ステータスの確認は大事だぞ!
「いっぱいモンスターを倒すぞ! 今日はモンスター狩り祭りだ!」
とはいっても、いつもどおりにチカバの洞窟でモンスターを倒していくだけなのだが。
それでも、テンポ良くサクサクとモンスターを倒していけるのは気分がいいからな。たまにはやりたい遊びだ。
「さあ、まずはスライムを片付けていくか!」
青い水状のモンスターであるスライムは、ゆっくりな動きだから適当に先制するだけでいい。
何も考えずに剣を振って当たるだけで、簡単に素材になっていく。小さい塊のようなスライムコアは良い金になるんだ。
なんだかんだで、攻撃力が低いと手間取るモンスターだからな、スライムは。
「よしよし、スライムコアがいっぱいだ。食べ歩きの資金源だからな。しっかり集めておかないと」
ミリアに誘われてプログスープを食べてから、食事の喜びに目覚めてしまったからな。
美味しいものを満足行くだけ食べるために、お金はいくらあっても良い。
現代日本の食事には勝てないんじゃないかと思っていたが、十分に楽しめる味だからな。
それに、誰かとご飯を食べるというのも、案外楽しい。ミリアに誘ってもらえたのは幸運だった。
「次はゴブリンだ! 剣技の練習にもちょうどいいよな。相手も武器を持っているのだし」
実際、せっかく武器を持って戦うのだから、うまい剣技を使ってみたい。
ある程度勝手に体が動いてくれるのだが、それでもスタイリッシュな戦いには憧れる。
単純な攻撃だけじゃなくて、カッコつけた動きというのもやってみたいよな。
どうせ苦戦する相手なんていないんだから、楽しむためにも工夫は必要だろう。
試しに相手の剣と打ち合ってみたり、相手の剣をかわして敵に攻撃してみたり、いろいろ楽しんでいた。
うまくいくこともあれば失敗することもあった。それでも、一度も攻撃を受けていない。
「そうだ。攻撃を試しに受けてみた方が良いか。強い敵に食らって思ったより苦しかったら困るよな」
ステータス的に楽勝な相手だとしても、いらぬ苦戦をしてしまいかねない。
そんな事態を避けるためにも、今の弱い敵のうちに検証しておくのが無難だよな。
せっかく転生したのに、しっかり楽しめないなんて大損だからな。しっかりと確かめよう。
ちょうどいい敵が残っている。オオカミだ。あれなら最低1ダメージだからな。
「よし、オオカミの攻撃をわざと受けよう。痛かったら、今後の戦い方を考えないと」
痛みに耐えながら戦いをこなせる自信がないからな。まあ、痛くない戦い方はいくらでもあるはず。
とはいえ、案ずるより産むが易し。適当にオオカミを探して、適当に攻撃を待つ。
じっとオオカミをながめながら、そろそろ攻撃が当たりそうになった頃。突然声をかけられた。
「何をやってるんだよ! ちょっとどいてろ!」
そのまま声をかけてきた女はオオカミを倒していく。ああ、これは助けられたな。
だが、俺としては攻撃を受けたかったのだが。それでも、お礼は言っておくか。
「助けてくださったんですね。ありがとうございます。ボクはクリス。あなたは?」
「アタシはソル。冒険者で、剣士だ」
ソルと名乗った女は、赤い髪と目に褐色の肌を持っている勝ち気そうな美人だ。女の人にしては低めな声で、かっこいい感じ。
おっぱいも身長も大きくて、とにかくでかいと言いたくなる。
剣士と名乗った通り、ある程度動きやすそうで、それでも頑丈そうな鉄の装備をしている。
まあ、現実ほどしっかりした装備という訳ではないが。肌が見えているくらいだし。
「よろしくお願いしますね。でも、ボクなら大丈夫でしたよ」
「大丈夫? 敵の攻撃を受けるところだったのにか? お前、何がしたいんだよ」
「敵の攻撃を受けて、どれだけダメージを受けるのか確かめたくて。痛くて動けなかったら困るじゃないですか」
「なら、アタシが防御力を確かめてやるよ。道具を持ってるんだ」
ソルは俺に向けてプレートのようなものをかざしていく。おそらくは、ステータスを確かめてくれる道具なのだろうな。
