第41話 新居の部屋割りとお掃除と簡単な食事

 私とラウルさんのお祭りデートが終わって、私達新居となる築60年はいってるとは思う物件に引っ越して来た。


「えーと、掃除……あ、箒どこかにある?」



 私は周囲をキョロキョロと見回した。



「確か物置きに一本はあったぞ、取ってくる」


 コウタは既に箒を見つけていたようだ。



「あ、私はあの葦っぽい植物の、ヨズルを束ねて箒代わりににしようかな? 

部屋の隅の蜘蛛の巣を駆逐したい」



 私はアイテムボックスからヨズルを出して麻紐で縛ったのを2本作った。



「ねー、箒作りもいいけどさ、まず店舗と母屋どっちから掃除すれば良いの?」



 紗耶香ちゃんはいたる所にホコリが溜まって掃除が必要なこの家の、どこから手をつければいいか悩んでるらしい。


「差し当たり、寝る所がいいんじゃない? ホコリまみれで寝たくないし」

「あーね、でも誰がどの部屋を使う?」

「ひとまず希望を聞いて、被ったらジャンケンかアミダクジでもやる?」


「えーと、候補は夫婦の寝室とかつて子供が使っていた部屋とゲストルームでしょ」


「誰かの希望を先に聞くと誰かが気を使って、実は不本意なのに密かに我慢して、じゃあ残ったここでいいとか言う、可能性を考えて最初から公正にアミダくじにしようぜ」


 コウタが箒とちり取りとずた袋を持って戻って来て言った。

 話は聞こえていたようだ。



「私達、そんな思いやりに溢れた人ばかりなのか」

「知らんけど、念のためだ。小さな不満が蓄積して突然爆発してキレるのが怖い」


 何か嫌な過去があるのか、コウタは慎重だ。

 いや、両親が突然蒸発してるから慎重にもなるか。


 結局アミダクジになった。



「俺はゲストルームだ」

「サヤ、昔娘さんが使ってたっぽい部屋だ! 当たりじゃん?」

「私は僭越ながら夫婦の寝室でーす、じゃあそれぞれ自分の部屋を掃除しよ」

「りょ」

「分かった」


 紗耶香ちゃんにさっき二本作った簡易箒を一本渡して、私達はそれぞれ使う部屋を掃除した。


 ひとまず疲れもあるから、必要最低限だけど。



「疲れた〜〜! 祭りの後だもんね」

「遊んでただけでも、移動に車もバスも電車も無いからね」


「私、祭りの輪投げで商売の神様の木彫りの像をゲットしたんだけど、これ母屋のリビングと玄関、あるいは店舗? どこに置くべきだと思う?」


「店舗じゃね?」

「そうだな、実際に商売をする場所でいいんじゃないか?」

「じゃあ店舗のお掃除が終わったらあっちに置くね」


「てか、輪投げとかやってたんだね、マジ縁日じゃん」

「ひよこ売りもいたけど、やっぱり全部雄だって言ってた」


「お腹がぺこなんだけど、カナデっち、すぐに食べれる物買える?」

「あ、うん、いーよ。今、スキルでショップ見る」


「ヨロ〜〜」

「俺はお湯かけるだけで食えるラーメンとかそんまま食えるパンとかでも良いぞ」



「あ、ラーメンと菓子パンのセールやってるよ」

「それだ!」

「サヤもそれでいい、でもカップ麺選ばせて」

「いいよ」



 私の背後に回ってショップの画面を見る紗耶香ちゃんは味噌ラーメンとメロンパンを選んだ。


 コウタはチャンポンとアンパンを、私は醤油ラーメンとチーズ蒸しパンを選んだ。



「ついでにもやしとか買ってカップ麺に足す?」

「かなりメンディ……」

「そうだな、今日は疲れてて面倒だから野菜はジュースで良いよ」

「じゃあ野菜ジュースを一本買ってコップで分けて飲もう」


「本当はメロパンは軽くトースターとかで温めて食うともっと美味しいけど、まだ厨房掃除してないからぁ」

「そうだね、あと、味噌ラーメンにバターを追加で入れたらコクが出て味がもっと良くなるよね」



 とある漫画で見た知識。



「そうなんだ? サヤ、今度はバター入れて食べてみよう。

あ、コータ君、アンパンなんだ、牛乳は無くて良いの?」

「いや、刑事の張り込みとかじゃ無いから」



 なんかアンパンと牛乳のセットって昔のTVの刑事ドラマでやってた記憶が有る。

 何のドラマかは忘れた。

 うちの母はそういう刑事ドラマばかり……古い作品もケーブルTVで見てた。


 日本にいる家族をなんとなく思い出しちゃったら、ちょっと胸がつまった。



 醤油ラーメンはなんとか完食したけど、チーズ蒸しパンは朝食にまわそうか、お腹が空いた時の非常食用に、私はアイテムボックスにパンを突っ込んだ。

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