第46話 有力情報。

 空が茜色に染まった。

 今日はパンが凄い勢いで売れたから、陽が落ちきる前に家に帰れた。


 帰宅後に私はショップの割り引き商品をチェック。

 夕方タイムセールを狙う主婦の如く……。


 あ! 良いもの発見!



「明日は雑貨屋さんだけど、カップケーキと鶏皮唐揚げの安売りしてるよ!」


「鶏皮!? それは自分達用にちょっと買っても良くないか!?」

「唐揚げ美味いよね、サヤも食べたい!」

「よし、自分達用に買うね!」


 スキルショップで購入完了、



「明日は化粧品と薬草も売るよね」

「うん、冬は乾燥するかも。化粧水と乳液、ハンドクリームもあったし、買っとく?」

「そうだね、水仕事する人は手荒れが酷くなるからあっても良いかも」


 紗耶香ちゃんはスキルショップで美容品を仕入れた。



 *


 夕食の時間になって、三人は居間に集って皆でいただきますをする。


「鳥の唐揚げうめ〜!」

「圧倒的、美味〜〜! テンアゲ〜〜!」

「何故こんなに美味いんだろうな」

「あはは、知らな〜い」


 私達は茄子の味噌煮と鳥の唐揚げをご機嫌で食べた。

 私は茄子の味噌煮を食べながら、ふと、思いつきを口にした。


「そう言えば私、スケブ持ってるから、ポスターっていうか、絵を描いて竹の目撃情報探すわ。

見つかったら器問題をある程度解決出来るかなって」


 オタクなので、修学旅行にまで、スケッチブック持って来ました。

 同室予定だったオタク仲間と一緒に、寝る前にでもお絵描きしようかと思ってたんだよね。

 あわよくば私の推しのキャラクターを描いて貰えるかと。



「なるほど、竹があれば水筒にもなるよな」

「でも冬には店舗営業するんだよね? そこまでしている?」



 紗耶香ちゃんが首を傾げながら問うて来た。


「持ち帰り希望者は店舗あってもいるかもしれないよ。

食べきれなかったとか、店で食いたいけど食ってく時間は無いから持ち帰りたいとか」

「あ〜ね、そういう時もあるか」

「竹筒は水筒としても売れるかもな」

「器持って来た人は容器分割り引きとか出来るね」


 包みの経費も削減したいよね〜と、私達は話しあった。



 その夜、私は寝る前に竹の絵をスケッチブックに描いた。

 ポスター作成。


 【──この植物を探しています。

 群生地を知ってる方は教えて下さい。

 情報くれた方には御礼に当店の商品のお食事三回分を差し上げます。】


 ……と。

 こんくらいの謝礼なら良いよね。



 * * 


 翌日の市場内で店舗の準備時間に手土産を持ってラウルさんが来てくれた。



「お土産だ」

「アケビ!? わあ、ありがとうございます!」


 昔、おばあちゃんの家の前の林で取って食べた事が有る。

 優しい甘さの植物。

 こっちにも有るんだな。


「今日は美容系と薬草か、頑張れよ」


 ラウルさんはお土産を渡して、じゃあなとばかりに去って行こうとした。


「あ! ラウルさん、待って下さい! これ、お返しです!」


 私はにアイテムボックスから、一度に食べ切るのがもったいなくて実は鶏皮の唐揚げを残してあったのを油紙に包んでお返しとして渡した。


「これ、お酒のつまみに最高ですよ!」

「そうなのか、ありがとう」


 ラウルさんはニッコリ笑ってどこぞに帰って行った。



「カナデっちに手土産渡す為にわざわざ来てくれたんだ〜、優しいネ」

「そうだね、って、え、アケビは三つあるから三人分だよ」

「え、アタシ達も食べていいの?」

「もちろん、良いよ」


「俺らも食えるなら、まもなく開店時間だから今から食おうぜ」

「そうだね」

「やった〜オヤツ〜〜」



 三人で仲良くアケビをいただいた。

 懐かしい味がした。



 開店時間になって、早速女性客が来店した。


「化粧水の日だわ! 待ちかねたわ! 知り合いに頼まれてたの!」

「左様でしたか」


 コウタ、なんで急に武士みたいな口調になったの? まあいいけど、ウケる。

 


 他のお客様も次々来店。


「美肌になる為には毎日この化粧水と乳液をお肌に塗って下さい、とにかく保湿が大事だって世の中の美女は言ってました」


 私も商品の使い方解説などをしておいた。


「なるほど、これを毎日。分かったわ」


 化粧水と乳液をお買い上げ!


「ありがとうございました」


「今日は飯屋じゃないんだな、せっかく来たし、この薬草はお茶にも出来るやつだし、買うよ」

「ありがとうございます。銅貨5枚です」


 男性客は今日の売り物が食べ物じゃなくて少しガッカリしてるな。

 でも薬草を買ってくれて良かった。



「あら、砂糖があるわ、もうじき結婚記念日だし、買おうかしら」

「良いですね! 甘くて美味しいお料理でお祝いとか!」

「じゃあ、相場より少し安いし、いただくわ」

「あざます!」


 昼過ぎにリックさんが来てくれた。私の描いたポスターを見てる。


「ん? この緑色の細長い植物は……」

「あ! リックさん! こんにちは! その植物を知っているんですか!?」


 流石冒険者! もしや有力情報!?


「ああ、とある島で見たな、群生してたぞ」


 島! 



「「そこって遠いですか!?」」



 私とコウタの声がハモった。


「船で行かないと行けないが、そこまで遠くはないな。行くなら案内してやってもいいぞ。船を出せる知り合いもいるし」


「流石! リックの兄貴! 顔が広い! 頼りになりますね!」



 コウタがまた弟分になっている。


「この植物欲しかったんで、助かります!」


「そーか、そーか。お、謝礼に飯が三回分って書いてあるな」



 リックさんはまだポスターの文字を読んでいた。



「リックさんならご飯五回と、本日も昨日の夕食の残りもつけちゃいますよ」

「お、今度はなんだ?」



 私はラウルさんと同じようにお返しをしようと、ここでまたも鶏皮の唐揚げを用意した。


「これは鶏皮の唐揚げです。お酒もつまみに最高ですよ、えっと多分、エールとか?」


 多分ビールに合うんだよ、大人はそうしてたから!


「そうなのか! それは嬉しいな」

 

 そんな訳でリックさんと相談して、土日に当たる休みの日に、竹のある島に連れて行ってくれる事になった。

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