目が見えない写真家 

neinu

序章

私は普通じゃない人が苦手だ。体の一部がない人とか、成長が遅い人とか。そういった人を見ると気付かないうちにその人と距離を置きたいと思ってしまう。何を馬鹿なことを言っているのだ、と思う人もいるだろう。でも、これは多分治ることなどない、いわば私の欠点なのだ。神様が平等に与える欠点の中で、神様がたまたま作った「普通ではない人を嫌う」みたいな欠点を、神様がたまたま私に与えたのだ。だから、私のせいではない。

普通じゃない人が苦手だと感じるようになったのは、小学生の時、転校してきた女子生徒が原因だ。その子は発達障害で、人と話すときや何かの発表の時、話そうとすると決まって「あ、あ、あ」と言葉を詰まらせていた。先生がよく、その子をみんなで支えるように、と言っていたが、私はそれを言われるたびに少しだけイラついていた。当時の私は、お母さんとお父さんの仕事が忙しかったため、おばあちゃんの家にいることが多かった。できるだけ自分のことは自分でやるようにとお母さんから言われていた私は、食器洗いや洗濯など、おばあちゃんが許してくれたことは何でもやった。だから、なんで私は自分のことは自分でするのに、あの子は特別扱いされるのか、とイライラしていた。その頃から、私は普通じゃない人が苦手になった。

話は変わるが、私には小学2年生の弟がいる。弟は生まれつき足が不自由で、 家や学校では車椅子を使って生活している。しかし、弟は足のことは何も思っていないのか無駄に明るく、よく私に話しかけてくる。「今日、学校で友達とおしゃべりしたんだよ」とか「今日、お父さんにカードゲームを買ってもらったんだよ」とか、私からすれば心底どうでもいい話だ。弟が話しかけてくるたび、私は適当に返事をして弟を突き放すのだが、弟は馬鹿なのか毎日のように私に話しかけてくる。足が不自由で無駄に話しかけてくる、普通じゃない弟が私は好きではないし、あまり関わりたくない。なんでお父さんとお母さんはわざわざセックスまでして弟なんかを作ったのか理解できない。

普通じゃない人を見るたび、私はいない方がいいのにと反射的に思ってしまう。もちろん、そんな考えがいいわけないと分かってはいるのだが、どうしても、自分の中から消し去ることができない。多分この先、私は変わることは無い。ずっと、普通じゃない人から距離を取って生きていくんだ。そう思っていた。


そんな私の人生に入り込んできたのは一人の写真家だった。

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