第91話 活動限界

 ──ぐらり。

 私の視界が揺らぎ、暗転した。



「カナデ!?」

「カナデっち!」


 急に目の前が真っ暗になって、私は意識を失った。

 その時、私は読んで無かったけど、


【聖雷で魔力と精神力を消耗しました。強制睡眠状態に入ります。

回復まで8時間】


 こんなメッセージが出ていたらしい。


 目が冷めたら紗耶香ちゃんが教えてくれた。

 更に、気を失った私を「ラウルさんがお姫様抱っこしてしてテントまで運んでくれたんだよ!」


 と、スマホで撮った写真を見せてくれた!


 ぎゃあああ! ご迷惑をおかけしました! 

 今度詫び石、詫び魔石でも贈ろうかな!


 そして、すまなさそうな顔でコウタが告白をして来た。

 神父様に懺悔をするかのように。

 私はクレリックのジョブを持っているけども。



「カナデ、お前のドラゴン退治の活躍が目覚ましく、ここの領主様から褒賞の一部としてドラゴンを解体した時に素材が三種貰えるって言うから、牙一個と爪一個と鱗を希望しておいた。お前の意識が無かったので、代わりにすまん」



 なんと!



「貰い過ぎでは? 私達がそんな凄い素材を貰ってどうすんの?」



 ドラゴンの素材は売ればめちゃくちゃ高そうではあるけど。



「勝手にしてすまないが、俺のジョブに魔剣士があるんだが」

「うん?」



 だから何? と私が続きを促すと、衝撃の事実が。



「俺のステータス画面にドラゴン討伐報酬ってのが出てて、その中に『名剣のレシピ】ってのがあってさ、既にある野太刀と、ドラゴンの牙、爪、鱗と他、玉鋼と冷却水と木炭で合成すれば妖刀ムラマサが手に入るって練金レシピが書かれているんだ」


「ええ!? ムラマサ!?」

「絶対めちゃくちゃかっこよくて強いと思って……」


「む、ムラマサなら仕方ないわね」



 かっこいいものね。



「所で合成ってどうやるの?」

「俺達は錬金術師じゃないから、練金釜ってのを手に入れるか練金術師のジョブを手に入れるしかないらしい」


「練金釜ってどこにあるの?」

「バジリスク討伐成功後に巣穴で見つける事が出来るって書いてある」

「バジリスク戦でムラマサを使いたいのだろうに、後じゃないとゲットできないのか」


「でも、ムラマサだぜ? 名前だけで欲しくなるだろ?」

「まあ、確かに」



 気持ちは分かる。



 私のせいで八時間もここで足止め食らっててごめんね。

 今はまだ平原内のテントの中だった。


「どうせドラゴンの解体にそれなりの時間かかるし、皆、休息も必要だからさ、それは良いよ」



 バジリスクの森にも行きたいけど、ムラマサの素材も欲しいのね。



「ところで、ラウルさんとリックさんは?」

「二人は近くにあるテントだけど、俺もライと二人でここの隣のテントにいる」

「迷惑かけたので、お詫びとお礼に言ってくる。着替えるからコウタは出てて」

「ああ」



 私はテントからコウタを出したら、紗耶香ちゃんも広く使えるようにか、テントから出て行った。


 ふと見ると、コウタが買ってくれていたらしき、この世界にはそぐわぬ体拭きのティッシュが枕元にあったので、服を脱いで体を拭いた。


 平原にはお風呂ないもんね。今はこれで仕方ない。


 着替えてラウルさんを探した。

とある一画に人だかりが出来てて、何かなと思って気がつくと、まだ平原に残ってる人向けに商人が食料を売りに来ていたようだ。


「あ、カナデ、起きたのか、具合はどうだ?」

「ラウルさん! 気を失った私を運んでいただいたようで、すみません、そして、ありがとうございます」



 私は詫び石……お詫びとして、灯りに使える魔石を取り出した。



「良いよ、そんなの、怪我の治療をしてくれたんだし、むしろこちらがお礼に果物でもと、ほら、そこの商人から買った」


 見れば確かに赤い果物を手にしている。

 形はカリンに似ている。


「え……あ、私は大丈夫ですので」

「いいから。あのでかいエビも美味かったし。最後の豪勢な食事になるかもしれないって奮発した高い物だったんだろ?」


「ええ、確かにそれはそうですが。レースや化粧品の売り上げが良かったので」



 結局詫び石を渡すどころか、私は果物を貰ってしまった。



「何か食べたいものありますか? 生還祝いに何か美味しい物でも食べませんか?」

「俺は何でも良いが」


「じゃあ仲間のリクエストを聞いて来ますね」


 私は紗耶香ちゃん達に何が食べたいか聞いた。


「んー? お肉はいいの食べたばっかりだし、マグロかハマチ」


 と、紗耶香ちゃんは言った。流石日本人だわ。


「ま、マグロやハマチの刺身とか?」

「うん、あるいは寿司でもいい。パック寿司でもいい」

「ラウルさん達は生のお魚を食べるかなあ?」


「ラウルさんはマグロのステーキ、リックさんが焼き伊勢海老にしてあげれば?」


 まあ、確かに彼らには火を通せばいけるか?

