第10話 商品作りとお洗濯。

 ステータス画面を見てみたら、微妙に数値が増加している。


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 奏   商人 レベル2


 交渉   3

 目利き  2

 魅力   65


 ☆

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 紗耶香 商人 レベル1 女優レベル1


 目利き  2

 魅力   80

 交渉   2


 ☆

 ーーーーーーーーーーーーー


 浩太  商人 レベル2


 交渉   5

 目利き  2

 魅力   57


 ☆

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 地味に数値がアップしたのを確認して、コウタとは部屋を分かれ、紗耶香ちゃんと女子部屋に戻った。



 更なるレベルアップを目指して、私と紗耶香ちゃんは寝る前にひと仕事。

 売り物を作る。


 貝殻の口紅はちょっとしか作らないから、女子二人で引き受ける事にした。

 そのかわり、コウタには明日の夕食の賄い用のハンバーグの下拵えを頼んだ。

 私達が朝に洗濯してる間にやるって言ってた。



 貝殻を丁寧に洗った後に煮沸消毒した貝をテーブルの上に並べた。


 お買い物スキルで買った口紅をカッターで切り、スプーンで貝殻に取り分ける。

 お試しで売り物用に5個。

 貝殻は予備がもっとあるけど、口紅は様子見で一本しか買って無いから。



「そう言えば、紗耶香ちゃん、この世界の口紅の相場が分からないね?」

「あー、食堂で見た客はほぼ化粧っ気無いけど、劇団の女性は流石に化粧してたから聞けば良かったね」


「博打で銀貨1枚くらいでどうかな」

「そだね、万が一安いって言われたら初回サービス価格とか言っておこう」


「食堂の女の人が化粧して無いって事は、お化粧品は高級な部類だとは思うのよね、でも、お祭りとかお見合いとか、デートの時は庶民も頑張って買って使う可能性はあると思うのよ」


「わかる気がする。あ、作業終わった」



 5個の貝殻口紅の売り物が出来上がり。

 スプーンの口紅をティッシュで拭った後に、いずれこのポケットティッシュも無くなると思うと、色々不安になってくる。


 これは日本から修学旅行用に持って来た物だ。ポケットと鞄に元から入れていた。



「いくらなんでも口紅だけじゃ売り物少ないけど、商人ギルドで資格取得が上手くいけばハンバーガーでも売ってみる?」


「ハンバーガーはとても美味しいけど、下で台所借りる手間と時間考えると、道具が有れば現地で作れそうな焼き鳥屋とか豚汁屋とか良くない?

汁物は器がいるし、焼き鳥屋も何か袋的なのがいると思うけど」


「うーん、個人的には肉好きなんで焼き鳥屋が良いような。でも髪に匂いが付きそうだね」

「匂いは諦めてお風呂に……」


「でもお風呂と言えば、やっぱどっかで家借りたいね。毎回風呂屋まで行くの大変だし。

あ、焼き鳥屋をする事になったらコータ君にスキルでバーベキューセットでも買って貰う?」


「昔、お父さんが日曜大工で鉄板を溶接してバーベキュー用の箱を作ってたわ。

きっとコウタのショップリストにあると思う。

後は網と炭が有れば出来るのよね。

鉄の箱はこっちの世界で鍛冶屋に依頼して作って貰うか、道具屋に安く売ってればそっちでもいいけど」


 あ、お父さんや家族の事を思い出すと、ちょっと泣きそう。

 紗耶香ちゃんは平気なんだろうか?


 私は、弱いな。 上を向こう。

 泣かないように……。


「あ、網は金物屋に売ってると思うけど、炭……炭はこの地で仕入れないと金物でも、食品でもないよね。とりま、コータ君とも他の売り物何にするか相談しなきゃだね」


「うん。でも朝から洗濯の仕事があるから、今夜はもう寝よう」


「りょ。おやすみカナデっち」

「うん、おやすみ、紗耶香ちゃん」


 私達は片付けをして、ベッドに入った。

 安物のベッドは寝返りで動くたびにギシリと軋む音がした。


 ……名前を呼んでくれる知り合いがいて良かった。

 異世界で一人ぼっちじゃなくて良かった……。


 ──私はその夜、頭から粗末な毛布をかぶって、こっそりと……少し泣いた。



 *


 朝になって、宿の裏庭で紗耶香ちゃんと洗濯開始。

 私達はカッターナイフで買ったばかりの高級美肌石鹸を削って洗濯をしている。

 桶の中にはぬるま湯を入れてある。


 コウタは厨房でハンバーグのネタの仕込み作業をしてくれてる。



「今生で洗濯板使うとか、大正や明治の人になったみたいじゃね?」


 私達は洗濯板でパンツをゴシゴシと手洗いで洗っているのだ。

 雑談などをしながら。


「フィリピンの田舎とか洗濯機買っていても電気代がもったいないのか、停電が怖いせいか知らんけど、何故か平成の時代でも洗濯板使っていたよ。動画で見た」


「文明の利器があっても使わないとは……。

あ、パンツは擦るけど、シャツとか大きいのはどうする?」


「洗濯で踏んでるのを見た事あるよ、漫画で」

「踏むか──。

てか、冬になったら水の中で踏むのは辛くない?」


 今は秋だからまだマシなんだけど。


「寒い時期は洗濯自体が辛いとは思う。

私が錬金術師なら魔道具で洗濯機作るんだけどね、商人ではね……」

 

 そんな夢を語りつつ、私達は靴を脱いで裸足になり、制服のシャツを踏み洗いする。


「お金貯めて制作を依頼するか、後でジョブ増えるかもよ。私に女優って表示出てたし」

「そういや女優さんだったね」


「あはは! ただの代打だったのにウケるよね」

「紗耶香ちゃんにその適性があるって事じゃない?」

「え〜〜、マジで〜〜? あ、ハンバーグって夕食でしょ?

朝ご飯どうする? 食堂?」


「昨日食べずに残してたタイムセールのウインナーロールパンよ」

「あ! そうだった! 忘れてた! 後でそれ食べるんだ!」


「ジュースもまだ残ってるから、これ干し終わったら、後で一緒に朝食を食べよう!」

「うん!」


「朝食で思い出したけど、コーンスープが安ければ、何かに詰め替えてお湯注ぐだけで美味しいコーンスープ上がりでーす!って、売るんだけど、簡単だけどそこまで安くないよね」


 私は何となく思いつきを口にした。


「騎士や冒険者が買ってくれたりしないかな? 

出先でも美味しい物が食えるよって売り込めばよくない?」


「騎士はともかく、冒険者って裕福?」

「うーん、ピンキリだとは思うケド」

「だよね〜〜」


 フリーズドライ製品とか、携行食にもってこいよね〜〜。

 仕入れ値さえ安ければな〜〜。

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