15.

 あの日から、二日が経過した。俺はこれまで通り、バイトに通ってはたまに友人と遊んだり話したり、といった生活に戻った。旅行先からの帰り道、彩紗は朝が早かったこともありずっと寝てしまっていたから、何も聞くことはできず、それから彩紗から連絡が来ることはなかった。しかし、こちらから送る気にもなれなかった。改めてどうなった、とかの話を向こうがしたくないのなら、こちらから働きかけることはするべきではない。

 でも、気になってしまうのは仕方ないことで。


「あ、彩紗!」


「誠吾!」


 家の前で君が待っていると、胸が高鳴ってしまう。

 俺は走って家の前にいる彩紗の所までたどり着く。


「ごめん。あれから何も言えなくて」


「ううん。別に大丈夫だから」


「バイト帰り?」


「今日はそう」


「だと思った。やっぱり顔合わせて、直接話したいって思ったから、また待ってた」


「……うん」


「お見合いのことは、何とか理解してもらってなしになった」


「うん」


「あの日のことも、許してもらった。誠吾と一緒にいたって言ったら、百歩譲って、ね」


「うん」


「なんかがっつきすぎじゃない?」


「あ、ごめん」


 食い気味に返事してしまっていたようだ。


「いいよ。もう本題行こっか。って言っても、もうほとんど答え出てるようなものだけどね」


「……」


「喜んで。私も君と結ばれるなら、本望です」


「……はいぃ…………」


「照れすぎー」


「あ、彩紗だって、顔めっちゃ赤いよ?」


「夕日のせいでしょ。ずっと顔に受けてるし」


「あ、眩しかった? ごめん」


 俺は彩紗から夕日を隠すように横にずれる。


「ううん。別に大丈夫」


 そう言って彩紗は、突然こちらに顔を近づけてくる。


「えっ」


 二人の顔が、音もなく引っ付いた。


「これから、よろしくね。彼氏くん」


「……」


「照れすぎだって!」


 彩紗は人目もはばからずに高らかに笑った。

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回遊少女 時津彼方 @g2-kurupan

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