルを終盤のダンジョンには連れていけない。次の街くらいなら、きっとなんとかなりそうだが。
まあ、今考えるべきことじゃないな。2人でしっかり相談しないと。俺だけで決めていいことじゃない。ソルは命をかけているんだから。
「まあ、ボスには今回のお楽しみがある。ハイゴブリンまで急いで向かうか」
とはいえ、どうせ楽勝ではあるのだが。それでも、しっかりと『肉壁三号』のビルドを楽しむことができるはずだ。
HPを減らした上で、低いHPだと効果を発揮するスキルを組み合わせるビルド。
正直に言って、俺と同じビルドをしている人がこの世界にいたら、ドン引きすると思う。
なにせ、一応モンスターとの戦いは命がけだからな。俺はどんな敵でも倒せるが。
俺はともかく、命がけの戦いでわざわざHPを減らしていくやつはどう考えても狂人だろう。
ゲームの名残だから、俺は仕方ないとはいえ。逆にHPを高く保とうとする方が命が危ないからな。
ダメージを受けるような敵になると、低HPのとき限定のスキルが重要になってくる。
まあ、このダンジョンでわざわざHPを削っているのは、楽しみたいだけのこと。
どうせ俺は裏ボスでも安全に倒せるからな。例外だと思っていいだろう。
「さーて、ハイゴブリンちゃんは居るよな。さあ、俺のスキルの餌食になれ!」
ボスであるハイゴブリンを見つける。相変わらずただのゴブリンに角が生えただけだ。
結局のところ、ザコの親玉はしょせんザコ。まあ、初心者のころは死んだが。
「さあ、ハイゴブリン狩りだ! 食らえ! ペインディヴァウアー!」
俺が剣を振り下ろすと、一撃でハイゴブリンは消し飛んでいく。
「うおーっ! 最高! この火力だよ! どうせ一撃の敵だけど!」
画面にダメージの数字が現れないことが悲しい。今の一撃なら、すごい数値が出ただろうに。
ペインディヴァウアーは、HPが減っているほど威力が上がるスキル。HPを減らすカースウェポンと合わせて、『肉壁三号』の基本的な技だ。
カースウェポンで一気にHPを減らして、ペインディヴァウアーの火力で敵を葬る。定番のコンボなんだ。
「ああ、もっと強い敵にもペインディヴァウアーを撃ちたいな。だが、まだおあずけだ。あとあとの楽しみにとっておこう」
それにしても、今日は楽しかった。後は帰るだけだ。
「ミリアに攻略を報告するか! 1人でもダンジョンを攻略できるなんて、自慢できるぞ!」
そうして俺は冒険者組合へと帰っていく。ミリアはきつそうな表情をしているが、俺の顔を見ると一転して笑顔になってくれた。
うんうん。だいぶ受付してもらっているし、親しくなったと思っていいよな。
「クリスさん、おかえりなさい。今日はどうでしたか?」
「ソノ二の洞窟を攻略したんです。ボク、強いでしょう?」
「素晴らしい成果です。報酬も期待していてくださいね」
「楽しみです。ミリアさん、いつもありがとうございます。ボクを助けてくれて、感謝してるんです」
「いえ、これも私の職務ですから。お気になさらず。今日も宿でゆっくり休んでくださいね」
「分かりました。またよろしくお願いしますね」
ああ、今日もいい日だったな。ソロダンジョン祭り、またやってもいいかもな。
――――――
クリスが冒険を終えた後、ミリアとエリカ、ソルで集まって話し合っていた。
議題は、当たり前のようにクリスのこと。どう考えても不幸な彼のために何ができるか、力を合わせて考えるためだった。
「今日のクリスさんは、1人でソノ二の洞窟へ行って、瀕死で帰ってきました。ですから、彼を1人にしてはいけないんです」
「いや、ウソだろ!? クリスの防御力は999なんだぞ? どうやってソノ二の洞窟で瀕死になるっていうんだ?」
「え、は? 防御力が999? ソルさん、冗談を言っている場合ではありませんよ」
「いや、ソルさんの言うことは合っているです。クリスさんの防御力は、確かに999です」
「エリカさん? 占いの結果ですか? 数字までは見えないはずでは?」
「裏技があるですよ。それよりも、クリスさんは昔に無防備に攻撃を受け続けたことがあるです」
「だから、防御力が999もあるってのか? アタシも真似をすれば……」
「クリスさんに心配をかけさせたいですか? 私がクリスさんを送っていなければ、ソルさんは死んでいたですよ。また、クリスさんに助けられるですか?」
ミリア達は誰もが本気でクリスを救いたいと考えているがゆえに、彼が傷つく可能性に関しては即座に意見を言うとお互いに決めていた。
そうでもなければ、クリスの苦しみを消すことはできないだろうと考えて。
「ああ、確かにな。エリカ、悪かったよ。それで、なぜ瀕死になっていたのかは分かるか、エリカ?」
「簡単なことです。クリスさんのスキルは、使うとHPが減るです」
「それは……なら、クリスさんに戦わせ続ける限り、彼は傷つき続けると?」
「はいです。だから、ソルさんのなっさけない姿をクリスさんに見せてはいけないです。彼はソルさんを助けようとしてしまうから」
「だからといって、1人でアタシが鍛えたら。クリスは1人で傷つくんだろ?」
「ですから、ミリアと計画したことがあるです。クリスさんはセカンの街へと行く予定です」
「はい。ですから、私達もクリスさんについて行って、彼をサポートしようと思います」
「ああ、分かった。で、それだけか?」
「クリスさんは、セカンで新しい仲間に出会うです。だから、ちゃんと導くですよ」
「ああ、分かった。これ以上クリスが傷つかなくていいように、頑張るよ」
「私も同感です。受付嬢として、全力で支えます」
「占いの力も使っていくです。勇者の使命を、せめて楽にできるように」
ミリア達の思いはひとつだった。苦しみ続けているクリスに、少しでも幸せであってほしい。
だが、まだハッキリとした希望は見えないまま。どうすればクリスを戦いから解放できるのか、頭を悩ませ続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます