ひぐるま花蓮のひとりごと

細田とめい

第1話

みなさん、こんばんは。

私の名前はひぐるま花蓮と申します。

今日は、私がある方からお聞きした、少し、怖い話をしますね。


それは今から少し昔のこと、か○○○という川でのお話です。ちょうど長野県S市の、し○○○という地名の近くだったそうです。

知っているおじさんなんですが、仮におじさんの名前を須藤さんとしますね。その須藤さんは釣りが趣味で、良く夜釣りに出かけていたようなんです。ちょうどその日も仕事を終えて、夕食を済ませてから、だいぶ夜遅くになって、釣りに行こうと思い立ったわけです。それで釣り道具を持って、夜中までひとりのんびりと釣りを楽しんでいました。あたりはしんっとして、時折自動車が通るくらいだったようです。ふと気がつくと、ゆっくり、ゆっくり、川上からこちらに向かって、スーパーのビニール袋が流れてくるように見えたのだそうです。


【釣針に引っかかるとやっかいだな】須藤さんはそう思って川面を覗いてみました。すると、そのビニール袋は徐々に浮かび上がってきたのだそうです。

ところが。

スーパーのビニール袋だと思っていた白いものはなんと、真っ白な白髪頭を振り乱し歯の抜けたおばあさんの顔だったそうなんです。白髪頭のおばあさんはギョロリと須藤さんを見て笑っていました。

「うわー」須藤さんは恐ろしくなって家に逃げ帰ったのはいいのですが、もしかしたらおばあさんが川で溺れていただけなのではないかとか、死体が流れてきたのではないか、などと思い一睡もできなかったという事です。


次の日、警察や市役所に真っ白な白髪頭のおばあさんが行方不明になってはいないか、確認したらしいのですが、そんな情報もなく、結局、須藤さんがみた白髪頭のおばあさんはなんだったのでしょう。


須藤さんにはお伝えしていませんでしたが、私はそのおばあさん、妖怪、だったんじゃないかっておもっています。香川県に伝わる伝説、川女郎という妖怪に、にている気がして。


みなさんも川で白いスーパーの袋が流れてきたら、けっして見ない方がいいかもしれません。白髪頭のおばあさんの顔かも。


須藤さんはそれから数日して、また夜中に今度は一人で温泉に入りにいきました。

頭を洗っていたので目を瞑っていると誰かがガラガラと風呂場の戸をあけたのだそうです。

その誰かはしばらく手桶でぱしゃーん、ぱしゃーん、とお湯を体にかけていて、そのあとどぼん、とお湯に入った音がしたのだそうです。

こんな夜中に俺以外にも風呂に入りにくる人がいるんだなと思いつつ、頭を洗い終えて何気なく振り返ると、湯舟に今度は白髪頭のおばあさんが首だけ出して使っていたのだそうです。

須藤さんはびっくりしすぎて腰を抜かしながら、急いで服に着替えようと、脱衣所に向かうと、なんと物凄い速さで、おばあさんは首だけで追いかけてきて、須藤さんの肩に乗っかったのだそうです。

それから須藤さんは気絶してしまい、朝風呂に来た近所の方に起こされるまでの記憶がなかったそうなんです。



そんな須藤さんも三年前に病気でなくなりました。


私のお話は以上です。



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