第6話 活動期間は二年間!


「先生、私たちはマジカルサイエンス部を再立ち上げしてもいいというところまでは決めましたけど、具体的な活動内容はこれからです。どこまでやっていけばいいんでしょうか? 人数の件もあと一人足りません」


 私の質問には二つの意味があった。


 生徒会長から言われているのはあくまで桜花祭のこと。当時、咲来ちゃんのお母さんの杏子さんと私のお母さんか出会ったのは校外授業。これらが今どうなっているのかを知らなくちゃならない。そして、桜花祭ではどのレベルまで求められているのかを知らなくちゃならない。


「なるほど。科学館での校外授業はドリームエンターテインメント部が引き継いでいるはずだ。そこは僕があちらの部と確認してみよう。桜花祭は正直君たちのご両親の方が細かく知っているだろう。ただな、心配なこともある……」


 先生は私の方を見つめた。


「あの当時、瞳海は自分の力以上のことをパフォーマンスした。そのお陰で桜花祭のあとはいつも元気がなかったり体調を崩して休んでしまった。それに……、聞いているだろう? 君の両親のことは?」


 森田先生は私を確かめるように聞く。


「はい……。今でもお母さんには頭が上がらないと言います。命の恩人だと……」


「そうだ。その分、瞳海は自分の限界を超えて二年間の昏睡状態になった。君はあの二人の間に生まれた。ここにいる全員、偶然にも学年は同じだ。全員揃って卒業して欲しい。今度は自分も待つことはできないだろうからな……」


 お母さんから聞いていた。みんなと一緒に卒業式は出られなかったけれど、この理科室で森田先生から卒業証書を渡してもらったと。


 その写真もアルバムの中に綴じられていた。卒業アルバムの写真はどうしたかって? そこに写っている個人写真は、実は制服を着替えて髪型を変えてある奏天さん。だから卒業式の集合写真には写っていない。


 私が南桜高校に入るとき、それが話題になって見せてくれた。本当にそれで良かったのか聞いたけれど、『どうせ知っているのは部内者だけだし、奏天とわたしを写真で見分けるのはまず無理だから。それにお姉ちゃんが普段着ない制服と髪型になってわたしの代わりに写ってくれた。感謝してるよ』と笑っていたっけ。


 そこでもマジカルサイエンス部の話題は出ていた。部活の写真は締め切り直前まで差し替えられたって。


 南桜高校の合格が決まって、まだ一年経つかそこらなのに、すっかり忘れていた。


「今度は待てない」というのは、森田先生はいま定年延長で非常勤講師としていてくれるけれど、それもあと二年という時間制限があるからだ。


 そこに、この騒ぎの原因ともなった生徒会長が理科室に入ってきた。


「みんなが準備に取り掛かってくれたことは嬉しい。しかし現状四人という壁があると聞いた。無理を承知で生徒会としてお願いした責任もある。そこで、来年度から人数規定を変更することにした。『開始時に活動期間を限定する条件であれば、顧問が付けば人数は問わない』という条文を付け足すことにしたんだ。ただし、桜花祭に部として参加することと、生徒会の審査を受けるという条件は残したけどね」


「相変わらず抜け道を考えたな」


 これは森田先生。


 これまでの歴史の中で大きな変更だ。顧問の先生がつくこと、桜花祭に参加すること、年数を限定することで、一人であっても条件さえ満たせば好きな部活を作ることができる。


 それなら、人数は四人だけど活動期間は二年。自分たちと先生の卒業をもって活動を終わらせることでの条件を確かめた。


「それなら問題はないね。あとは顧問の先生だけど、祖父さんもその様子じゃ完全退職前にまたやりたいんだろ?」


「本当にそれでいいのか?」


 お孫さんにまで言われた森田先生の方が心配している。南桜高校の歴史に名を残す部活を再び立ち上げるのであれば、入りたいと思う生徒は間違いなくいるはずだと……。


「いいんです。最初から今年限りの復活を頼まれていました。それが一年間伸びるんです。先生と私たち、そして私たちの両親も全員含めた卒業で! 南桜高校の『マジカルサイエンス部の歴史は完結』という区切りでいいんじゃないでしょうか」


「そうか……。それもそうだな……。それでもやりたい生徒は自分たちで作ってもらおう」


 先生も納得したようで、私たちの活動期間は二年間で、マジカルサイエンス部は正式に復活とその場で決まったんだよ。

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