思いつきの短編

灰雪あられ

告白の返事なのに何言っても地獄だけど全力で逃げたい平凡受けと全部分かっててやってるし流すつもりなんて毛頭ないハイスペ攻め

「ずっと好きだったんだ。」


それはもう、恐ろしいほどの沈黙。


「付き合って欲しい。」


それはもう、ホントに恐ろしいほどの悲鳴が上がった。


「そうなんだ。ありがとう。でも…」


食堂でするなよ。そんな素振りなかったろ、と続けたい。

が、しかし、そんなことしたら処される、観衆に。


「俺よりもっと君に相応しい人がいるはずだよ」


絶世のイケメン、伊家雫《いけやしずく

》からの告白。

うまくやらなきゃ明日はない。


「そんなことない。僕が君に釣り合わないくらいだよ。」

「まっさかぁ⁈そんなこと…」


なんてこと言い出すんだコイツ‼︎

なんかフォーク握りしめてる奴いるんですけど⁈


「困らせるってわかってた。でも、もう我慢できなかったんだ。」


雨ヶ崎あまがさき高校の生徒会長にして、どっかの社長の息子。


「そっかぁ。そんなに想ってくれるなんて嬉しいよ。大事な話だから少し場所を変えない?」


再三の確認ですけど、老若男女、あまねく人が付け狙うそんな彼。

周りの動きが分からないわけがない。

嫌がらせか?

仲良いと想ってたのに‼︎

畜生!帰りたい!


「ごめんね。もっと困らせるって分かってる。だけど、それでもいま返事を教えてほしい。」

「フォッ…⁈」

「僕と付き合ってくれる?」


もう何言っても処される未来が確定した、なんてことはないはずだよ。

うん。

うん!


》》》パンッ《《《


勢いよく手を叩くと、集まっていた注目のハッシュタグにイカれた奴が追加された。

それでも早口に喋り出す。


「我々の演技、いかがでしたでしょうか⁈不肖・要と会長・雫、3年生になりますが演劇部に入りたく、このような小芝居を打たせていただきました!演劇部の部長さん、お時間がある時にまたお話しさせてください。皆様、勝手に付き合わせてしまい申し訳ございません!僕の役は皆さんの頭の中で、どうぞ、ご自身に置き換えて想像してみてください。楽しんでいただけましたら幸いです‼︎」

「では‼︎」


言い終えたが早いか、すぐにその場から離れる。

勢いって大事ね。

食堂にいる誰も彼もが呆気に取られる。

あの伊家雫でさえも。

よっしゃ!

退散せいこ…


「みんなびっくりしてたね。悪いことしちゃったかな」

「フォッ…⁈」


後ろに伊家雫。

なぜいる⁈


「いつ演劇部のとこ行こうか?」

「フォッ…⁈」


なぜ手をつないだ⁈

まだ食堂の出口なんですけど、人見てるんですけど⁈


「あ、あと話したいことあるからさ、今日一緒に帰ろうね」


冷や汗でシャツがグッショリである。

もう帰りたいし帰りたくない。

お母さん、ごめんなさい。

かくなる上は仮病で帰ろう。


仮病は無事バレ、しっかり伊家の車に放り込まれて伊家に連行された。

が、雫の弟をダシに公園へ。

地獄はまだ始まったばかりである。

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