そんな便利なものがあるだなんて知らなかった。まあ、確かにゲームでステータスが確認できるのに、転生したら確かめられないはずもないか。
ところで、どこまで確認できるのだろう。スキルポイントが確認できるのなら神だと思うが。
俺はもう成長限界だが、暗算で習得するスキルを計算するのは嫌すぎるからな。
「ほら、これがお前のステータスだ。ずいぶん防御力が高いんだな。びっくりしたよ。これなら、何を受けても痛くないだろうさ」
なるほど。どんな攻撃を受けても痛みを感じないのなら、検証は必要ないな。
それにしても、防御力が999というのは、見ていて気持ちいいな。魔法防御も999だから、まさに最高だ。
せっかく転生してステータスを見れるんだから、全部カンストさせるのは、良い目標になる。
こうやって999になったステータスを見るのはとても楽しい。全部999なら、きっと最高の気分だろう。
「ありがとうございます。なら、敵の攻撃にもし当たっても大丈夫そうですね」
「そうだな。だが、当たらなくて良いようにしろよ。そうだ! せっかくだからアタシとパーティを組まないか? 前衛くらいならこなせるんだぞ、アタシは」
「なら、よろしくお願いします。でも、ボクは強いので、1人でも大丈夫なんですからね」
それでもソルの誘いを受けたのは、心配が本気だったということと、この世界の人と交流を持ってみたかったから。
実際、この世界特有の、ゲームではできなかった戦い方を見られるかもしれないし。
もし面白い知識がなかったとしても、パーティを組むのはいい思い出になるはずだ。ソルは悪い人に見えないからな。わざわざ見知らぬ俺を助けようとしてくれたくらいなのだから。
「そうかもな。でも、アタシがお前を守ってやるよ。これでも、多少は強いんだからな」
「分かりました。期待していますね。これから、一緒に頑張りましょう」
楽しみだな。ソルはどんな戦い方をするのだろうか。どうせ俺は最強だから、少しくらい足を引っ張られても良い。そう思うと、心に余裕がある。
さあ、新しい遊びの始まりだ! せっかくだから、パーティでできる遊びを全部やるぞ!
――――――
ソルがクリスと出会ったのは偶然ではない。彼女は初心者を導くことを期待されて、実力に見合わないプログの街を拠点にしている冒険者。
そんなソルに対して、ミリアから依頼があった。
「クリスさんという冒険者の面倒を見てくれませんか? 私は彼が心配なんです」
「新人なのか? なら、アタシの仕事だな。任せてくれ」
「ええ。おそらく実力は高いのですが、生き急いでいるように思えて仕方がないんです。だから、支えてあげてください」
「分かった。なら、アタシが適任だろ。新人を導いてきた経験は多いからな」
「ええ。ですからあなたに頼むんです。お願いします、ソルさん」
そしてソルはクリスを探しに行く。そして、様子をうかがうことを決める。
まずはどんな冒険をしているのか知らないと、今後の方針を立てづらいからだ。
そこでソルが目にしたのは、クリスが無防備に敵の攻撃を受けようとしている姿。
思わず助けてしまうソルだが、クリスの語る理由には納得する。
確かに痛みというのは戦闘で重要な要素だ。思わぬ苦痛で動きが止まるなど、めずらしい話ではない。
だから、今後のためにソルはクリスのステータスを確認する。
そこに写っていたのは、攻撃力などに見合わない、圧倒的な高さの防御力。
この世界では、行動によってステータスが上昇する。つまり、クリスはこれまで何度も攻撃を受け続けてきたということ。攻撃力が低い以上、おそらく一方的に。
クリスの過去を知って、ソルは思わず目を覆いたくなった。
彼と別れたあと、ソルは思わず言葉をこぼした。
「あんな可愛い男の子が、冗談だろ……? どれだけ
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