第12話 商業ギルドと市場

 私達三人は、商人ギルドの応接室のような場所に通された。


 そこで3分くらい待っていると、中年男性と、20代くらいのキャリアウーマン風の女性二人が現れて、私達の品物を見てくれた。


「ほう、これは、上質な砂糖と胡椒ですね」

「こちらの口紅も、数は少ないがとても良いお色ですね」

「「「ありがとうございます」」」


「これらのお品はどちらから仕入れを?」


 来た! 嫌な質問!


「そちらは企業秘密とさせて下さい」


 コウタはクールに堂々と断った。


「おっと、失礼。人脈は金に等しい。そうです。簡単に明かしてはいけません」


「では、こちらにサインを。これでお三方とも、商人ギルド発行のカードが手に入り、商売が出来るようになります」


「「「はい」」」


 私達は異世界言語チートのおかげで文字の読み書きが出来た。


「どうぞ」


 銀色のギルドカードを手に入れた!!


「ありがとうございました」

「あざます!」

「お手数をおかけしました」


 私達は意気揚々と、商人ギルドを出た。


「さあ、市場見物と行こうか」

「じゃあ、また乗り合い馬車?」


 私は周囲を見て、馬車を探した。


「徒歩が良ければ徒歩で良いけど」

「馬車でオナシャス!」


 乗り合い馬車の中で雑談。


「思ったけど、私やっぱり女子としては着替えがもっと欲しい。あいついつも同じ服着てるなって思われたくない。安い古着で良いからさ」


 制服のジャケットが高値で売れて、ちょっと気が大きくもなってる可能性有るけど。


「あ、サヤも。古着の安物でいいから、市場にあったら買いたい」

「そうだな、値切り可能か、周囲の様子をみて、可能なら交渉するのも悪くない。レベルも上がる可能性があるし」


「あー、元の場所じゃ値切りなんてほぼして来なかったけど、ここじゃ交渉レベルに関与しそうだし、やる方がいいね」


 市場に着いた。


 市場は朝からだいぶん賑わっていて、色んな人種が混ざっていた。

 肌の色も衣服も違う。


 シャツにサスペンダー付きのリアルクローズな感じの衣装の男性もいれば、貫頭衣、トーガ風、女性はディアンドル系が多いけど、わりと服の種類が色々だ。


 テントの下には沢山の瑞々しい果物や野菜が並んでいて、目が楽しい。



 私は布屋の前で足を止めた。


「布! 服の形して無い分、安い」

「え? かなでッチ、自分で縫うの?」

「縫わなくても、多分大丈夫。コウタ、安全ピンは買える?」

「ああ、確かあった。金額的にも余裕で買える」


「ほら、巻きスカートなら、布で良いと思うのよ。腰回りサイズが変動あっても、安全ピンで留めてしまえば長く着れるし、洗濯で乾かすのも楽、何枚か買っておけば着回しも可能」


「ああ──!!」


 紗耶香ちゃんがその手があったとばかりに声を上げた。


「なんなら男性もローマ人みたいなトーガ風着こなしなら半円形か楕円形の布でイケルでしょ?」

「ああ……なるほど」

「ほら、あそこに、ローマ人みたいな服着てる人がチラチラいる」


 基本的に簡単な構造の貫頭衣の人が多いけど。


「じゃあサヤ、ここの布三枚くらい買お。あ、この柄布、やばい、カワなんだけどー!」

「皮? 水木さん、それは普通の布だよ?」

「コウタ、今のカワなんだけど! は、可愛いんだけど! の意味よ」


 私はすかさずギャル語を通訳をした。


「ああ、なるほど、ごめん、確かにそれはカワだよ」

「だよねー!」


 布だけど……ね!


「あ、別に腰からだけじゃ無くて胸のあたりから布巻いてもいいよね、ここにいい感じの紐も有るし、ベルト代わりに出来そうじゃね?」

「ああ、そうだね」


「アタシ、これ三枚下さい、この紐2本も買うので値引きお願い出来ますか?」


 紗耶香ちゃんはもう交渉に入った。


「いやいや、それはいい布なんだよ、銀貨3枚と銅貨4枚!」



「銀貨三枚ぽっきりになりませんか?」

「んん〜……」


 おばさんは心が揺れているようだ。


「友達もここの布三枚買います! お友達紹介料金!ってコトで! 何卒!」

「あはは、お嬢ちゃんには、負けたわ、分かった、銀貨三枚で良いよ」


 やりおった! 紗耶香ちゃん、凄い。


「私もこの男友達、客として紹介しますので、この三枚と紐2本、銀貨三枚でお願いします」


 せっかくなので、便乗しちゃおう。


「しょうがないね〜〜」


 おばさんは笑っている。怒って無くて良かった。


「だ、ダシにされた」


「俺はどうしよう、どれを買うかな」


 コウタは布選びで難儀している。


「コータ君、これが良いよ、無地だけど上品に見える」

「でも柄も一種くらいはあった方がいいよ、ほらこの赤の柄モノ、ちょっとケチャップとかで汚しても誤魔化せそう」


「アンタにはこれなんかどうだい?」


 おばさんもセールストークをはじめた。



「でも、これ、お高いんでしょう?」



 おばさんのおすすめしてる青い布は高そうだったので、コウタは通販番組の人みたいなセリフを言っている。

 おもろい。


「いずれ良い嫁さんを捕まえるなら、このくらいの布は必要さね」

「嫁さん……。では、店主さんのような素敵な嫁さんが来てくれると信じてこれも買いますので、お値下げお願いします」


「んまあ〜〜口の上手い子だ事! しょうがないね、奮発するよ。

この青い布は一枚で本当は銀貨五枚分はあるんだけど、その無地と赤い柄物も一緒に買っても銀貨四枚と銅貨七枚で良いよ」

「ええ、凄い! ありがとうございます!」


「良かったじゃん、コータ君、でも、紐は買わないの?」


「ん、じゃあこの2本」

「紐2本追加なら全部で銀貨四枚と銅貨10枚だよ」


「ありがとうございます!」


 コウタはかなりいい感じに値引き成功してた。

 やりおる。


「あ! かなでっち! 石鹸! 洗濯石鹸を忘れないうちに買わないと!」

「そうだった! 石鹸!」


 紗耶香ちゃんが言ってくれて良かった。


「石鹸なら、あの緑色のテントのお店で売ってるよ」


 おばさんが売ってる店も教えてくれた。


「あ! ありがとうございます、 店主さん!」

「あざす!」

「ありがとうございます。行ってみます」

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