第38話 簡易休憩所
「本日はワンオーダーで、一種類だけでも頼めば椅子に座って休憩出来ます。フルーツポンチ銅貨五枚、とソーダ銅貨三枚になっておりますが、フルーツポンチの中にソーダも入っておりますよ。お飲み物だけで良い方はソーダをどうぞ」
今日も開店時からコウタの丁寧な説明が響く。
「ソーダの泡が弾けて爽やかですよ!
市場を歩き疲れた方は休憩がてら寄ってらしてください。何か一つ頼めば椅子が使えます!」
今日のお店には買った中古椅子とテーブルを並べてる。
「おう、やってるな。ソーダとフルーツなんたらをくれ」
リックさんとラウルさんがご来店!
「はい、お席にご案内いたします」
「おお、爽やかな飲み物だな! 喉越しが面白い」
「しかし、鮮やかな緑色だな、綺麗だ」
かき氷のメロンシロップの色です!
「あざまし! 暑い夏に飲むともっと爽快なんですけどぉー」
「なるほどなぁ」
リックさんが紗耶香ちゃんの言葉に頷いてる。
「カナデ、今週末に祭りがあるが、予定通りで良いのか?」
わ! ラウルさんに名前呼ばれた!
「は、はい! 大丈夫です。今回スケジュールを黒板にも書いております」
「ああ、二日休みがあるようだな」
「やれやれ、どっこいしょ。
ふー、ちょうど良い所に座れる所があって良かったわ。
年寄りには遠出はこたえるわ」
おばあちゃんが来店した。
「こちらワンオーダーになっております」
「ワン? なんだって?」
「何か一つでもいいから注文をお願いします。お飲み物はいかがですか?
炭酸が苦手なら普通のジュースやお茶もお出しできます」
「ふむふむ。じゃあ刺激の少ない飲み物を頼むよ、嬢ちゃん」
刺激の無いのか、どうしよ、お年寄りにはソーダより普通のお茶のが良いかな?
よし、スキルで買おう、臨機応変に。
私はこそっと箱の蓋を立て、その後で買い物をした。
「こちら銅貨一枚の健康茶で数種の体に良い成分の入ったお茶です。
ハトムギ、枇杷の葉、タンポポの根、みかんの皮、柚子の皮など色々です」
おばあちゃんから銅貨一枚を受け取った。
「……おや、優しい味だね、色々入ってる薬草茶なら苦いのかと思ったよ」
「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ」
お年寄りには優しく。
「あ、こないだのお客さーん! ニンニク使った串焼き買ってたケド、デート大丈夫でしたか? サヤ、後から気付いて、あっ……って!」
あ、紗耶香ちゃんが接客してるのは、うちの口紅とスカートでデートに行った女性のお客様!
「私、クリアハーブをいつも鞄に入れてるから大丈夫よ。
それと串焼きね、彼も美味しいって喜んでいたわ」
「クリアハーブ?」
「匂い消し効果のある葉っぱよ、ほら、これ。食べてみる?」
お客様が爽やかな香りのする葉っぱを数枚くれた。
「あざまし! ミントみたいにスッとする葉っぱだコレ」
「紗耶香ちゃん、私に息吹きかけてみて?」
「ふ──っ」
「あ、やっぱ爽やかな香りだね」
なるほどね。ブレスケア用の葉っぱあるんだ!
「サヤ今日はニンニクも納豆も食べて無いし歯も磨いてるケド」
「でも多分ニンニク料理の後も効果あるんだよ、コレどこで買えるんですか? お高いですか?」
「安いし、野草屋さんにあるわよ」
「これ、ニンニク料理沢山買う人いるし、売る時に一緒につけられたらいいよね」
「あーね、焼肉屋のレジ会計ん時ガム一枚くれるみたいなアレっしょ?」
「そうそれ。仕事終わったら野草屋見てこうと……
あ、ねー、コウタ、この葉っぱ噛んでみて」
お客様の食器を片づけてるコウタに声をかけた。
コウタは素直に葉っぱを一枚口に入れた。
「……なるほど、ニンニク料理の後にいいな」
「でしょ! 仕事終わったら野草屋で買うね」
コレはデートの時の必需品と見た!
「分かった」
「りょ」
「どうぞ、フルーツポンチとメロンソーダです」
「……あら〜〜、コレソーダって言うの? 色が鮮やかで綺麗ね! ……しかも美味しいわ。フルーツも甘くて瑞々しいわ」
「本当ね〜〜、休憩がてら寄ってみて正解だったわ」
二人連れの女性客にも好評だった。
とりあえず今日もいい天気だった分、ソーダも天候に合う感じだったし、高評価で良かった。
仕事が終わってクリアハーブを市場内に有る野草屋さんで買い込んだ。
「野草屋には色んなハーブ売ってたね、葉っぱと種が多いけど苗もあったから、庭か畑付きの家が買えたら苗を植えたりしたいな」
種からは難易度が高いかもしれないけど、苗ならなんとかなるかも。
「いいね。ハーブガーデンってオシャン」
「ふふ」
夢は膨らむ。
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