[KILLER(2)]

 今日の定期ミーティングは、紛糾した。


 早宮果乃の件である。


 果乃がアイラッシュの新メンバーとしての資質を備えていることに、私も含め、誰も異論がなかった。


 それにも関わらず、結果として、果乃を新メンバーにするかどうかは「保留」となった。



 なずなのせいである。


 なずなが、をしたからである。



 なずなの提案は、ミーティングに参加していたほとんどの者にとって、奇怪で、理解不能なものでしかなかったと思う。


 しかし、を知っている私にとっては、なずなの意図は明白だった。



 なずなは、皐月の死を知った時から、そうするつもりだったのだ。



 ある意味で、なずなは純粋である。



 しかし、その純粋さは、結果としてアイラッシュを滅ぼすことになりかねない。



 なずなの提案には、誰も賛成しなかった。



 とはいえ、果乃の紹介者はなずなである。なずなの意向を無視して、果乃を新メンバーとして迎えるわけにはいかず、果乃の加入は「保留」となったのである。



 ミーティングの後、私は、なずなに声を掛け、二人きりでの話し合いの機会を持った。この場面でなずなを説得できるのは私しかいない、と思った。



 なずなの家で、私は、なずなに、提案を取り下げるように迫った。なずなの誤った考えを糺そうと、必死で私の考えを伝えた。



 しかし、なずなは、自らの考えを決して曲げなかった。



 なずなは、から、一歩も前に進めていないのである。



 なずなの家からの帰り道。


 東西線の電車内で、フッと私は鼻で笑う。



 7年前のあの日から、一歩も前に進めていない――



 私もなずなも何も変わらない。


 ただ、少しだけ立場が違うだけである。



 その少しの立場の違いが、この場面では決定的な意見の違いとなる。


 そして――



 



 なずなとは長い付き合いである。


 それどころか、今回の意見対立を迎えるまでは、完全に同じ方向を向いていた「同志」だった。



 もちろん、なずなに対しては、皐月以上に情がある。



 しかし、こうなってしまった以上やむを得ない。



 それに、長い付き合いであるからこそ、私はなずなを容易に殺せ、



 なずなには申し訳ないが、これも全て、私にとって大事な人のためなのだ。



 なずなならば、きっと、天国で、私の気持ちを理解してくれると思う。

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