第3話 異世界人レベル1
朝、起きた。無事に起きれた。
「あれ? コウタ、火の番、てか見張り、交代に起こさなかったの?」
「二人とも、せっかく寝てたから……」
優しいかよ。
コウタ、めっちゃ寝不足の顔してるわ。
「川に罠を見に行って来る」
コウタは立ち上がって川へ向かおうとした。
「あ! コータ君! アタシも行くわ! 顔洗いに!」
「私も行く! 一人は怖いから!」
私も紗耶香ちゃんとタオルを持って慌ててコウタを追いかける。
ペットボトルの罠に使ったのは、石の下にいた黒くて小さい川虫と山の中の落ち葉下にいたミミズ。
重りの石も機能して、流されたりはしていなかった。
「カナデっち! コータ君! 小魚とエビが罠に入ってるっぽい!!」
「「やった!」」
「……あ! 石の下に沢蟹発見! 油が有れば揚げたかった!」
コウタが沢蟹を見つけた。
「焼くか茹でるしか今は選択肢が無いよね〜〜」
「あ、この葉っぱ、どくだみじゃない?」
私は家の庭に生い茂るどくだみそっくりの葉っぱを発見した。
「おお、この匂い、確かにどくだみっぽい。すりつぶして顔に塗るか」
コウタが葉っぱを千切ってぐずぐずに潰している。
「なんで顔に? 美肌効果でもあるの?」
「これも匂いである程度虫除けになる」
「ううう、虫は嫌だから、やるか〜〜」
私も覚悟を決めよう。
「アタシも虫刺されは嫌だし、やる」
川の水で顔を洗った後に、私達はどくだみ汁を顔に塗った。
「独特な匂いする〜〜」
「我慢だ。虫除けだ」
「そうね、ところでこの小魚、味付けどうする? 誰も塩とか醤油とか持って無いよね」
「バーベキュー用スパイスなら持ってる」
コウタの発言に驚いた。
「なんで!?」
「美味しい肉が出たら、かけようと思って持ってきた」
「そもそも美味しい肉ならかける必要なく無い!?」
紗耶香のもっともなお言葉。
「もっと美味しくなる可能性が有る」
「「まあ、それは確かに」」
私と紗耶香ちゃんのセリフが被った。
「あ! 肝心な事を忘れてた!!」
「何よ、コウタ?」
「こういう訳分からんとこに来た時のお約束の言葉を言ってない!」
「は?」
「あ、あれか、ステータスオープン!!」
私はノリで言ってみただけだったが、なんと、
「で、出た──っ!!」
「嘘!? マジか!? 俺もステータスオープン!!」
「アタシも、ステータスオープン!」
「おお、ステータス、異世界人って出てるぞ! やっぱここ異世界だった!」
「ねえ、皆、職業は!?」
「そんな記述は無い!」
「アタシも無いよ〜〜」
「全員、異世界人レベル1って、何よ、弱いんじゃない!?
コウタが伝説の勇者とかで、私達が巻き込まれ召喚されたなら、さっさと魔王とか倒して元の世界に返して〜〜て、言うとこだったのに」
「お前達こそ、なんたらの巫女とかなら、さっさと五人か八人くらいのイケメン集めて悪を倒して、巻き込まれただけの俺を元の世界に返してくれって言う所だったぞ」
「何のゲームかなんとなく分かるけど、私は違うわ」
なんたらの巫女のはずがないわ。多分モブだわ。
「職業は分からんけど、俺のスキルにアイテムボックスと鑑定眼と異世界言語が有る!」
「あ! それあったなら重い荷物を手荷物にして持ち歩く必要無かった!
てか、私にもアイテムボックスと異世界言語ってスキル有るわ!」
「アタシにも同じスキルあった! 荷物試しに何か入れて見る!?」
「お試しで、千切ったどくだみ入れてみよう。もし、取り出せなくても痛くないやつを」
コウタはアイテムボックスと呟いて、空中に魔法陣を出した。
「凄い、魔法陣だ!」
「よ、よし、入れてみる」
コウタは魔法陣にどくだみを突っ込んだ。そして、入った!
「あ、空中にアイテムボックス内にあるのリストになって出た!」
「今度は取り出してみて!」
「おう! ……出た!」
「コウタ、やったね! 私も重い荷物を入れちゃおう!」
私達は重い荷物をアイテムボックスに突っ込んだ。
*
「なあ、勇者は無理だけど、俺達収納スキル持ちで商人が出来るんじゃないか?」
「かもね〜〜」
「ちょっと希望が見えて来た。後は早く山から降りて人間に会いたい」
「その前に腹ごしらえな」
「沢蟹とハヤ入りスープか、エネルギーにはなるかな」
めちゃくちゃサバイバル飯だわ。
「どくだみの根っこも洗えば食えるぞ。栄養補助バーもちょっとだけ食おう」
「はーい、贅沢は言ってられない。いただきます!」
「ねー、二人とも、無事に下山して街に出れたらどうする?」
魚とカニを茹でる間に雑談。
紗耶香ちゃんの質問にコウタが答えた。
「聞き込みならまず酒場が定石だな」
「あ、なんたらの酒場で仲間を集めるみたいな?」
ゲームでよくあるよねって、私も思った。
「あーね。じゃあ、仲間にするならどんな人が良い?」
私の答えはこうだ。
「逆立った髪の毛で金髪か黒で武闘家の服を着てる人!」
「そんな人がいたらいいなと、俺も思うけどな! 着てる服に亀って文字入ってる人だろ!」
「そうそう、一人称がオラの人」
「流石にアタシも誰の事か分かったわ」
「でも武闘家は武器を買い与える必要が無いからな、分かる。
武器は己で買って欲しい」
「いや、普通はゲームじゃないなら自分で装備してるよね、剣士とか」
「まあ、そうか。ステータスとか出たから、つい」
「あ、沸騰したよ、食う?」
「よし、このスパイスを入れたら何とか食えるだろう」
茹でた小魚と沢蟹をなんとか胃に流し込んだ。
これも活動するエネルギーのため。
栄養補助バーは普通に美味しいチーズ味だった。
「下山するぞ、俺は早く人里に着きたい!」
「アタシも、もうテントすら無しで野宿は嫌だし!」
「知ってる? 日本なら寺って泊めてくれるらしいよ。異世界だと寺ポジションが教会なら、お金無くても泊めてくれるかな?」
「だったらいいよね〜〜」
「しからば、ご寄付をって言われたらどうする?」
「あー、金目の物って俺は腕時計くらいしか無いけど、換金出来るかな」
「うう、やっぱ異世界はスマホがただの板になってるよねー」
紗耶香ちゃんがスマホを確認していた。
私も見たけど、電波無し。充電ももうすぐ切れそう。
「俺はソーラーパワーの充電器あるからスマホ充電すれば写真は見れるし、中に入ってる曲は聴けるぞ」
「ええ、コウタ凄い、ゆっくり出来るとこに着いたら充電させて」
「アタシも〜、非常用の手元照らすライトにはなるよね」
「分かった」
私達はそんな雑談をしながら、下を目指した。下山、登るのはしんどいから下る。
傾斜あるから、森っていうか、ここは山だったわ。
アイテムボックスのおかげで、私達は身軽になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます