第42話 名無しR

SSランクのダンジョン


「よし。準備はバッチリだな」

 

 浮遊魔法でスマホを浮かせ、俺は早速ライブ配信をするために準備に取り掛かった。


「あとは、ボタンを押すだけっと」


 ライブ配信開始。


 相変わらずすごい勢いで入ってくる。


 チャンネル登録者数が250万を超えたもんな。


 昨日の出来事があったから、興味を持つ人も多いんだろう。


「みなさんこんにちは。伝説の拳、ゆうです」


 俺がカメラを見て挨拶をすると、


『でんこさま!』

『昨日のあれはマジやばかったっす!』

『まさか、キングアイスドラゴンを簡単に倒せるなんて……』

『こんな化け物が無能力者とか、ギャップありすぎておしっこ漏れる』

『てか、ダンジョン協会の奴ら、なんの役にも立たなかったよな』

『でんこ様がいなかったら、今頃数えきれないほどの犠牲者が出たんだろうな』

  

 予想通り、昨日のキングアイスドラゴンの出来事が気になって入ってきた人がほとんどか。


 既に視聴者は100万人を超えている。


 今日はモンスターを狩るところを配信してスパチャを狙う目的もあるのだが、その前に俺は聞きたいことがある。


 名前も顔も性別もわからない100万人に。


「今日は俺からみなさんに質問があります」


 いうと、視聴者は『なんでも返事するよ』とか『どうぞ』と言ったコメントを書いてくれた。


 俺は真面目な表情で問う。


「昨日の血の女王についてどう思いますか?」


 俺が蘭子さんにどう接すればいいのか、ヒントに繋がる情報が手に入るのかもしれない。


 しばし待つと、チャットルームは俺の質問に対する返事で埋め尽くされていた。


『テロは悪いけど、血の女王の言ったことは正しいよな』

『日本ダンジョン協会のやつ、偉いことばっか言うし、能力者たちは無能力者を差別しまくるしよ』

『有能なフリをするだけで、昨日、なんの役にも立たなかったよな』

『この間のキングゴーレムの時も、全部でんこさんがやっつけたでしょ?』

『俺がダンジョン協会のトップなら、でんこ様をSSランクの探索者と認定して、国のために働いてもらうんだけどな』

『でんこ様の手柄、全部ダンジョン協会の連中が持って行くんだよな』


「……」


 驚いた。


 たった一人もダンジョン協会の肩を持つものはいない。


『ていうか、でんこ様に向かってなめた態度をとった金髪野郎ってなに?結局無様な格好を晒して、でんこ様に蹴られたじゃん。マジ草』

『ニュース見ても、でんこ様の偉業を讃えるどころか、ダンジョン協会の関係者らがいっぱい出てきて、一緒に戦って倒したって言ってるし。あのライブ見たら、ダンジョン協会の特殊部隊らは邪魔しかしてなかったじゃん』

『無能力者一人の足元にも及ばないダンジョン協会はマジでいらん』

『少なくともテロ以外は血の女王の話は正しい』

『ダンジョン協会の無能どもならやられても構わないかもな』

『現状を維持したがる無能な既得権益がいる限り、ダンジョン協会は変わらないんだろうな』


「……」


 なるほど。


 みんな、ダンジョン協会に悪いイメージを持っているのか。


 いや。


 みんなじゃない。


 友梨姉と奈々を犯そうとしていたさがくんの場合は、ダンジョン協会から恩恵を受けていたので、好ましく思うだろう。


 友梨姉と奈々だってダンジョン協会とコラボ映像を撮っていた。

 

 最近は全然撮ってないけど。


 俺はどうだろう。


 正直に言って、俺もダンジョン協会に対していい印象はない。


 俺が集めたアイテムを盗んだものと断定して怒鳴り散らかした職員、SSランクのモンスターを倒せるにも関わらず俺を無能力者認定する態度。


 おかげで俺はダンジョン協会からろくな依頼も受けられない。

 

「……わかりました。たくさんの意見、本当にありがとうございます」


 と、ぺこりと頭を下げる俺。


 すると、


 誰かがスパチャを投げてきた。


『名無しRさんが999万円を投げました』


「え、ええ!?999万円!?」


『名無しRさんからのメッセージ:君に会いに行くわ♡』


「……」


 名無しさんと名無しN、YさんについでRさんがやってきた。

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