第5話 商人

「ここだよ、赤星亭。ちわーす! チラン店の納品です!」


 ピーター君の案内で赤星亭に着いた。

 ファンタジーでよく見る雰囲気の食堂が目の前にある。


 来たわ! 異世界食堂! 兼、宿屋!  


「ピーター! 奥まで持って来ておくれ!」


 店の奥から店の人の声が聞こえた。


「はいよ!」


 私達は荷物を運びつつも周囲の光景に興味津々だった。



「冒険者風の人が沢山いる!」

「凄いな、ちょっと感動する」

「めっちゃ雰囲気あるね〜〜!」

 

 荷運びは終わって、ピーターは雑貨屋に戻っていった。


 コウタが店のおばさんに声をかけた。


「すみません、上の宿屋に泊まりたいんですけど、部屋は有りますか?」

「あいよ、部屋は一つでいいかい?」

「あ! コウタ! 私とサヤカちゃんは同じ部屋でいいよ! 一人は心細いってさっき道すがら話してたの」

「そうそう!」


「あれば二部屋お願いします、男一人、女二人で合計二部屋を」

「ああ、分かったよ、その二人は嫁さんじゃないんだね」

「友人です」


 宿を二部屋とった。

 女子部屋に二人。男子部屋は一人なんで個室。

 

「部屋でまたステータス開いてみるから、コウタもちょっと女子部屋おいで。

どっからともなくピロロンって音したから、気になってるの!」

「ん、ああ、わかった」


「ステータス オープン!」


 私は早速お決まりの呪文?を唱えた。


 ーーーーーーーーーーーーー

 奏   商人 レベル1


 交渉   2

 目利き  1

 魅力   65


 ☆

 ーーーーーーーーーーーーー


 紗耶香 商人 レベル1


 目利き  2

 魅力   72


 ☆

 ーーーーーーーーーーーーー


 浩太  商人 レベル2


 交渉   5

 目利き  2

 魅力   57


 ☆


 ーーーーーーーーーーーーー



「何か商人になってる!! しかも全員レベル違う!」


 私はびっくりして思わず叫んでしまった。


「あ! アタシ交渉全く付いてないんですケド!? 

あ、もしかして全然交渉っぽい事してないせい!?」


「すまん、直接交渉してた俺が一番レベル高いっぽいな。

商人レベルは1しか変わらんが」


「でも紗耶香ちゃん、魅力が一番高いよ」

「なんでだろ、誰も誘惑とかしてないのに。ウケる」

「そもそも元から可愛いからじゃない?」

「え〜〜マジウケる!! 誰判定なの?」

「誰かな? 神?」


「商人に魅力数値がついてるのは交渉や売る時に有利とかあるせいかな?」

 コウタは首を捻って思案顔だ。


「かもね、だとすると、今度何か売る時は紗耶香ちゃんにお願いしてみようか」

「一応少しでも舐められ無いように男の俺がって勝手に思ってたけど、今、水木さんには交渉が全くついてないから、次は任せるよ」


「オッケー! でも次はどうする? 何売る?」

「あ、ねえ、何かステータスにある、星マークが点滅してるから私、触ってみるわ」


 私はポチッと、指先で点滅する星に触れた。


【ショップ : 食料品店 】


「何か出た! 食料品だって!」


 紗耶香ちゃんもびっくりしつつも、星マークを押した。


【ショップ : 化粧品店 】


「私も出た! 化粧品だって!」


【ショップ : 金物店 】


「俺は金物って……鍋とか?」


 私は食料品って所に触れた。

 すると、ずらりと食料品リストが出て来た!!


「わあ! これもしかして通販スキル!? 買えちゃう!?

日本のメーカーの焼肉のタレみたいなのや、カレールーもあるんですけど!

勝ち確じゃない!?」


「奏のは食料品限定か!? でも、すっごくいいな!」

「アタシのコスメ店がドラッグストアだったら薬もあったのになー!!」


「でも、紗耶香ちゃん、化粧品は貴族の奥様やお嬢様の知り合い出来たら凄い高値で売れそうな気がするよ。

それか夜職のお姉さん方」


 まだそんなツテは無いけど。


「まずは化粧品を売るなら歓楽街のお姉さん方に売る方が良いな。貴族は怖いぞ。

綺麗な女は無理矢理、妾にされたりするかもしれん、相手をしっかり見極めないと」


「まあ、確かに貴族は怖いね。性格が良いとは限らないし」

 私も相手をしっかりと選ぶべきとは思う。


「でもこれ、仕入れするとして、日本円と、こっちの通貨両方使えるって表示あるって事は、日本に戻れないなら先に日本円使うべきだよね?」


「そうだね、とりあえず何か買ってみようか」

「お、ナイフや包丁リストにある! 

でも自分用にキャンプ用品が良いかな、焚火台とか、メスティンとかあるし」


「まず商売するなら元手を増やすのに一番効率的なの買おうよ」


 私は堅実派である。


「じゃあ、食材と調理器具買って料理して売るとかか?」

「でもそれは調理する場所と売る場所がいるよね」


「コスメは口紅とかはすぐ色も分かるけど、化粧水とかは効果はその場じゃサラサラとか良い香りとかしかわかんないかも、売りにくくない?」


「紗耶香ちゃん、じゃあ口紅を売れば? うる艶リップとか」

「うーん、口紅系はプチプラ系でも単価けっこう高いケド、いっちゃう?」


「二人とも美肌は既に持ってるから、私達はいつもこれを使って肌がきめ細かくて綺麗ですって、化粧水と乳液を売ってみたらどうか」


「コウタ、それって詐欺では?」

「美肌はたんに若いせいじゃない? アタシ化粧水とかは冬しか使わないし、リップや日焼け止めは使うケド」


「いや、でも日本女性の肌はきめ細かくて綺麗らしい、外国の人わりと鮫肌多いとか、昔聞いた気がする」


 コウタの情報はいつの時代のものかな?


「そう? でも年齢で違うのでは?」


 私はまだ慎重に考えたい。


「修学旅行のはずだったから、皆お土産代でそこそこお金持ってると思うけど、慎重に決めよう」

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