ボランティア

 モヤモヤのまま過ごして数ヶ月…

 

 

 杉田くんと三野川さんは、楽しそうに話をしている。

 

 オレもあのくらい積極的に動いて三野川さんに話しかけてたら今ごろあんな感じで楽しく過ごせたのかな…

 

 三野川さん…楽しそう。

 って見てたけど、最近三野川さんは杉田くんに近寄ろうとしなくなった。

 必然的にるなさんも。

 

 

 なぜなら杉田くんは、とにかく新しい彼女が入れ替わり立ち替わりでしかも、三野川さんのカラダを気安く触っていき、どんどん三野川さんの距離が離れていったそうなのだ。

 

 最近は、三野川さんがオレのクラスに来ることは減った。

 

 

 たまにるなさんの用事の付き添いでくるけど。

 

 

 ま、オレとは運命じゃなかったってことなのかな。

 

 …ね?

 

 そうなんだよね?と自問自答するがモヤモヤは、消えなかった。

 

 

 そんなオレは暇だしモヤモヤ解消のために、生徒会補助にボランティアで入ることにした。

 

 大学行くし推薦目当てで、なんかやっておくといいかなって感じで。

 

 そんな軽い気持ちで入ったのだけど、まさか…まさか。

 

 

 

 オレは早めに席についていたのだけれど、静かにガラガラととドアがあいたのでドアの方をみると三野川さんが入ってきたじゃないかっ‼︎

 

 えっ⁉︎

 三野川さんもボランティアやるんだ…と見ていたら、オレに気づいた三野川さんがオレに軽く会釈してこっちに近づいてきた。

 

 そして、おとなりいいですか?と。

 

 もちろんいいに決まっている‼︎

 

 うんうんと、縦に何度も首を振りたい気持ちだったけど、そこは大人風に

「あぁ、どうぞ」

 という言葉を発した。

 

 うわぁー、三野川さんがとなりにいるー‼︎

 

 なんか…不思議だなー。

 

 

 まだ全員揃っていないからみんなそれぞれ雑談とか居眠りとかしている人もチラホラいた。

 

 ふと三野川さんをみると三野川さんは、机の上で指をパタパタと動かしていた。

 

 これはたぶんピアノの練習だろう。

 

「あ、もしかしてピアノまだ続けてるんだね?」

 と指を見ながら聞くと三野川さんは恥ずかしそうに、

「あっ、つい癖で…机でよくやってしまうんですよね」

 と手を下に下ろした。

 

「すごいよね。ピアノ上手だし」

「えっ…、あー…もしかしてあのあっかんべーしたとき以外にもよくうちの前、通っていましたか?」

 なんて聞かれてしまった。

「あ、実は…はい。」

「やだぁ…恥ずかしいです」

「あー、なんかごめんなさい。勝手に聴いてて…」

「い、いいんです。ピアノって音大きいからどうしても外まできこえてしまうんですよね…」

 と雑談していたら生徒会の方々がいらした。

 

 そこで話は終了となった。

 

 だが、毎回ボランティア会に参加するときは、いつも三野川さんがオレの横に座ってきてくれる。

 

「おじゃまします」

 とかわいい笑顔付きで。

 

 オレは毎回しっぽブンブン状態だ。

 しっぽ生えてなくてほんっとよかったー。

 

 オレ犬だったら、三野川さん見るたびに毎回しっぽブンブン振ってベロ出してハァハァしてたんだろーなー。

 

 ほんっと人間でよかったわー。

 

 理性保ててよかったー。

 と心から人間であることを喜び、内心ウハウハなくせに、紳士を装い

「あ、どうぞ」

 と言いながら、軽く微笑み返しをするのであった。

 

 

 オレがボランティアに後から来た時はオレも三野川さんのとなりに座った。

 

「おじゃましまーす」

 と言いながら。

 

 そして心では、もう三野川さんの上にストンと何食わぬ顔で座りたいっ‼︎と心から思っていたのでありました。

 

 だって、思うのは自由でしょ⁇

 

 声に出さなきゃいいんだよね⁇

 

 と、キモい発想をしているのであります。

 

 そんなキモいオレは、三野川さんがとなりに座っていてとても心地いい。

 

 空気清浄機置いてありますか?ってくらい空気が綺麗で美味しい気がする。

 

 なんなら、ここはパワースポットでしょうか?ってくらい胸が躍る。

 

 ボランティアがある日は、覚醒したかのように目覚める。

 

 もう目覚ましが鳴る前から目をぱちっとあけて今日は、ボランティア!と脳が喜んでる。

 

 これほどボランティアを心待ちにする学生がいるのだろうか⁉︎

 

 あぁ、幸せです‼︎

 

 なんか学年違うのに同じ教室でしかも隣の席で過ごせるなんて夢のようだなー。

 

 こうして一緒にいられるだけでなんか幸せだ。

 

 お風呂に浸かっているかのような癒され。

 

 ほわぁ〜ん

 

 

 こうしてオレは、ボランティアがある日はワクワクしながら胸を躍らせているのでありました。

 

 

 あ、そういえば最近三野川さん人探ししてないっぽいな…。

 

 もう探すの諦めたのかな?

 

 

 

 

 

 ふと、そんなことを考えて廊下を歩いていたら、いきなりるなさんがいちごオレを飲みながらヌッと現れた!

 

 ‼︎

 

「おー‼︎びっくりしたー」

 とオレが驚くと、

「ふゃっ‼︎、な、なんですかっ‼︎ゲホゲホ」

 と咳をしながら逆ギレをしてきた。

 

「えっ⁉︎あ、なんかごめん…。」

 ととっさに謝った。

 

 するとるなさんは、

「いちごオレが…」

 と言いながらむせていた。

 

 びっくりしたとき容器をぎゅっと握ってしまったらしい。

 で、勢いよく飲んでしまったみたいだ。

 

 …

 

「あのー…、大丈夫?」

「大丈夫なわけありませんっ‼︎いちごオレが一気に減ってしまいましたっ‼︎」

 と怒っていた。

 

 そっち…

 

「あー、ならジュース奢るよ」

 というとるなさんは、

「えっ、では、奢らせてもらいます!」

 と少し変な日本語を使っていた。

 

 奢らせてもらう?

 

 ⁇

 

 あって…るのか?

 

 奢ってもらうでいいんじゃ?

 

 と少しモヤモヤしていたが、ま、いいだろう。

 

 いちごオレでいいのかな?って聞くと、これは甘いからコーヒーブラックで。

 と淡々と話するなさん…。

 

 いちごオレからのブラックって…

 

 ギャップありすぎー‼︎

 

 そんなるなさんが久々にオレにアドバイスをくれた。

 

 

 どんなアドバイスって…

 

 続く。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る