第18話 プロモーションピデオを作る!?
春休みも終わりになった頃、私はいつものように春香ちゃんとスマホ越しにビデオチャットをしていた。やっぱり心配だったもん。萌恵さんもお母さんも大丈夫と言っていたけれど、友達が無理していないかが心配だったから。
「春奈ちゃん、体の具合はどう?」
『皆さんのおかげで、あれから症状が出ることはなくなりました。あの不調が噓みたいです。木にも魔法ってかかるんだなってよく分かりました。新しい木の方ももう支えはいらないくらいで、しっかり根付いてますよ』
お付き合いの長い春奈ちゃんだから、声を聴けば分かる。無理をしている様子はない。
「よかったぁ……。みんなで頑張った甲斐があったね」
あの日に行けなかった遊園地は、後日改めてみんなで行こうと帰りのバスの中で話し合っていた。それよりも今回の経験の方が第二期マジカルサイエンス部の初仕事だと考えれば面白かったという感想の方が大きかったっけ。
『でも、一つ残念なお知らせなんですけれど、元の木の方は花が散った後に葉っぱは出て来なくて、枯れてしまったんです。来週にも業者さんに来てもらって切り倒しをするそうです。五月の連休までには大丈夫な部分を板にして届けてもらえることになっています』
「そっかぁ。でもちゃんと若木の方が見ていてくれるなら、春奈ちゃんも安心だね」
『そうですね。あ、両親がお話ししたいって言ってますけれど、代わってもいいですか?』
「どうしたのかな。もちろんいいよ」
画面の春奈ちゃんの横に冬馬さんと夏帆さんも入ってきた。
『風花ちゃん、今回は本当にありがとう。春奈の症状もすっかり消えて、本当に助かったよ。それで、この間の夜に聞いたけれど、マジカルサイエンス部を条件付きで復活させるってことなんだけど、部活動紹介の話は聞いている?』
「は、はい。今回は期間限定の二年間で、メンバーも四人という条件付きですけれど、一年生も同じように新規部活を立ち上げられることから、紹介自体は全部活が行わなければならないようです」
毎年、授業が本格的に始まる直前の金曜日の午後は生徒会主催の部活動紹介があって、去年は私たちも新入生側として参加したのを覚えている。今年は部員としてステージの上に立たなくちゃいけない。
『瞳海先輩から聞いたんですけど、風花ちゃんが生徒会長から話を振られたって。まったく……。森田先生にも文句言わなくちゃ』
「そ、それは大丈夫ですよぉ。部長は海斗くんが引き受けてくれることになりましたし、私はお手伝いに走ればいいだけですから」
そう。あの夜の第二部「マジカルサイエンス部を考える」パートで全員の顔を合わせて相談した結果、初代部長の祐一さんと萌恵さんの間に生まれた海斗くんなら誰も文句は言えないってことになって、私は副部長の立場でサポートすることになったんだ。
『そのことでね、今回の春奈のことに向き合ってくれたお礼で、私たちがプロモーションビデオを作ることにしたから、いろいろ写真とかを送ってもらうかもしれない。春奈からどんどんリクエスト送らせてもらうけれど許してね。あ、もちろんお金は要らないから安心してね』
あの夜の打ち合わせ時点で、夏帆さんもスマホでたくさん打ち合わせ中の写真を撮っていた。さすがは卒業生。あの時からこのプロモーションビデオのことを頭に入れていたに違いないんだ。
「そんな、悪すぎます!? それじゃぁ……、ちゃんとクレジットにお二人の名前載せてくださいね?」
きっと、このお二人の名前が同時にクレジットに載るなんて、分かる人が見たら「とんでもないこと」なんだ。「年間予算全部つぎ込んだのか?」って言われてもおかしくないくらいなんだよ。
『当時の写真とかもいっぱい混ぜるから、瞳海先輩も裕昭先輩も登場する予定でね。みんなで観賞会してみてね』
先日からの僅かな時間で、冬馬さんが相当の部分まで作りこんだということなのだろうね。
「ありがとう……ございます。なんか、私たちって決めたのはいいけど、まだ何をどうすればいいかなんて全然分からなくって……。お恥ずかしいです」
『風花ちゃん、うちの両親も好き勝手に面白そうにやってるだけだから気にしないで? 私も作りかけのを少し見せてもらったんだけど、こんな部活が本当にあって、それを風花ちゃんたちがリバイバルするなら、私も参加したいなぁって思っちゃう』
『あら、それなら桜花祭はみんなで手伝いに行く? 先輩たちも自分のお店とか仕事をほったらかしにしても来るでしょうから、私たちも行かない手はないわ』
桜花祭の日程は全員が知っている。夏帆さんの話が現実味を帯びてきそうだ。
『風花ちゃん、森田先生にOB・OG・他校生徒もお手伝いで参加していいか聞いてみてくれる?』
「身元が割れている皆さんが条件ならOK出そうな気がします」
これは森田先生に掛け合ってみる価値はありそうだ。
その日の春奈ちゃんとの連絡はみんなの笑いのまま寝る時間になっちゃったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます