エピローグ

「どうしてかしら」

 月の光を浴びて金色に変化した髪の毛をつまみながら、ロイシュネリアが呟いた。

「私、もう処女じゃないのに……」

 神々の愛し子の能力は、処女・童貞を失うと消えると聞いていたのだが。

「オレの愛が足りなかったのかな」

 後ろからリフェウスが抱きしめてきて、首筋に顔を埋める。


 あれから半年。季節はいつの間にか冬になっていた。

 ロイシュネリアはシアの神官を辞め、今はリフェウスの屋敷で暮らしている。


「十分足りているわよ」


 ロイシュネリアは微笑んで、リフェウスを振り返った。

 実は今朝、リフェウスの腕の中で目が覚めた時に久々に視えてしまったのだ。

 幼子の手を引いて歩くリフェウスの姿を。

 リフェウスによく似ていた。幼子の髪の毛が淡い金色なのがちょっと気になったが……。

 未来が視えるとはいえ、その未来は確定ではない。

 でも、この未来は必ずやってくる。

 その日が来るのが楽しみだ。


「そういえば、あなたの呼び名! 氷の宰相じゃなくなっているのね。今日、王宮に遊びに行って初めて知ったんだけど」


 ふと思い出し、ロイシュネリアが首をひねって振り返る。


「へえ……?」


 リフェウスが眉を寄せた。


「デレデレ宰相って言われていたわ。あなた、王宮で何をしたの?」

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