長慶の空
きむらたん
乱離の章
第一話
雲ひとつない
海は静かで、さざ波の音が耳を
世は北は
時の
幕府には
尊氏の将軍就任は執事の高師直の働きに負うところが多く、補佐する者がいないことで、政務にも支障があったため、長らく空席だった執事の役に変わって新たに管領と言う役職が作られたのである。
管領は幕府では将軍に次ぐ地位であるため、足利氏に次いで源氏
ところが斯波氏が越前と尾張を事実上失い、畠山氏が家督争いで相争い力を失うと、もはや三管領は細川氏一管領という有様となってしまった。
だが、一管領となった細川家も
絶大な力を誇り、剛腕を持って政務を行い全国の守護を従わせた、六代将軍足利
八代将軍足利義政の時代、乱に勝利した東軍の細川勝元が亡くなると、その後を継いだ政元は若年ながら政務に力を発揮し幕府の権威は応仁以降領国を失った情けない斯波や、家督争いで
政元は若く有能な政治家ではあったが、時々幕府の仕事を嫌い
政元の政治手腕にすっかり頼りきりになってしまっていた幕府は気分屋の政元をなだめすかし、時々土下座までして政元に無理矢理政治を見させるのだが問題はそれだけではなかった。
いかに優れているとはいえ人はいずれ亡くなってしまう。
特に戦国時代は現代と比べても短命だ。
政元が二十代半ばに近づくと細川家では政元に世継ぎがいないことが問題になっていた。
人間五十年の時代の話だ、三十歳ともなると人生の後半に差し掛かっている。
だが政元は修験道にすっかりハマってしまっていたため、女性を近づけようともせず、正室は疎か側室すら取ろうとしなかったのである。
女性一人も近づけようとしない政元も少しは世継ぎがいないことを危惧していたのか、二十五歳の時に関白九条政基から二歳の末子を養子に貰い受け、聡明丸と名付けた。
聡明丸という名は代々細川家嫡子につけられる幼名で、政元も幼名は聡明丸であったため、養子とした二歳の赤子は貰われた頃から後継者と位置づけられていたのである。
聡明丸を養子にしたことで後継者問題が解決したかのように見えたが、ところがこの政元の行動が力を誇った細川家を戦国時代の荒波に飛び込ませることとなったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます