第13話 女子校でJKとのキスを配信!?
実菜たちの通っているのは、
まさかの女子校に足を踏み入れることになり、俺は謎の緊張を強いられていた。
普段の冒険者服ではないスーツを着てみたものの、不審者の雰囲気があるのは否定できない……。
「正門から堂々と入ればいいのか……?」
正門の横で俺はたたずむ。いや、職員室に近い入口があるような気がするな……。
ちょうど登校時刻の朝八時。続々と女子生徒たちが入ってくる。
きゃぴきゃぴ(死語?)とした女子高生たちが、ちらちらとこちらを見てくる。
というか、みんなけっこう可愛い容姿をしている。進学校な上に、わりと派手な子が来る高校だそうだ。
俺が男子高校生だったなら、友人たちと一緒に「レベル高ええええ!」なんて騒ぐところだろうけれど。
高校生だったのは、もう十年近く前のこと。アラサーのおっさんがそんなことをすれば逮捕されかねない……。
それなのに、配信をしろというのが上戸の命令だった。「女子校に行くなんて、そんな視聴者の稼げそうな機会無いじゃない?」と。
倫理観というものが上戸からは欠如しているのではないだろうか?
一応、先方の学校の承諾済みらしいが……。
俺はドローンを起動し、配信を開始する。
<まさかの女子校!>
<JK!>
<美少女ばっかじゃん!>
このネット民どもめ……!
<わたしもJKなんですよ! 橋川さんのこと大好きなJKがここに!>
あとコメント欄にも女子高生が混じっている。本当のことなら……平日なんだから、ちゃんと学校に行けと言いたくなる。
それにしても、場違い感がすごい。
夏菜子でもいればマシだったとは思うのだが、上戸の命令であいにく彼女は留守番。夏菜子は不満そうにしていたけれど、アシスタントは危険なダンジョンのみということなので仕方ない。
じろじろと女子高生たちを見ているわけにもいかず、俺はどうしようかと思ったそのとき。
「あれー、進一さんじゃないですかあ!」
明るい声で名前を呼ばれて、俺は慌てて振り向く。そこにはギャルっぽい少女が立っていた。暗めの赤に髪を染めていて、瞳も赤色。
派手だけれど、背が高くてスタイル抜群の美少女だ。
「えーと、君は……秋原舞依、さん?」
俺の言葉に、舞依は「わあっ」とおおげさに笑う。
「覚えてくださっていて嬉しいです、お兄さん♪」
「そりゃあ、忘れたりしないだろ」
秋原舞依はダンジョンで助けた四人の女子高生冒険者。その中の盾役の女の子だ。
ある意味、一番目立つ見た目をした派手な美人だし。
<爆乳JKの舞依ちゃん!>
<アイドルかってぐらい可愛いよな>
<実菜とは違った良さがある>
<胸の谷間見えてない?>
制服のセーラー服をギャルっぽく舞依は着崩している。だから赤いリボンも緩めにつけていて、たしかに胸の谷間がちらっと見える。
「ふふっ、進一さん。いま、あたしの胸を見ていたでしょう?」
「ご、誤解されそうなことを言わないでくれ」
「ごまかさなくてもいいんです。命の恩人になら、どんなサービスでもしちゃいます」
「子供がサービスなんてしなくていい」
「あら、あたしってけっこう大人だと思うんですけど」
そう言うと、突然、舞依は俺に抱きつく。甘い匂いがふわりとした。柔らかく大きな胸の感触を押し当てられ、「大人」だという舞依の言葉を実感してしまう。
そして、次の瞬間、頬にちゅっと柔らかく湿った感触がした。頬にとはいえ、キスをされたことに俺は驚愕した
「助けてくださったお礼です」
ふふっと舞依はいたずらっぽく笑うが、その顔は真っ赤だった。
こういうふうに男をからかうのに、慣れているわけではないらしい。
<ほっぺたにキス!>
<女子高生にキスされるとかいいなあ>
<くそっ爆発しろっ>
<わたしも橋川さんにキスをしたい……!>
コメント欄が大盛りあがりだが、このままだと収集がつかない。
しかも、周りの女子高生たちはみんなこちらを見ている。
俺は努めて冷静に言う。
「こういうことは彼氏だけにしろ」
「あら、他の男の人にはしたことないですよ? それに、進一さんなら彼氏にしてもいいかなって。かっこいいですし」
どこまで本気かわからないような、冗談めかした口調で舞依は言う。相変わらず俺に抱きついたままだ。
<これもう告白だろ>
<付き合っちゃえよ>
<橋川さんと付き合うのはわたしです!>
コメント欄を無視して、俺は肩をすくめる。
「いい歳した男が、女子高生と付き合うわけにはいかないだろ」
「でも、ダンジョン出現後に法律も変わりましたし。13歳以上の女の子なら付き合うのも……エッチするのも、自由なんですよ。あたしとそういうこと、したいと思いません?」
舞依が少し恥ずかしそうに言う。
「するつもりもないことを言うなよ」
「さっきも言いました。お兄さんになら、どんなサービスでもしますよ? でも……そうですね。配信されているのはちょっと恥ずかしいですから。二人きりのときにたっぷりとご奉仕します」
舞依が俺をますます強く抱きしめると、耳元でそんなことをささやいた。
<うわああああああ>
<舞依ちゃんは直球でエッチだな>
<ツンデレな実菜とは大違いか>
<エッチはわたしと! 橋川さん!>
いい加減、配信を切ってもいいかな……。
俺はとんと舞依の肩を叩くと、ゆっくりと舞依から離れる。
舞依が上目遣いに俺を見る。
「あたしじゃ、ご不満ですか? 自分で言うのも変ですけど、けっこう可愛いと思うんですけど」
「まあ、可愛いのは認めるけどな」
俺がそう言うと、舞依がみるみる顔を赤くする。「か、可愛いだなんて、そんな……」と小さくつぶやく。
自分で言ったくせに。相手から攻められるのは得意でないタイプなのかもしれない。
「だが、これでも俺は大人なんだ。子供が大人をからかうのはやめろ」
「からかってなんかいないです。あたしは本気で……」
そこまで言って、舞依は口ごもってしまい、恥ずかしそうに目を伏せる。
もしかしたら、この子には俺が本気でかっこよく見えているのかもしれない。だとしても、それは年齢差がそう思わせているだけだ。
危機的状況を大人に救われた。そのせいで恋愛感情を抱いていると錯覚したに過ぎない。
「一応な。俺はおまえらの師匠をやれと言われている。師匠らしくさせてくれよ」
俺は少し迷ってから、舞依の頭をぽんぽんと撫でた。普通なら嫌がられるかもしれないが、舞依なら大丈夫だろうと思ったのだ。
舞依は目を泳がせる。
「嫌だったか?」
「そんなことないです。お兄さんの手、温かくて……安心するなって♪」
舞依はそう言うと、えへへと笑った。
<橋川、意外とちゃんとしてるじゃん。かっこいいぞ!>
<これ以上舞依を惚れさせてどうするんだwww>
<橋川さんの頭ぽんぽん、羨ましいなあ>
舞依が「もっと撫でてください」なんて甘えたように言う。
そんなとき、校門の内側からもう一人、茶髪の美少女が現れた。
彼女は頬を膨らませて、こちらを睨む。
「何やってるの? 橋川さん」
御城実菜……俺の「弟子」の少女が、俺と舞依にヤキモチを焼いているのは誰の目にも明らかだった。
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