広い川の岸辺

清瀬 六朗

第1話 人見知りな茉莉

 李津子りつことの出会いを、茉莉まつりはよく覚えている。

 幼稚園のころから、茉莉は人見知りで無口な子だった。友だちができず、先生にもなじめなかった。

 親は、そんな茉莉を心配して、ピアノを習わせようとしたり、児童劇団に入れてみたりしたけど、どれも長続きしなかった。

 ただ、海辺の街に生まれて、海辺で遊ぶのは好きだった。

 幼稚園に入る前から、海水浴場の砂浜に来ると、一日じゅう、ばしゃばしゃと水を浴びたり、浜辺で砂山を作ったりして飽きもせず遊んでいた。

 いろいろなことをさせようとしていた親もあきらめて、海開きの日から、寒くなって泳げなくなるまで、海で泳げる日ならば毎日、茉莉を海に連れて来てくれるようになった。

 その海水浴場で、茉莉は李津子と出会った。

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