第33話 森の中で見つけたもの

 ラウルさんとリックさんが連れション……もとい、お花摘みに行った。

 森の中だし、野生動物もそういう時って狙われやすいから、単独行動よりそっちのが安全よね。

 片方が見張りできるし。


 私達はその辺の植生を鑑定眼で調べつつ、冒険者のお二人を待っていた。

 川辺の開けた場所に良いものを見つけた。


「あ、藁っぽいの生えてるの発見! しかもいい感じに枯葉色」

「何だ? まさか藁葺き屋根みたいな家作るとか言い出さないだろうな?」

「流石に家作る技術は無いわ、でも藁で作った椅子のレンタルやってたじゃない?」

「椅子を作るのか?」


「そ。椅子とテーブル有ればドリンク出す休憩所っぽい事やれるじゃない?

市場で歩き回ってると休憩所欲しいと思った事ない?」

「わかる、ずっとテクってるとシンドイ」


「ね、テーブルを草で作る訳にいかないけど、椅子ならあれでいくつか作れそう。束にして紐で括って、座面に布を被せてまた紐で縛って……」


 私は脳内でイメージを膨らませつつ話をした。


「カフェっぽいのはテンアゲしそうだけどぉ、中古の椅子でも買った方が早くない?」

「で、でも最悪、焚き付けにも使えるし! 中古でもしっかりとした木製椅子は職人の手作りで高いかもれないし」


 私は話をしながらも、もはや勝手にナタで葺っぽい植物を刈りはじめた。


「奏、休憩所で何を出すんだ?」


 何だかんだと、コウタも斧でダイナミックに草刈りを手伝ってくれた。


「ドリンクバーみたいなとこなら飲み終わった食器を回収出来るから、クリームソーダとか。

色付きソーダはかき氷シロップでイケるし、アイス乗せたら映えるクリームソーダになるんだよ」


「アイスの保存は」

「……例のボックス」


 当然、私達の特殊スキルのアイテムボックス。


 コウタは周囲をキョロキョロと見渡して話した。まだ連れション……もとい、お花摘みの二人は戻っていない。


「ん〜〜……。俺達がアイテムボックス持ちだと派手にバレなきゃいいけどな」


「箱を魔道具の冷凍庫に見せかけて偽装したり、手はあるのでは?

アイスがアレなら色の綺麗なソーダだけでもいいとも思うし、これにお徳用ロールパンやマフィンにジャムとかつけて出すとか。

メニュー少なくても、たまに出現する休憩所」


「だけど、たまに出現する休憩所っておかしくないか? 

それに今は秋だが、そのうち冬が来るんだぞ」


「春、秋だけのランダム出店でいいよ」

「前回あったからって休憩目当てに来たら、今日は椅子が無いって老人とかにガッカリされたらどうする?」


「うちはランダム休憩所です! って先に言っておく……」

「思いつきで店やるやつらだなって思われそうだな」

「だってさ、毎日同じ事の繰り返しって飽きて来ない?」


「それはそう! サヤもそう思う!」

「ゆえに……うちはよろず屋か……」


「安いフルーツ見つけたら買い込んでフルーツポンチやパフェとかも、フルーツカットするだけなら串焼きとかより楽そうだし、フルーツの香りなら髪についても嫌じゃないし」

「マジかでフルーティーな香りの女子っていいよネ」


「俺まで巻き添えでフルーティーな香りの男子になってしまったらどうすんだ」

「柑橘系とかなら良いと思うよ、別に薔薇の香りになる訳じゃ無し」


 オレンジの香りとか爽やかだし、いいと思う。


「汗臭いよりは良いんじゃね? 

カナデっちいたら男性向けにコーヒーだって出せるし、あ、今のうちにサヤはカレーの準備するから、コータ君、BBQセットの箱を出して」


 そう言えばコーヒーもいいね、お湯入れるだけのインスタントで安売りしてないかな。


「ああ、今出すよ、あっちの平な所に出そうか」

「ヨロ〜〜」


 コウタが平らな場所に箱型BBQセットやテーブルを設置して、鍋なども出す。


「コップとか皿も今は商人さんのとこからいくつか借りてるけど、そろそろ市場で買うか。

休憩所をやってもやらなくてもキャンプでも使えるし」


「だね〜〜」

「だたいま〜〜。ちょい遅くなってすまん、ツノ兎がいたから狩って来た」

「俺も、ホーンラビットは結構美味い肉だからな」


 リックさんとラウルさんは仲良く角付き兎を紐で足を括って持って来てる。

 既に血抜きは終わってるみたい。


 ファンタジー作品でよく見るやたら殺意高いツノ有り兎さん……。


 味はどうなのかな。鶏肉っぽいのかな?って思ってたら紗耶香ちゃんがお二人に味を聞いてる。

 実にフレンドリーな陽キャさんだ。


「へー、鶏肉に似てるケド、肉の味がもっと濃厚なんだ〜〜」



「さて、お二人が戻って来たし、本格的にカレー作ろう。猪肉を使わせていただきますね!」


 さっき使って良いって言ってたし。


「おう! 何なら兎肉も良いぞ!」

「其方はまた今度! ありがとうございます」


 私はそう断って、猪肉の方の調理をはじめた。

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