ネトゲの相方は職場のオネェなエース様

さめでねこ

第1話 彼女との出会い

私、紫垣 唯は夢も希望もないただのOL。

気がついた頃には少しずつ歳をとり目も当てられない人間に成り果てていた(自称)

若い頃は明け方まで遊び倒したり、恋愛したりと人生を謳歌していたが、

今では社畜になり、恋愛とは無縁。

オンラインゲームをして日々を過ごすゲーマーが爆誕している。


『眠いけど、これだけはやっておかないと気が済まない…』


現時刻は23時。

仕事から帰宅して、身支度も済ませた。

明日も仕事があるから早々に寝るべきだとわかっているが、

日課となっているゲームのログインにデイリーはやっておかないと

謎にモヤモヤしてしまう。

そのため自分の時間を犠牲にしてでもやろうと決めていた。


『時短のために野良マルチでデイリー消化のPTに入るんだ…』


−ゲーム内チャット−

〔デイリー全部回ります 未消化の方歓迎 放置◯〕


『お、このPT放置していいならちょうどいいや』


唯は戦力差がない程よいPT募集を見かけた為、

自然と指は参加申請ボタンを押していた。


−シユさんが参加しました−

〔シユ:よろしくおねしゃす、、、〕

〔リダ:お願いいたします!〕

〔くぅ:わぁ!よくご一緒になるアバ素敵な方だー❤︎

よろしくおねがいしますー❤︎〕


『…あ、この人よくPT被る人だ』


なんとなく見覚えがあるな、、、程度ではあったが

戦力に差がなくてデイリー程度ならこの人と回ればすぐ終わるのでは?

と、一瞬思考によぎったが自分から行くような性格でもないし

まぁいいか、と考えることをやめた。


−20分後−

〔リダ:これでデイリー消化完了です!

助かりました!!!〕

〔シユ:こちらこそ助かりました

おつありでした〕

〔くぅ:私も助かりましたー!

おつありでした❤︎〕

−くぅが離脱しました−

−シユが離脱しました−


通知:フレンド申請が届いています


『…?』


日課も終えてそろそろ寝ようかと思った矢先、

フレンド通知が飛んできた。


〔くぅ:よくデイリーPT被るなぁって

ずっと前から気になっていたのでフレンド申請しちゃいました❤︎

火力差もないのでもしよければ、こんどからデイリー一緒に消化しませんか?

お返事待ってます❤︎〕


唯は『同じこと思ってたわ…』と、フレンド申請を承認した。


〔シユ:申請ありがとうございます。

基本的に、僕この時間からしかINしてないんで

それでもよければお願いします。〕


淡々と可愛げもないメッセを返して、

今にも落ちそうな瞼に抗えず携帯を開きっぱなしのまま意識を飛ばした。


その日以降からゲームにログインすれば相手は待ってましたと言わんばかりのチャットとPT募集を送ってきてくれて、

いつしかゲーム内の相方となっていた。


−とある日のゲーム内チャット−

〔くぅ:今日も待ってたわよ!〕

〔シユ:今更なんすけど、

チャットだるいんでvcしません?〕

〔くぅ:いいわよ!

この前繋がったSNSにメッセすればいいかしら?〕

〔シユ:もう送ってるんで追加だけしてもらえれば〕

〔くぅ:早いわね!〕


PTを組みデイリーを回しながらvcのフレンドコードをメッセに送って

申請をしてもらうようにお願いした。

正直ここ数ヶ月、ゲーム内のチャットで会話をしていたがめんどくさいことが多かった。

フルオート機能が付いているのに手が離せないことや、目が離せないのは

何をするにしても弊害でしかなかった。


〈ピコン〉


通知音がしたアプリを確認すれば、フレンド申請とチャットがすでに届いていた。

いつも急かすよなぁとか思いつつも嫌な気はしていないので

すぐにコールした。


「待ってたわよ!」

『何でチャットと同じこと言っとるんですか』

「気にしたら終わりよ!

それよりも、敬語やめてって言ってるじゃない!」

『そっすね』

「何よ!その適当な感じ!」

『気にしたら禿げるかもよ』

「嫌よ!」

『てか、改めてシユです、ヨロです』

「くぅです、こちらこそよろしくね!

いつになったらくぅちゃんって呼んでくれるのかしら?」

『ん〜、1億と二千年後には呼ぶかも』

「遅いわよ!」


初めて通話を繋げたにしては自然だった。

それもそうか、何ヶ月もチャットで会話をしていたんだから

今更よそよそしくても気持ち悪いだけだな。

と自己完結をしつつも相手の話に耳を向け相槌を打っていた。

それからというもの、ほぼ毎日vcを繋いでいる。

しかし、何故だか彼女との会話は飽きることがない。

恋バナや恋バナや恋バナや…

尽きることのない恋バナ。

自分にはない経験談を話してくれて、聞いていて楽しい、ほとんどが恋バナなのに。


「今日はいつにも増して遅かったわね」

『ん〜…、言われてみれば?』


この日はゲームにしろ彼女と喋り出す時間が24時を過ぎていた。

それもそのはず、ここ最近営業先とのやり取りや、会議やらと日々多忙で

残業が当たり前になっていた。

キリのいいところまでやるつもりが、なんてことも稀じゃない。


「何をそんなに忙しくしてるの?」

『まぁ、仕事が忙しいんだよね

とはいえ繁忙期だし、お客様の所為というよりかは

クソみたいな上司のせいだけどな…』

「確かに仕事のできない上司って嫌よねぇ…」

『おかげさまでこんな時間、って感じ』

「そういうことね

今日はデイリーだけにしておく?」

『そうしようかな

今にも瞼が仲良しになる…』


そう言いながら唯は今にも寝そうな状態だ。

普段なら『んじゃ、今日は寝ます』と、唯の一言でいつも解散してる。

今日に関してはそんな余力もなく、

イヤホン越しに彼女が話している内容に耳を傾けるも

意識はほぼ無いような状態だった。

その為「そういえばね、今度このゲームのイベントが開催されるらしいのよ!

予定が合えばオフ会ついでにイベントに行きたいわね!」

なんて彼女が言っているとはつゆ知らず、

夢うつつな唯は普段の流れで『ぉん…』と返事をし意識を完全に手放した。


この約束が最悪な出会いを呼ぶとは思いも知らず…。

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