第47話 バンブーフォレスト島

「今日の島行きはリックが行くはずだったが、例の貴族に呼び出されたので、俺に代理を頼んで来た。

宜しく頼む」


「わあ! ラウルさんが一緒なら心強いです!」



 私は素直に喜んだ。



「あ、あの先日貰った鶏皮の唐揚げはリックも無限に食いたいくらい美味かったと言っていたが、俺も凄く美味しいと思った」

 

「ええ、美味しいですよね、鶏皮の唐揚げ!」


 二人とも美味しくいただいてくれたようだ。



 *

 

 我々は馬車で移動して船着場に着いた。 海だ! 異世界の海! やっぱり海は青い!

 

「あ、あの船だぞ、おーい!」



 ラウルさんは船頭さんに声をかけた。

 五十代くらいの男の人だった。


「バンブーフォレスト島に行きたいのか、春に行けばいいのに秋に行くとはな。

まあ、冬の荒れた海に出ようとしないだけマシか」



 春って、もしかしてタケノコ!?


 惜しいな。でも今日欲しいのは竹の容器の方。



「バンブーフォレスト島ってかなりそのままの名前で期待出来るな」

「あの、今更ながら、そこの竹、バンブーって私達が伐って持って帰っても怒られたりはしませんか?」

 

「いっぱいあるから間引いてくれた方が助かるってもんよ」


 良かった! セーフみたい!



「さ、船を出すから全員乗れ」

「「はい!」」


 私達はしばらく島に向かって海上を船で進んでいると、


「何か来た」


 と、ラウルさんが警告した。


 その目は海を注視している。

 ラウルさん、何かって!?

 私達は慌てて武器を装備した。



「チッ! マーマンだ!」



 半魚人!? エラのついた肌色が青いヤツが水しぶきを上げて水面に上がって、こっちを襲って来た!


 ラウルさんの槍がマーマンの顔を横薙ぎに攻撃! 

 マーマンは悲鳴を上げて海に落ちた。  



「まだいるぞ! 気をつけろ!」



 コウタも他のマーマンを斧で攻撃!

 紗耶香ちゃんはパチンコでマーマンの目を狙った! 命中!


「あ! マーマンの手が! この!」



 私は船のヘリに手をかけたマーマンの手をナタで横薙ぎに斬った。

   


「ギャアア!」



「ああ~~! おでれぇた! 急にマーマンが出るとは!」


「アイツら肌色青くてキモ怖かった」

「本当、怖かった! 撃退出来て良かったね〜」

 

「撃退は出来たが、仕留め損なったな」


 コウタは経験値が入らなくてガッカリしてるみたい。


「私達が生きてるだけでも良かったよ」


「そうだな、カナデの言うとおりだ。

海では奴らの方が有利だから、撃退して俺達が生き残っただけでも良しとしよう」


「「はい」」


 私達は真面目な顔で頷いた。


 とりあえず戦闘経験は、増えたよ!



「着いたぞ〜〜い」


 船頭さんの言うとおり、島に到着した! 確かに緑色の竹が群生してる!


「すみません、しばらくこの辺で待っていて下さい」

「おう」

 私達は船頭さんに待ってて貰わないと帰れないのでお願いした。


「これは魔物避けの聖水だ」

「あいよ」


 ラウルさんが聖水を船頭さんに渡すと、船頭さんは自分の周囲に聖水を撒いた。


「あ、ラウルさん、すみません、貴重なアイテムでは?」

「気にするな」

 

 今度またお礼しよう……。


 船の見張りで船頭さんを上陸ポイントに残すので、私はコップにお茶を注ぎ入れ、葉っぱに包んだおにぎりを漬け物付きで船頭さんに渡しておいた。


 待ってる間、暇だろうし、お腹も空くだろうという配慮。



 私達は島の少し奥に行くんだけど、ラウルさんは周囲を見てくると、どっかに行った。

 バンブーの森かぁ。

 竹以外に何があるのかな?  


「竹がいっぱい生えてるねー! 取り放題じゃん!」  


 紗耶香ちゃんがはしゃいでいる。


「アイテムボックスがあるから頑張って出来るだけ取って行こう」

「りょ」

「は〜〜い」


 ナタや斧で竹を伐って行く。

 コウタと私はモクモクと竹を伐って行くんだけど、紗耶香ちゃんはナタも斧も無いので、私達が伐採した足元の竹を集め、せっせとアイテムボックスに入れていく作業をしてくれてる。



 しばらくしてラウルさんが何かの卵と鳥の羽根を袋に入れて持って来た。

 てことは、あの卵は海鳥の卵なんだろうか?



「ほら、お前達にもやるよ」

「卵! ありがとうございます! これ、ゆで卵にすれば美味しいのでしょうか?」

「ああ」


 肯定だ。


「じゃあ簡単に茹でて食うか」


 コウタがそう言ってアイテムボックスからバーベキューセットを出して、ファイヤースターターで薪に火を点けた。


 それから鍋に水、卵を入れて茹で卵を作って、塩をかけて食べた。

 鶏の卵とあまり変わりない味のようだった。普通に美味い。

 

 私達は茹で卵の次に、家で作って来たおにぎりを食べる事にした。


 ふと、紗耶香ちゃんはおにぎり食べつつも、ラウルさんの持っていた羽根に興味を示した。


「その〜〜白くてキレイな羽根はぁ、どこで取れるんですかぁ?」

「口で説明が難しいから、一緒に行くか?」

「ハイ!」

「あ、私も!」


「てか、羽根は何に使おうと思ってるんだ?」


 コウタが私達を見て訊ねた。


「私は羽根ペン!」

「サヤは貴族のおじょーの帽子の飾りとかに使えそうだなって思った」

「ああ! なるほどな。で、ラウルさんは?」


「ギルドの素材募集にあった。

何に使うのかは知らないが依頼があったから採取しただけだ」


「なるほど」


 依頼者が何に使うかまでは書いて無かったんだね。

 コウタもそれで納得したようだ。

 


「それにしてもいっぱい竹はゲット出来たけど、水筒や器に加工するのも自分達でやるの?

 しんどくない? 量的に」


「じゃあ誰かに下請けを頼むのか?」

「募集してみない?

冬の手仕事みたいに、やってくれる人いるかも。庭で作業して貰って食事は出しますみたいナ?」


 なるほど、監視下ならパクられる心配も無いか。紗耶香ちゃんの意見はなかなか良いのでは?



「一部は木工工房みたいなとこに頼むとかでも良いかもな」


 コウタも乗り気だ。


「でも下請け使うとか、私達も偉くなったよね」

 

 私がそう言うと、だね〜〜とか言って三人で笑いあった。

 ラウルさんは私が差し出したおにぎりを食べつつも、常に周囲を警戒してくれてた。



 *


 食後はラウルさんの案内で巣に落ちてる白い海鳥の羽根をゲットした。

  

 巣の卵は取り尽くしてはいなくて、いくつかは残されていた。

 そうだね、全部取ると絶滅しちゃうかもしれないしね。


 私達は竹を沢山アイテムボックスにつっこんだので帰る事にした。

 また船で海を行く。

 


 今度はマーマンの襲撃もなく、無事に船から降りて、陸地に着いてから船頭さんに謝礼の銀貨を渡して別れた。


 私達はせっかく海に来たので、海辺で岩に張り付く貝も見つけたりした。

 多分カメノテだと思う。


 いい出汁が出そう!


「あ! これワカメじゃない!? 貰っていこ!」 


 紗耶香ちゃんがワカメを見つけた!


「ホントだ! ラッキー!」


 味噌汁の具をゲットした!



「あ、あれって地引網漁だよな!? 楽しそうだし、俺、声かけてくる!」


 コウタが砂浜で地引網漁をする人達を見つけるやいなや、走って行った。


「すみませ〜〜ん! 混ぜて貰っていいですか!?

網を引いてみたくて!」


「いいぞ~~!!」


 コウタの飛び入りが許された。


「そうれ!」「引け引け〜〜!!」


 おやおや、思いの外のどかな光景が見られた。


 私は私でもっと収穫物はないかと、潮溜まりなんかを見てまわった。


「あ! タコ発見! ねえ、タコ取って!」


 って、振り返ってもコウタ居なかった! 地引網漁の最中だったわ!


「このタコか、ソレ!」


 ラウルさんがいつのまにか側に来ていて、素手でタコを掴んだ!


「ラウルさん! 墨吐きに気をつけて!」 

「ああ、分かってる。ほら」


 タコを貰った! 私は網を持っていないので麻袋に入れた。



「ラウルさん、ありがとうございます!」


 たこ焼き器が欲しいわ。

 家に帰ってから、夜にでもコウタのスキルで買って貰おうかな?



 コウタは漁のお土産に魚を五匹貰って来た。

 一匹ずつな。と、言っていい顔で笑った。 


「ラウルさんとリックさんの分は一夜干しにしておきましょうか?

また市場の店か俺達の家に来ますか?」 


「家に行こう。リックが貴族に呼ばれたなら、また胡椒の追加注文の件の可能性が高い」


 ああ、なるほど。

 また稼げるなら嬉しいな。などと思った。

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