 マグロステーキ、ガーリックバター醤油……とか。


 悪くないのでは?



「一応コウタにも聞いてみるね」



 私は男子組のテントを訪ねて行った。

 コウタの返事は、


「エビ……」



 ほーん。



「本当はコウタも伊勢海老を食いたかったんじゃないの?」

「あの時は弁当に全集中しないと失礼だし……手作りだったし」


 なるほど……。


「伊勢海老ね、リックさんも食べたそうだったし、いいでしょう。

マグロにハマチに伊勢海老の海鮮パーティーね」


「別にマグロって丸ごとじゃないよな?」

「切り身よ。あと、パック寿司も。ラウルさん達用にマグロは火を通すためにステーキにしようかなって」

「ライ君は? 何が食べたい?」

「何でもいいです」

「じゃあコウタと一緒の伊勢海老でも」


 *


 そんな訳で、イジュール平原でキャンプバーベキューをする。

 近くでキャンプしてる冒険者などがそばを通る度、何か言われてるのが聞こえた。


「アイツらこんな内陸で海の生き物を食ってるぞ」

「はぁ? 乾物じゃないか?」

「いいや、どう見ても生だった」

「魔道具でも使ったんだろ」

「すげえ美味そうな香りがする」



 いかん、悪目立ちしてる。

 すみませんねえ、周囲にいい香りさせてて。



「お前達は生の魚を食べるのか? 大丈夫か?」



 食事にお呼ばれしたリックさんが心配そうにこっちを見てる。

 私達はパック寿司を食ってる。

 パック寿司なのにずいぶん美味しい寿司だった。



「世間には大丈夫じゃない魚もいるでしょうが、うちのは大丈夫です」


「鑑定済みです。寄生虫もいません」


 伊勢海老を焼いて食うコウタがそう保証した。

 ライ君も同じ物を美味しそうに食べている。



「余裕でーす」



 紗耶香ちゃんは新鮮な美味しいマグロを食べて嬉しそう。



「エビも美味かったが、こちらも美味しいな」


 ラウルさんの食べ物はガーリックバター醤油のマグロステーキだ。

 フライパンの上で美味しく焼けている。


 食べやすく一口大に切ってある。


「このでけえエビ、めちゃくちゃ美味ぇ!!」

「良かったですね〜リックさんもエビ食べられて!」



 ラウルさんを羨んでいたそうだからと、紗耶香ちゃんがニコニコしながら言った。



「ああ! あ、ラウルのもひと口くれ」


 伊勢海老を食いつつも、マグロステーキも気になったらしい。

 ラウルさんは優しいのでは、ちゃんとひと口あげてる。



「仕方ないな」

「こっちも美味ぇ……」

「マグロとハマチのお寿司美味しい。あ、紗耶香ちゃん、サーモンの寿司あげる」

「カナデっち、いいの?」

「私、サーモンは火を通してる方が好きなんで、寿司はハマチとエビとマグロとタコが有ればいいの」


「そうなんだ、じゃあ貰うね」


 美味しい海鮮バーベキューを堪能した。

 生き残れてマジで良かった!!


 


 * ーーーーーーーー *



 異世界人 レベル55 奏

 魅力 70


 ジョブ


 商人  レベル48 交渉30 目利き17

 狩人  レベル28

 料理人 レベル50


 クレリック レベル45 スキル 聖雷 癒しの光 属性:光


 (聖雷 : 魔法使用時:攻撃力 780)


 攻撃力   180 (武器使用時)

 防御    550

      (神の祝福: クレリックのジョブ特有の加護+幸運ブースト)


 特殊スキル : アイテムボックス

       : 鑑定眼

       : 異世界言語理解



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 異世界人 レベル55 浩太

 魅力 60


 ジョブ


 商人  レベル45 交渉20 目利き15

 狩人  レベル48

 料理人 レベル70

 魔剣士 レベル50 属性:炎


 攻撃力 : 500 (武器使用時)

 防御  : 300


 特殊スキル: アイテムボックス 

      : 鑑定眼

      : 異世界言語理解



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 異世界人  レベル55 紗耶香

 魅力 81

 商人   レベル48 交渉40 目利き28

 狩人   レベル30

 魔法使い レベル30 属性:水

 女優   レベル17

 料理人  レベル7


 攻撃力   190 (武器使用時)

 防御    120 (神の祝福:幸運ブースト)


 特殊スキル: アイテムボックス 

      : 鑑定眼

      : 異世界言語理解

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