視る

えのきのこ

部屋

冷たい。

三面の壁と天井は鉄筋コンクリート。

扉だけがガラス張りで

反対側は鏡。

自分が写る。こんなに髪の毛が伸びていただろうか。と思う。


水の流れる音が聞こえる。

木の靡音も聞こえるようだ。

鏡に見えていたところはガラスで、

その向こう側には木が沢山生えてる。


壁には通気口だろうか、小さな穴が空いている。しかも、どこなのか分からないが、どうにも居心地が良い。


唯一身につけている眼鏡だけが自分の所有物。あとはバスローブのような分厚い布を纏っている。

不気味な空間にいると人は、

驚きの声も不安のため息も出ないのだと

冷静に考えてしまう。

何もかも分からないと人は何もできないのだと実感する。


ピーッ。

警笛ようなささやかに聞こえる。


お腹すいた。

自動販売機にパンとカップラーメン等が陳列されている。自由に取っていいのだろうか。


グゥー。

お腹は正直だ。内臓の調子は時にメンタルへ影響を及ぼす。ポットで湯を沸かし、あったかいシーフードヌードルを食す。

「美味しい。」


.....気付いたら寝てしまっていた。

見える世界は変わらない。

森のような緑と冷たいグレーの壁があるだけ。水の音は先より綺麗に聞こえる。


ここにきてから

何日、否、何ヶ月経つんだろうか。

これから何が起きて、何が起きないんだろうか。このまま一生何も起きずにここで暮らすのだろうか。布団の上でボーッと恐怖を覚える。

何もしてないのに眠くなる、お腹が空く、飽きる、老ける。

誰かが綺麗にしてくれている。髪の毛が一向にベタベタせず、顔にヤニができない。

来たばかりの綺麗具合を維持している。

髪の毛は伸び続けているが。胸まであった髪の毛が今では肩甲骨の下まで来ている。

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視る えのきのこ @Enokinoco

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