付喪神さん、こんにちは

@yuka0104

第1話 付喪神転生案内所

最後の審判


それは、亡くなった人間が集まり再び転生するのか、もしくは地獄で罰を受けるのか

その審判を受ける場所。


時にそれは、地獄の閻魔様であり、父なる神であり、はたまた別の何か神様が行われると言われている。


でも、それは何も人間だけが対象ではない。


時には、人間以外のもの、例えば動物だとか植物だとかも含まれる


そして、それは道具に宿る妖怪、付喪神も対象なのである。






「次でお待ちのお客様、お願いします」

「はい、はい、お客様の心情、よくわかります。でしたら、次は〜」


ここは「付喪神転生案内所」

道具と運命を共にする付喪神たちは、道具が壊れたら付喪神たちも同時に亡くなる。

そうして亡くなった付喪神はこの「付喪神転生案内所」に流れる。

「付喪神案内所」では事前に調べた付喪神の過去を調べ上げ、面談を行なって次に宿る道具を決める。


リーンゴーンガーンゴーン


「それでは、本日の営業を終了とさせていただきます。またのご利用お待ちしております」

付喪神転生案内所面談課、課長の一声により続々と付喪神たちが案内所を出ていく。先程まで、付喪神たちで溢れかえっていたのが嘘のように閑散としたオフィスに早変わりだ。


「お疲れ、ソラさん。仕事にはそろそろ慣れたかい」

「お疲れ様です、リト先輩。いや〜仕事初めて一週間も経ったのかと思うと感慨深いけど、まだまだ先輩方に比べるとてんやわんやですよ」

「あら、ソラちゃんは頑張っている方よ。この仕事、なんだかんだ言ってストレス溜まるから一週間も続くのは長い方よ」

「あはは...」と笑いつつ、ソラは右隣の先輩、エリカの一言に自分の将来が少し心配になった。


ソラはこの付喪神転生案内所面談課の新入社員だ。元は日本という国の女子高校生だった。が、ある日交通事故に遭い17という短い人生の幕を閉じ、閻魔様の元に向かう途中、求人の張り紙を見て食いついた。地獄か天国か、とガクブルするくらいなら就職した方がまだマシだ。


そうして、今に至る


「そういえば、付喪神の方々って営業が終了するといつもどこに行っているんですか?」

「ああ、ソラくんは来たばかりで詳しくなかったね」

「課長!お疲れ様です」

「はい、お疲れ様。ほら、僕たちが住んでいる宿舎があるだろう?」

「ありますね」

ソラ達付喪神転生案内所の職員は案内所の近くにある宿舎に寝泊まりをする。

「その宿舎からここは地下階段があるから、知らないかもしれないけれど、この辺りは一つの街になっていてね。だから、その街にある宿屋なんかに泊まっているんだよ」

「へぇ〜なんていうか、存外現実的」

「はは、確かに。そういうところは現実的かもね」

「あら?リトそんな呑気なこと言っている場合?ここに来る付喪神だって存外人間的だし、クレーマーも多いのよ?ほんっっっっっとやんなってくるわ」

「まぁまぁエリカくん。長く物に宿っていた付喪神なんかは人間の感情が移りやすいものさ」

「そういう方ほど、別の道具に転生するのを嫌がりやすいしね」

「え?そんなにクレーマーって多いものですか?付喪神の皆さん、良い方ばかりな気がしますが」

先輩達の会話にソラが目を丸くして口を挟む

「ああ〜ソラちゃんは、まだ良客が多いのね。羨ましいわ〜クレーマーの相手ってたまにこっちが怒りたくなるもの」

「こら、エリカさん。こちらが怒ってはダメですよ。丁寧かつ安全に次の生を楽しんでもらえるサポートが僕らの仕事なんですから」

「そうは言ってもね〜」

「ハハ。まぁ、でも、エリカくんの気持ちもソラくんの気持ちもわかりますよ。では、ソラくんこれだけは覚えておきましょう。人間には優しい方もいれば、怒りっぽい方もいます。同じように付喪神もみんな同じではないこと、そして、事情がきちんとあること、絶対にこの二つを忘れてはいけませんよ」

「はーい」


これは、付喪神転生案内所の新米職員・ソラが個性豊かな付喪神と出会うお話

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