出立の鬨
カサが集合場所に行くと、すでに何人かの戦士が顔を見せていた。
みな古株の戦士である。その中には、当然のようにガタウも居る。
「おはようございます!」
その場全員に聞こえるように、カサが声を張り上げて挨拶する。
うむ、おう、まばらに返事が返ってくる。
あまり歓迎されていない空気だが、もう気にしない。ガタウがこちらを見ているのに気がついて、傍にゆく。
「お前の割り当てだが」
ガタウはいきなり本題に入る。
「今回お前は、五人組には参加しない」
「え…?」
五人組に属さない戦士など、居て良いものなのだろうか。
ならばカサには、どんな役割が振り分けられるのだろう。
「お前は、俺の後ろに付け」
「え……!」
何となく予想はしていたのだが、それでもカサは驚いた。
どういう形で遠征に参加するのか、見当がつかなかったからだ。
「それは……」
「今は何も聞かなくて良い。この近くに居ろ」
「はい」
やがて戦士たちがちらほらと姿をあらわし、一同が顔をそろえた。
みな怪訝な顔つきでカサに目をやるが、何か言う者はいない。
「行くぞ」
ガタウが号令を出し、先頭が鬨の声をあげ、戦士たちの集団は規律正しく移動し始めた。
十と幾日歩きづめ、ゆく手に緩やかな丘陵が見え出すと、狩り場はもうすぐである。
頻繁に姿を見せるようになった小動物を確認しながら、戦士たちの隊列が砂漠を力強く踏破して行く。
新顔の少年を含むまだ未成熟な戦士たちが息も絶え絶えな状態でいる中、カサには余裕があった。
一年前あれだけ苦しんだこの行程を、いやに呆気なく感じていた。
――これが本当に同じ道なのだろうか。
拍子ぬけに感じている。
一年前には不気味に感じた、砂煙のうえに顔をだす、真実の地のあの巨大な岩肌すらも、妙になつかしい。
そんなカサを、苦しげに腰を曲げ槍に体重を預け、いかにも疲労しきった様子のトナゴやウハサンを筆頭とする若い集団が、忌々しそうに睨む。
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