第2話千茶と僕

千茶せんちゃとは、カクヨム仲間のブリュヴェールさんの事。

この人との出会いは、3年前の「雨の中を歩く」が素晴らしく美しい文章だったので、それにコメントしたのが始まり。

プロフィール欄に『МtF』と、書いてあったが、当時の僕はその方面は無知だったので、ブリュヴェールさんに詳しく説明してもらった。

Male tо Female。

男性が女性の心を持つ、所謂LGBTQのT。

トランスジェンダー。


もちろん、LGBTQ問題は知っているし、そう言う指向の人間と接していたので驚きはしないが、ブリュヴェールさんは包み隠さず、自分の成り立ちを説明してくれた。

僕は、この人と仲良くなりたいと思い、Twitter経由でLINEを交換して、連絡を取り合うようになった。

その時のLINEの登録名が千茶だったので、僕はずっとブリュヴェールさんの事を千茶と呼ぶ様になった。

千茶は酒が結構好きで、知り合った始め、千茶が泡盛の「青龍」を飲んでみてはどうか?と、言うので自転車で酒屋に行き、6000円もする「青龍」を買ってきて飲むと、ウギャッ!と、言うほどキツかった。

それをストレートで飲めと言うので、この人は相当酒が強いと思っていたが、たまに、缶ビール1本で酔っ払ってしまう時もある。

もちろん、人間は体調により耐性も変化するので当たり前の事だが。

知り合ったのは、6月。その年の年末年始に千茶の住む大阪から名古屋まで来ると言う事になった。


名古屋駅の新幹線出入り口の時計台を目印に待ち合わせした。

リモート電話で顔はだいたい分かるが、どんな体型でどんな服装で現れるのか?と、ドキドキしていた。

LINEの通知音が聞こえた。読むと、「今、名古屋駅に到着しました」と。

出入り口を見ていたら、ゴッツイ短髪の格好して、キャリーバッグを引き摺りながら、僕に向かって笑顔で歩いて来た。リモート電話の時より体格いいなと考えて、その人を見詰めていると、僕の前を横切る。隣に立つ友達らしき男性と挨拶して、歩き去った。

そして、「初めまして」と、ある女性が声を掛けてきた。

振り向くと、これはあくまでも僕の感想だが、旧ドイツ軍の軍服の様な格好だった。

背は僕より低くくて、細い身体で重たい荷物を二つ持っていたので、僕は重い方を持った。


毎日、電話していた彼女が名古屋に来たのがとても嬉しかった。

そして、第1回名古屋市横断ウルトラクイズと称して、ウルトラクイズの問題を解きあい、お手付き、誤答、はウイスキーのロックを一杯飲むゲームをした。

あの時は、まだ僕の右足が不自由で仕事が出来なかったから、超貧乏年越しとなった。

酒はある。

金が無い。千茶はわざわざ名古屋まで来てくれたのに、年越しのオードブルは千茶が買ってくれた。そう、雪のちらつく3年前の大晦日。

それから、千茶の名古屋に年に3回くらいペースでやってきて、働き出したので、飲み屋に連れて行ったりすることが出来るようになった。

2年前の11月、僕は倒れた。嫁さんとは連絡が取れなかったので、千茶に助けを求めて千茶が大阪から飛んで来て、僕を大学病院へ連れて行ってくれた。タクシーで。

それは、11月3日で、5日には母が名古屋に移住するために、僕の家に来ることになっていたが、それが出来るか不安だったので、千茶に頼んだのだ。

嫁さんは、離れた街にお姉さんと息子と暮らしている。


僕は即日、入院だった。

病名は、「水中毒、黄紋筋融解症」。

10日間の入院だったが、4日の意識がない。

入院して、目覚めたのは5日の夕方だった。医師は、水中毒で意識がある内に運ばれた患者を初めて診たと言う。

死ぬ所だった。千茶は命の恩人であり、母は嫁さんと同じくらい、千茶を気に入り僕が入院中、母の面倒を見てくれた。

千茶には物心共に、助けてもらった。

僕は家族の為、また、千茶の為にも一般就労して、恩を返して行きたい。

この人は、僕の人生に花を添えてくれた女性。


最近は千茶の体調不良が続いているので、心配である。病院に行くように伝えたのだが。

今度は、僕が大阪に行く番か?

なまじっか、千茶の住んでいるところは、公共機関が不便なんだけど、命がかかる大事ごとなら、直ぐに飛んで行くのだが。

以上の事があり、僕と千茶との関係が出来上がったのである。

この前、泣かしたのが失敗だったが。

それは、また、別の日に書くとしよう。

では次回。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る