第30話
(そうか、あれならフランスというテーマから離れず、観光客への販促にもなるかもしれない!)
ホールを後にし、早歩きだったが、気づいたらジェイドは駆け出していた。気持ちがはやる。どこへ向かう? わからないが、とりあえず学園の敷地外へ。一歩、外へ踏み出したところで、ピタと足が止まる。
「で、問題は私にはどうしようもできない、というところなんだがね」
ということで、冷静になって一度策を練る。
(誰かに助けを借りる、と言っても、素人が作れるものではダメだ。それこそ、プロの精密さが必要になる。もちろん、こっちに来て日が浅いし、そんな知り合いはいない)
(店に頼むとなると、もし私の案が通ったら情報漏洩になっちゃうかもしれないし、店を通さず、なおかつ融通がきくプロのような、口の堅いアマチュア)
(というか、作ってもらうとしてどこまで喋っていいんだろう? その人が情報漏洩しないという確信は? 言っても実はWXYとしては問題なかったりする?)
色々悩ましい。うんうん唸りながら、目を瞑り天を仰ぐ。空からなにかいい案が降りてきませんか? 手も掲げた方がいいですか? 元気玉みたいにした方がいいですか? 周りの目も気にせず一〇秒ほど力をもらい、決断する。
「つまり、その人と友達になればいいわけか」
簡単なこと。プロと友達になって、友達として作って貰えばいい。お金は払う。それならいけるのでは? それじゃあ早速探そう。学園に結局戻ることにした。そもそもまだ授業がある。
「カルトナージュ店で働いている友人とかいない?」
授業中や、休憩時間などに手当たり次第聞いてみるが、今のところ収穫なし。広く浅い友人関係が多いのだが、いたらそれくらいのヒントはくれるだろう。こうなったら、とカバンからショコラを手に取り、ガサガサと袋を鳴らしてみる。
「呼んだ?」
予想通りポーレットが現れた。ジェイドはショコラを手渡し、単刀直入に尋ねる。
「カルトナージュ店で働いてる友人とかいない?」
封を開け、ショコラを口に含みながらポーレットは否定した。
「いない。そもそも働いている友人があんた以外いない」
即答で返ってくる。趣味で少しやってた子ならいるけど、と追加で返ってきたが、ジェイドは満足しない。趣味でやっている、ではおそらく仕上げるのは無理。そしてその先も厳しい。
(趣味レベルじゃダメだ。難しいか……)
そしてポーレットはショコラを全てたいらげ、どこかに去っていこうとするが、直前で踏みとどまった。なにか思い出したようである。
「ん? あれ、ちょっと待って。たしか一九区で、実家がカルトナージュ店やってる人、いたかも」
と、それだけ伝えてポーレットは離脱しようとするが、いつの間にか左手首をジェイドに握られていた。ものすごい笑顔で。
「詳しく」
もし詳しく教えない場合は、やっぱりこのまま砕かれるのだろうか、とポーレットは未来を想像した。
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